前回の連載のなかで、
「ご実家などに眠っている
ファンシーなグッズはありませんか?」
と、呼びかけたところ、
メールやツイッターで
たくさんの投稿をいただきました。
どうもありがとうございます!
なんとメロさん、ほぼ全ての方の
投稿写真を鑑定してくださったんです。
ぱっと見ただけで、「あ、これはですね~」と
あらゆる方向に話が進んだ鑑定の様子を、
そのまま、こってりとお伝えします。
レアで貴重な「ファンシー絵みやげ」の数々、
その当時の時事ネタもおたのしみください。
担当はほぼ日のフジタです。

>山下メロさんのプロフィール

山下メロ(やましためろ)

ファンシー絵みやげ研究家。
1980年代・90年代の庶民風俗を研究。
特に観光地のファンシーイラストが描かれた
お土産雑貨=「ファンシー絵みやげ」を
収集・研究しており、
各種メディアで保護を訴えている。
所有するファンシー絵みやげは17000種を超える。

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第5回 全国津々浦々の。

ーー
続いての方は、コメントはなく、
お写真を3枚送ってくださいました。

(飛鳥緑)

メロ
いいですね、淡路島。
これは何がすごいというと、
国生み神話のイザナギとイザナミを
ファンシーカップルにしているところです。
イザナギが持っている
天沼矛(あめのぬぼこ)で混沌をかき回して、
それを抜いたときに落ちた泥で日本列島を作った、
というのが国生み神話なんですけど、
そのとき最初にできたのが淡路島とされています。
淡路島には伊弉諾(いざなぎ)神社もありますし、
淡路島のキャラクターとしてはイザナギと
イザナミが多いですね。
ーー
中が揺れるようになっているし、凝っていますね。
色もあざやかで素敵です。

(飛鳥緑)

メロ
これはさっきの大門多美先生と
同じしおりのシリーズですね。
北海道のキタキツネかな。
ーー
飛鳥緑さん、まだありますよ。
これはすごい。見るからに要素が満載です。

(飛鳥緑)

メロ
甲子園で、星型で鍵型で鍵の中に砂時計、
しかも砂がピンク。
そして星型部分は、オーロラが光るホログラム仕様。
甲子園というと、阪神タイガースの本拠地であり、
高校野球の聖地である甲子園球場ですが、
観光地でもあるわけで、
商品がいろいろ作られているんですね。
これすごいのが真ん中にいる応援団長。
右がチアリーダーで左に高校球児か野球選手。
「野球選手がセンターじゃないの?」って思います。
ーー
たしかに。
メロ
構図の問題なのかもしれませんが、
これがセンターだというのがおもしろいし、
めずらしいですね。
この甲子園という文字が
ちょっとロゴマークっぽくなっていますが、
これは当時の球場公式のロゴかもしれないです。
会社が勝手に作ったにしては、
凝りすぎているような気がします。
球場施設はだいたい
「認められた業者しか球場内で売れません」
というのもあるので、ちゃんとそうやって
ロゴを使っているケースがありますね。

(飛鳥緑)

メロ
高徳瑞女先生のイラストですね。
右下にはエキスポランドの絵があるんですが、
このジェットコースターの柱に「瑞女」と書いています。
ーー
それでわかるんですね、さすが。
メロ
エキスポランドというと、
大阪にかつてあったエキスポランドが有名ですけど、
もともと万博をした場所ですね。
今、沖縄の美ら海水族館になっているところ、
あそこも海洋博の跡地でして、
エキスポランドがあった場所です。
他にも、玉泉洞とか沖縄の
観光スポットが絵になっています。
首里城の守礼門もあります。
この前火事で燃えた首里城の正殿は、
たぶんこの時代はまだ復元されていないと思いますね。
パッと見て絵がないようなので。
もしかしたら首里城の
正殿復元前のものかもしれないです。
ーー
沖縄の話がでましたが、
つづいては北海道です。
北から南まで、全国津々浦々ありますね。

おそらく1984~1987年頃の、
北海道土産のハンガーです。
よろしくお願いいたします。
(たきぞう)

メロ
1984年から87年頃というのは
どこから推測されたんでしょう。
そこが気になります。
ーー
そのころに買われた、とかでしょうか。
メロ
そうですね。
「北の国から」と入ってますが、
これはドラマの『北の国から』が流行ったことで、
とりあえず文字だけ入れよう、
ということでしょうね。
「北の国から」というのは、
まあ一般的な言葉とも言えるので
無許可で使ってそうです。
最初の放送は1981年、その後、
スペシャル版が1983年からだから、そのあたりから
このハンガーの年代を推測されたのかもしれませんね。
そして、ほっぺたの下にあるのは手なんですかね、
それとも襟かな? ちょっと気になります。

