前回の連載のなかで、
「ご実家などに眠っている
ファンシーなグッズはありませんか?」
と、呼びかけたところ、
メールやツイッターで
たくさんの投稿をいただきました。
どうもありがとうございます!
なんとメロさん、ほぼ全ての方の
投稿写真を鑑定してくださったんです。
ぱっと見ただけで、「あ、これはですね~」と
あらゆる方向に話が進んだ鑑定の様子を、
そのまま、こってりとお伝えします。
レアで貴重な「ファンシー絵みやげ」の数々、
その当時の時事ネタもおたのしみください。
担当はほぼ日のフジタです。
- ーー
- だんだん、ゴールが近づいてきました。
- メロ
- そうですね。
見ていきましょう。
お正月休みに帰省した、主人の実家で見つけました。
長野県の菅平のお土産です。
ジップロックを干すためのクリップとして、
現役で使われていました!
(そらのススキ)
- メロ
- 「ジップロックを干すためのクリップ」ですか。
- ーー
- 生活感があっていいですね。
- メロ
- いいですね。
裏には菅平(すがだいら)と書いてます。
菅平高原は、
ラグビーの合宿も試合も多く行われている、
ラグビーの聖地ですね。
スキーのゲレンデもあります。
パーキーカンパニーは3人組のキャラクターで、
これはスキーヤー・バージョンです。
こういう首だけのクリップ、
昔はたくさんありました。
今もちゃんと使われているというのが、うれしい。
(そらのススキ)
- ーー
- これについている紐は‥‥?
- メロ
- あとからつけたんでしょう。
- ーー
- ジップロックを干すために。
- メロ
- 大事ですね、ジップロック。
パーキーカンパニーというロゴにも、
よくみると小さい顔が3つあります。
これもまたかわいい。
- ーー
- いいですね。
でもジップロック干し用として現役なので、
これは、欲しい、と言えませんね。
- メロ
- かわりに洗濯ばさみをあげますから‥‥(笑)。
いや、でもね、
せっかくなので長く使ってもらえたらと思います。
- ーー
- 次も同じ方からです。
年末に帰省した実家にあった、
京都のお土産です。母がコーヒーをいれてくれて、
目の前に突然現れました。
(そらのススキ)
- メロ
- 実家で
「母がコーヒーを煎れてくれて、
目の前に突然現れました」ということですね。
これがドーンと置かれ、
「コーヒー入ったわよ」と。
- ーー
- 浮かびます。
これ、「KYOTO」と書いてますが、
どのあたりが京都なんでしょうか。
- メロ
- 説明します。
一番わかりやすいのが、
右上にある大文字焼きです。
五山の送り火をデフォルメしすぎて、
謎のもみじ饅頭みたいになっておりますが。
- ーー
- あっ、これ大文字焼き!
- メロ
- 知らないと気づかないかもしれません。
これ後ろの背景も山です。
山は緑色で描いてほしいですけどね。
白だから、空と雲に見えます。
下にいる動物、
普通に見たらネコに見えますよね。
山寺の和尚さんが鞠のかわりにネコを蹴る、
そんなわらべ歌も思い出しますが、
これおそらく一休さんが
トラを退治しているところだと思います。
- ーー
- おお!
- メロ
- 一休さん、京都ですよね。
「この屏風のトラを出してみよ」ですか。
実際にトラが出てくるの
意味わからないんですけど、
おそらく小坊主が
トラを追いかけているんで、一休さんです。
このトラの描き方も、はじめて見ました。
- ーー
- かわいいですね、トラ。
- メロ
- これはれっきとしたファンシー絵みやげですね。
めずらしいですけど。
- ーー
- 突然現れたそうですよ。
運命みたいですね。
- メロ
- その出会い方も含めていいですね。
しかも、大文字焼きのような
わかりづらい要素があるのもまたおもしろいです。
そして「RUN FOR IT」と、
大きく英語を配置するオシャレさ。
手書きじゃなくて書体で書くというのは、
あんまりなかったので、
ちょっと新しいものかもしれないです。
でもセンスは昔のものっぽいし、
いろいろ謎が多いです。
ブラックバスの夜光レリーフキーホルダー。
片付け中に発掘して
「大したモンじゃないか」と
スルーしかけたけど下部の半球レンズ内に
ファンシータッチのUFOみたいな絵を確認。
なんでUFO?と思いつつ
よく見たら絵の上に水色で
「HIROSHIMA」って書いてある。
原爆ドームだこれ‥‥!