お正月に滋賀の実家で、
両親の寝室の引き出しから発掘しました。
現在40代半ばの私がおそらく小学生のころに
家族旅行で自分のお土産に買った
(買ってもらった?)ものです。
場所は確か三方五湖だったように記憶しています。
値段は350円
(もちろん消費税なんてありません)、
郵便番号は5桁です。文通の時代、
レターセット集めるの流行ってたんですよねー。
(いりこ)

メロ
「滋賀の実家で、正月に両親の寝室の引き出しから」
なぜ両親の寝室の引き出しを見たのでしょうか。
三方五湖、というと、福井県ですね。
ーー
おお、さすがすぐわかる。
日本全国で保護活動なさっているだけありますね。
メロ
イラストのタッチもいいな。
これはさっきの高徳瑞女先生とか
大門多美先生のものに近いですね。
たぶんこれは同じ会社のものですね。
350円という値段からも、描き方も似ているので。
これはもう完全に、どこでも売れるように作られた、
どこでもない風景が描かれていますね。
でも間違いなく観光地で売っているものです。
観光地で書いてそこの郵便局から送る。
そういう需要があって作られたものですね。

お正月に新潟市の実家に帰ったときに
探してみたところ、
あちこちに普通に置いてありました。
いつからあったのかわからないくらい
部屋に馴染んでいたので、
今回ファンシー絵みやげの連載を読んで初めて
目に入ったというところです。
けれど親に聞いても、
さっぱり覚えてないそうです。
熊のベルは見えにくいところに
AKAKURA&MYOKOとあったので、
妙高あたりの絵みやげかと思います。
連載はとても楽しく読ませていただきました。
私も修学旅行でファンシーなおちょこを父親に
買っていったとか、自分用にキーホルダーを
買っていたことを思い出しました。
(かきすけ)

メロ
「部屋に馴染んでいた」、はい、わかります。
普段は気にしてなくて、
言われてみたらウチにもあったってケース、多いんです。
これ、さっきも出てきた妙高高原ですね。
赤倉温泉は新潟県と山形県にあるけど、
「アンド妙高」と書いてあるなら、
もうこれは新潟県の赤倉です。
「ファンシーなおちょこを父親に買っていた」
というのもいいですね。
ーー
お父さんにはやっぱり灰皿か
おちょこって決まっているんですね。
メロ
お父さんがお酒を飲むとか、
タバコを吸う人ならわかりやすいんです。
何をあげたらいいか迷わないし。
ところで、「AKAKURA&MYOKO」のロゴ、
たぶんこのコルクを貼る位置に困って、
ベルの裏側に貼ったんでしょうね。
ーー
これ、2行にできなかったんでしょうか。
メロ
たぶんこのコルクのシールの形は
定形だと思います。
だからしようがなく細長い字で書く。
詰め込んでます(笑)。

(かきすけ)

メロ
これは沖縄の温度計。
‥‥ですが、後ろの「ウォーリーを探せ」の
ジグソーパズルが気になってしようがないです(笑)。
まずジグソーパズルを額装して
飾るというのが時代を感じますし。
そして、とにかくサーフィンブームですね。
これ「沖縄」とシールで貼ってあるので、
いろんな海水浴場で売られていたものですね。
ーー
2頭身だけじゃなくて、
ちゃんとこういう細長いキャラもいるんですね。
メロ
そうですね。
基本的に2頭身が多いんですけど、
3頭身、4頭身もあります。

(かきすけ)

メロ
那須高原。ダジャレですね。
那須高原は、ご当地キャラクターに
「九尾の狐」がいるんですよ。
「殺生石」というのがありまして、
それが形を変えた「九尾の狐」。
ただ妖怪だし、9個尻尾を描かなきゃいけないので
ファンシーにしづらいので、少ししか見つからない。
そこで野菜の「ナス」にしちゃうケースは
非常に多くあります。それです。
ファンシー絵みやげにダジャレは意外と少なくて、
しかもダジャレでキャラを作らないんですけど、
那須高原は特別です。

押し入れから救助して洗濯しました!
沖縄土産です!
(ななまる)

メロ
「100%ヘルシーがんばるくん」。
いかにも子どもが好きな
半裸と全裸のキャラクターですね。
「僕らはライバル」とありますが、
「ライバル」のスペル‥‥すごいな。
「raibalu」って、こんなスペルじゃないですよ。
ローマ字だとしてもラ行で
「R」と「L」が混在してます。
――
「rival」が正しいです。
メロ
ですよね。
「君には負けないぞ。
あっぱれ、あっぱれ、げんきくん」
とか言ってる場合じゃないです(笑)。
この黒地に蛍光色というのも当時のブームで、
今はあまり見ないです。
黒地に蛍光色にするって、
ネオンサインっぽくてすごく映えるんです。
当時はやっぱり派手なものが好まれたんですね。