(じんこ)
- メロ
- ブラックバスの夜光レリーフキーホルダー。
まずこのキーホルダーって、
自分もいくつか持ってますけど、違う絵なんです。
このボテッとした金属で、重厚なもので、
ブラックバスがドーンって描かれてるわけですよ。
ブラックバスを推しているところから、
これは釣り客向けです。
半球型のビー玉というか、
おはじきみたいなものを貼って
レンズ効果を生み出すことで、
その下にある絵を大きく見せるという
手法がとられています。
書かれている通り夜光なので、
蓄光素材の上に描かれてると。
たしかにUFOのように見えます。
でも、広島の文字、ほぼ見えない。
- ーー
- そうですね。
- メロ
- 見えないけど、広島と書かれているんでしょう。
これ、重いです。テーマが。
広島平和記念碑や平和記念公園は
学生が修学旅行で戦争について学んだりする
勉強の場ですので、
学生向けに売られているんですね。
ただファンシーな世界観にそぐわない施設を、
どうやっておみやげ用のグッズに描くか。
現地でも、いろんな表現があって。
ファンシーにしすぎてもダメ、
あまりリアルに描いてもダメ、
いろんな表現が散見されます。
その中でも特にこれは、
まさかの黄色に塗るという。
きっと、この小さい丸の中に
広島の要素を詰め込まなくてはいけなくて、
じゃドームを入れよう、となって、
子どもにわかるよう、精一杯目立つようにしたのかも。
こういう試行錯誤が、
当時の広島の観光地みやげに色々と見られます。
- ーー
- 次は、最後の投稿、
マグカップです。
ローマ字で日本語文書いてるのとか
ファンシーすぎる。
(すけさぶろう)
- ーー
- 瀬戸大橋のマグカップですね。
- メロ
- 日本語をローマ字で
書いてるのが、まさにファンシー絵みやげですね。
「食いねえ 食いねえ 寿司食いねえ。
江戸っ子だってね」
これは広沢虎造の浪曲の一節です。
描かれているイラストは、
森の石松とお遍路さんなんですよ。
- ーー
- なぜ森の石松とお遍路さんが?
- メロ
- 瀬戸大橋の四国側は香川県ですけど、
香川県ってキャラが少ないんです。
小豆島に行くと、
『二十四の瞳』とかあるんですけどね。
四国全体を見ると、
四国オールスターズというのがあります。
坊ちゃん、石松、龍馬、阿波踊り。
- ーー
- 阿波踊り!なるほど。
- メロ
- この4人が四国オールスターズとして並んだ
お土産がいくつかあります。
- ーー
- へええ。
香川県出身ですけど、
知りませんでした。
- メロ
- たぶん瀬戸大橋ができたことで、
四国全体が本州と近くなったことを
アピールしてるわけです。
香川の人からしたら、
「え?」って話だと思うんですけど。
高知みやげに「龍馬と瀬戸大橋」とか、
松山みやげに「坊ちゃんと瀬戸大橋」とか、
いやあなたの県に瀬戸大橋ないでしょう、みたいな。
- ーー
- (笑)
- メロ
- 徳島だけは先に大鳴門橋があったので
背景に描かれている橋は大鳴門橋なんですけどね。
瀬戸大橋によって本州から
愛媛や高知に来る人が増えたんですよね。
- ーー
- はい。瀬戸大橋は電車が通ってますから、
香川を通過してそのまま愛媛や高知に入れます。
- メロ
- そこから、
瀬戸大橋と坊ちゃん、瀬戸大橋と龍馬、
みたいな組み合わせが生まれました。
問題なのが、
徳島は「阿波踊り」という、
阿波踊りをする一般的な衣装を着た女性が
キャラクターであって、
龍馬みたいな特定の人物ではない。
そして香川の代表である「森の石松」は、
静岡の人なんです。
- ーー
- あ、そうだったんですね。
私も森の石松について、詳しくは知らないんです。
- メロ
- 森の石松は清水の次郎長一家の子分です。
今で言う静岡市清水区の人で、
そもそもが香川の人ですらない。
ですが香川には
ファンシー絵みやげになるような有名人が
あまりいないので、石松を持ってきている。
- ーー
- なるほど。
- メロ
- 石松は清水の次郎長に
「代わりに金比羅さんに行ってくれ」と
頼まれて金比羅代参をするんです。
そのとき船に乗って行くんですけど、
その物語が講談や浪花節になって、
この「食いねえ 食いねえ 寿司食いねえ」
というフレーズが生まれました。
しぶがき隊の「スシ食いねェ!」っていうのも、
もともとは創作上のものかもしれませんが
石松の言葉からの着想でしょう。
- ーー
- 何でも知ってる、メロさん。
すごい。
- メロ
- こういう情報、大事なんです。
なぜ金比羅さんの商品には石松が書かれてるか、
という説明こそが重要なんです。
香川の人ではないけど、
石松が金比羅さんに来たことが
歴史上の事実であることと、
浪花節としてもブレイクしたので
重要な存在だったことが挙げられます。
香川の琴平関連だと、
金比羅さんで七福神も使いますけど、
七福神は全国のいろんな地域でも使われる。
他には屋島の那須与一とかタヌキなんかもいますけど、
ちょっと香川全体を代表するには弱い。
那須与一自体も別に香川の人というわけじゃない。
ということで、とにかく石松推し。
- ーー
- なるほど。
石松推し
- メロ
- まさにこれは、
「食いねえ 食いねえ」って書かれてるので、
浪花節「石松三十石舟」のことを書いてます。
でも、めずらしいことです。
石松をただ使うことは多くても、
船に乗ってる程度で、
この「食いねえ 食いねえ」まで
載せるケースって少ない。
- ーー
- 勉強になりました。
恥ずかしいです、
自分が地元のことを知らないということが。
- メロ
- 自分も知らない時期ありましたよ。
たまたまそれを知る機会が早かったという、
それだけです。
だから金比羅とか讃岐路の商品のカップルって、
石松&お遍路とか、
石松&巡礼とかが多いです。
逆に清水では次郎長ばかりで、
石松をめったに見ないんです。
当然、あっても次郎長の後ろにいるケースで、
単独はほぼない。
- ーー
- ここでは主役をはれるわけですね。
- メロ
- そうです。
それがわかる、貴重なものです。
- ーー
- さて、これで
すべての鑑定が終わりました!
- メロ
- おお、ついに。
- ーー
- たくさん、ありがとうございます。
いよいよ次回、メロ賞を選んでいただきます。
(つづきます)
2020-04-08-WED