これは30年ほど前に
軽井沢で買ったメモスタンドです。
実はこのシリーズのその後の行方を
本気で探しています。
確か「OMOIKIRI/NIGHT」だったと思います。
これはくろ豆様で、仲間に栗きんとと様という
クリーム色のキャラクターがいたかと思います。
山下メロさん、もし、
もしご存知でしたら教えてください!
もう少し探せばこのくろ豆様のぬいぐるみとかもあります!
(よんハハ)

メロ
続いて、「軽井沢で買ったメモスタンド」ですね。
「もう少し探せばこのくろ豆様の
ぬいぐるみとかもあります」
とのこと。
ぜひ探してほしいです。
ただ、このシリーズのその後といっても、
残念ながらこの会社のことは詳しくなくて、
知らないんです。すみません。
ただ「栗きんとと様」といったら、
送ってくださった、裏側の写真に
描いてあるこのネコのことですね。この子。

(よんハハ)

ーー
かわいい。
栗きんとと様。
メロ
うちにもいます、このキャラ。
かわいいですよね。

▲くろ豆様の写真。(メロさん私物)
「これ何だと思います?
車のサンバイザーカバーなんです」とメロさん。
▲くろ豆様の写真。(メロさん私物) 「これ何だと思います? 車のサンバイザーカバーなんです」とメロさん。

今住んでいる家は夫の実家で、
結婚したときは義姉の部屋や夫の部屋に
たくさんのファンシーグッズがあったのですが、
7年前家を建て替えた際、殆ど処分してしまいました。
唯一残っていたのがこの陶器のビールジョッキです。
夫が1986年に友人3人とフェリーで北海道に行き、
バイクで一周した時に購入したそうです。
(スナックしおから)

メロ
こんにちは。
スナックしおからさんは、
旦那さんのご実家に住んでるんですね。
いやあ、おみやげ品というのは基本的に
人からもらったものなので捨てられないんですよね。
親も、捨てちゃダメでしょ、みたいに言いますから。
ただ、引っ越しとか建て替えになると、
免罪符のようにあっという間に捨てられるという。
これはしょうがないです。
「ほとんど処分してしまいました」、
しょうがないです、みんなそうです。
「唯一残っていたのは陶器のビールジョッキです。
陶磁器ですかね、これ。
そしてなるほど、ちゃんと1986年と彫ってる。
これはいいですね。
ーー
どのあたりがいいでしょう。
メロ
はい、まず、
ビールのパッケージを模してるんですね。
「LIVE BEER 100% HEALTY」
とありますが、
どういう意味かな。生きてるビール?
ーー
生ビール100%?
メロ
生ビールを直訳でLIVE BEER。
メチャクチャですよ、もう。
しかも、ビールだけど、
「100%ヘルシー」。
ーー
(笑)
そうですね。
メロ
このエンブレムみたいなWMって書いてあって、
まるでワーナーブラザーズの
「WB」みたいに書いてますね。
ホワイトマジックって下にリボンで書いてあったり、
やたら裏側にも書いてあったりで、
これがブランド名っぽいですね。
ここで特筆しなきゃいけないのは、
両側に「HOKKAIDO JAPAN」と入ってるんですけど、
このJAPANという表記が大変めずらしいんです。
今でこそインバウンドの外国人の方増えたので
JAPANって書かれたおみやげって多いんですけど、
当時はそういう感覚がないので、
ファンシー絵みやげで
JAPANとか日本って書かれてるものって、
ほぼ見たことがない。
ーー
ああ、なるほど。
メロ
これはおそらく、
ビールそのものにMADE IN JAPAN
みたいな表記があるので、
ビールのデザインを模したかったがゆえに、
入れてるんでしょうね。
いろいろめずらしい要素がありますね。
あとこのキツネちゃんが、
ダボッとしたセーターを着てて、
ちょっと肩が落ちてる感じ‥‥
このディティールはなかなかめずらしいですね。
ここを細かく描くケースすごく少ないんですけど。
漫画的な、こんな細かい描き込み、
あんまりファンシー絵みやげ全体では見ない。
これはめずらしい。
このキャラ自体あんま見たことない。
当時多かったですよね、そういうダボッとした
ビッグシルエットのセーターを着て、
肩落とす、片方だけね。
ーー
ちょっとバンドマンみたいな。
格好いい。
メロ
そうそう。ビートパンクス。ジッタリン・ジンとか。
この肩の出てる感じ、いいです。
しかもペアマグ。
あれ、この左側、ちょっと欠けてないですか。
欠けても尚置いておいてくれてるというの、
すごくうれしい。
今後も大事にしてほしいです。

連載時から、そういえばうちにもあるな‥‥
と思っていた北海道みやげです。
年代もばっちり、1990年前後のものです。
(かおさん)

メロ
これNORTH FOXと書いてあって、
初代ファンシー絵みやげの
「ナキギツネ」と同じシリーズなんですよね。
ただちょっとめずらしいのは、
ナキギツネと違って大きく鼻を描いてます。
目の位置はすごい低いんですけど、
キツネ目で、目の真横に紅潮表現的なものがある。
この描き方は、その後姿を消していき、
さらに鼻を省略するというのが
一般的になっていきました。
そしてこれ、尻尾の中に
キタキツネの文字が入っていて、
最初のキがグイーンってなってます。
ーー
(笑)キがグイーンとなってますね。
メロ
キャベツの箱とかに書いてありそうな独特な
ロゴタイポグラフィーですね。
このキャラちなみに立体化もしていて。
ソフトビニールや、プラスチックでできた
キーホルダーや人形が存在します。
そもそも立体化するというのは、
当時の有名キャラだけに許されてる特権なので、
これも1つの有名キャラだったということですね。
その後消えてしまうんですが、
ほんとにナキギツネと同じく初期のキタキツネを
引っ張った重要なキャラクターです。
これは、キーホルダー掛けですかね、用途としては。
ーー
キーホルダー掛け。
メロ
1つの、どこかにこの上の紐を掛けて、
その下に鈴がついてる、ちっちゃいベルがついて、
2つのフックみたいのがあって、
ここにキーホルダーがかかる。
何でもかかるんですけど、このサイズ感だと、
鍵とかキーホルダーぐらいですかね、
キーホルダー取るときにベルが鳴る。
すごく実用的です。

貯金箱です。(かおりん)

メロ
これは、陶器メーカーの貯金箱ですね。
「ルネ」とか、いくつか陶器メーカーがあって
町の陶器店でも売っているし、
地名とか関係なく全国に流通しているものなんです。
ただこれを観光地のみやげ店で売っていないかというと、
売っているパターンもあります。
なので、広義ではファンシー絵みやげと
呼べなくもない、という感じです。
でもいいです、かわいいですね。

実家(北海道)の食器棚で見つけた爪楊枝入れです。
(ぬりこ)

メロ
またこれは‥‥
ウシが哺乳瓶でミルクを飲んでいる。
子牛はお母さん牛から直接飲むはずなんですけど(笑)
「HOKKAIDO」はたぶんシールです。
陶磁器でデコボコしたものに印刷はできないので。
しかも、ウシのグッズは、
牧場とか日本中で売られているので、
あえて地名を入れていない。
急須みたいな取っ手が付いていますが、
もしかしたらコーヒーを出すときに
一緒に出すミルクポットだったかもしれないな、
と思ってます。後ろ側に注ぎ口があれば、ですが。
わからないですけど。

見たまんまの北海道土産です。
(みどりのり)

メロ
これまた時代を感じて、大変興味深いです。
衣装がアイヌの伝統的な模様。
ラワンブキかな、大きいフキがある。
そして、男女がフキの下でキスしています。
これはおそらく足寄とかかな。
大きいフキの葉っぱの下にいるこの2人は、
普通の人間な可能性もありますが、
アイヌの伝説に登場する
「コロポックル」かもしれません。
アイヌの場合、人間を登場させるときは、
だいたい酋長とかになるので。
白鳥もいるので、
屈斜路湖のおみやげの可能性がありますね。
ーー
これもファンシー絵みやげなんでしょうか。
メロ
これは難しいところですね。
まずこの人形はファンシー絵みやげとは言いづらいです。
いわゆる手芸のカントリー調の人形とも違うのかな。
ただ、北海道でも白鳥飛来地は
ほかにもあり得ると思うんですけど、
個人的に思うのは屈斜路湖。
コタン湯というアイヌの温泉があって、
保護活動のあいまに泊まりましたけど、
屈斜路湖の湖のきわっきわのところに
露天風呂があるんですよ。
白鳥が泳いでいる手前で入れるんです。
ーー
へえー!
メロ
後ろには雪山がバーッと開けていて、いいところです。
白鳥なので、もしかしたら
屈斜路湖のみやげということなのかもしれない。
そういうことが衣装からも
読み取れておもしろいですね。

(つづきます)

2020-04-04-SAT

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