次第に日差しがあたたかくなってきました。
きれいで、やさしくて、おいしいものが
大好きなわたしたち。
親鳥であるニットデザイナー・三國万里子さんの審美眼に、
ときめきに花を咲かせる4人が水鳥のようにつどい、
出会ったもの、心ゆれたものを、
毎週水曜日にお届けします。
「編みものをする人が集える編み会のような場所を」と、
はじまったmizudori通信は、
ニットを編む季節の節目とともに一旦おやすみします。
ニット風景も一挙ご紹介です!
♯010
2021-01-13
- あけましておめでとうございます。
みなさんはどんな冬休みを過ごされましたか? - わたしはブラウスを縫いました。
わざわざ言うのもおかしいようですが、
上半身に着るものとして、わたしはブラウスが好きです。
さらにいうと、シルクのブラウスが大好きです。
以前は古着屋でよく見つけていましたが、
この頃はそういう出会いも少なくなり、
似たものを現行の洋服の中で探していました。
ところが残念ながら、わたしが思うような、
ちょうどいいシルクのブラウスって、
今のお店に売っていないんです。
こんなに物の豊かな世界にいながら
気に入るブラウスが見つけられないなんて、
わたしがわがままなのかしら、とも思います。
でもね、デザインと生地と仕立てが
三つとも自分好みのブラウスは、
あちこち探してもなかなかない。
いえ、お金に糸目をつけなければ、あるにはあるんです。
さるハイブランドのブラウスで、
これなら欲しいというのは、ものとして存在するんですが、
20万円近くします。
本当に素敵だけど、それは
わたしが買うものではないと思う。 - 数年前、その十分の一の値段(2万円ほど)の
シルクのブラウスを通販で買ったことがありました。
中堅のリアルクローズのブランドで、
さっぱりしたシンプルなデザインだったから、
「これはいいんじゃない?」と注文してみたんですが、
結果は「がーん…」でした。
生地は粗く、糸にコシがないせいですぐシワになり、縫製も貧相です。
一度はタンスに納めたものの結局着る気持ちにならず、
ゴメンと思いながら区のリサイクルに出しました。 - 買えないなら、わたしが縫えばいいではないか。
そうだよ、自分の好きな布と形でブラウスを縫おう。
2万円ブラウスの失敗の後でそう思い立ちました。
まず必要なのは、しかるべき生地です。
素人向けの小売店をいくつかまわりましたが、
そもそもシルクの生地というものがあまり置いてなくて、
あってもいわゆる「衣装用」の、すごくゴージャスだったり、
手織りっぽい厚手のものだったりで、
残念ながらわたしの用途には合いません。
わたしが求めているものは、
そもそも素材から流通していないのかもしれない、
と途方にくれました。
それでもあちこち探して、
ようやくコットンのタナローン生地で有名な
リバティー社のウェブショップで、
感じのいいシルクのクレープ・デシン地を見つけました。
取り寄せてみると控えめな光沢が美しく、
薄手の割に透けず、コシがあって縫いやすい。
実際にブラウスを縫い、着てみると肌触りも気持ちよく、
何度か手洗いを繰り返すうちに
「しゃりしゃり」していく質感もいい
(リバティー社はおそらくドライクリーニングを勧めるでしょうが、
わたしは自分で洗っています)。
値段は無地で1メートル7500円、柄物だと8800円と、
なかなかしますが、ブラウスならば
ギャザーを入れたデザインでも1メートル程で作れます。
これに小さいボタンと芯地を少しと縫い糸を足して、
材料費は1万円くらい。
わたしが縫うんですから人件費はかかりません。
自分の好みをあれこれ詰め込んだ
ブラウスの値段としては高くないし、
素材に敬意を持って作り、着続けるためには安すぎないほうがいい。
ちょうどいい値段じゃないかと思います。
- それからは時間を見つけては、
自分に合ったブラウスやワンピースといった
簡単な服を作るようになりました。
わたしの洋裁の教育は中学の家庭科止まりですが、
若い頃にソーイングの本を買ってよく服を縫ったので、
ある程度自然に手が動きます。
タンスの中の洋服も先生になってくれます。
縫い方がわからないときに手持ちの服をひっくり返すと、
書いてあるようによくわかる。
小さな部分に込められた工夫が見えて、
既製服の技術ってすごい、と以前に増して思うようになりました。 - お正月のブラウス縫いに話を戻しましょう。
クリスマス前に生地を注文していたので準備は万端、
デザインも決まっています。
胸にギャザーの切り替えを入れ、
肩幅は狭くして袖山にもギャザー、
全体のシルエットを丸くふんわりさせる。
衿は丸く小さめで、袖丈は台所仕事をするときのために短め、
でも短すぎず。
ボタンは上から二つはずしても
下着が見えないように、ボタンホールの位置に気をつける。
縫いしろはなるべくジグザグミシンを使わず、袋縫いにする
(こうすると洗濯してもほつれてこないし、
裏の始末がきれいだと後々まで気持ちいいんです)。
逸る心を抑えながら製図して、
まずトワルでサンプルを縫い、さらに調整して型紙を作りました。
この部分さえじっくり考えれば、あとは手を動かすだけです。
とはいえ、いい素材を使うことの緊張感から、
切るのも縫うのも慎重になります。 - こうして元日、2日と朝から晩まで部屋を散らかして縫い続け、
3日の午前中にボタンをつけ終えて、
ようやくブラウスは完成しました。
鏡の前で着てみると、体に付かず離れず、のびのび動けて、
わたしという生き物の新しいシェルのようです。
今のところ黒いべっちんのタイトスカートと
こげ茶のカシミヤのカーディガンを合わせていますが、
これから暖かい季節に向けて、お揃いのスカートを縫って、
ワンピースのように着るのもいいな。
布はまだまだあるし、
今年はたくさん縫うぞー、と思っています。
派手なボトムスが好き。
- 個人的な持論なのですが、
メインを張るものに気合を入れるより
サブに控えているものに注力したほうが
「ちゃんと気をつかっている」感じがでるように思います。 - ごはんの支度をするときも、
メインディッシュは
お肉やお魚をシンプルに焼いたもので十分に、いい。
あまったパワーを、副菜のほうに割いて
ちょっと凝ったサラダや前菜にすると
一気に食卓の質があがる気がするのです。 - 服もまたしかり。
メインディッシュにあたるのは目の行きやすいトップス、
ボトムスは副菜かしら、と思うのですが
ここに派手な色、質感がおもしろいなど
パンチのあるものを持ってくると
ぐっとおしゃれな雰囲気を醸し出してくれます。
冬、ダークカラーのお洋服が多くなる季節ですが
目をひくボトムスを
ワードローブに加えるの、おすすめです。
編みものの伴走者
- 2021年になりましたね!
今季編みものシーズンもいよいよ円熟期を迎えたところでしょうか。
まだまだもう少し冬がつづきますよね。
わたしは2009年の冬に三國さんの「編みものこもの」に出会って
編みものをするようになったのですが、
もう12年前(!)なので、それなりの時間を
編みものをして過ごしてきました。
私の編み時間の一番のおともとは、なにか。
恥ずかしながらそれは「テレビ番組」です。
(そういう方、きっとわたしだけではないはず‥‥。) - 数々の番組のなかでも、年末年始のテレビ番組たちには
かなりお世話になっており、
年を越しながら、やっぱり年末年始の編みものはいいわ、
と今年も実感したのです。
一番編みものと相性いいな、と思うのは、
年末にたくさんやっている「歌番組」です。
「紅白歌合戦」に「ミュージックステーションスーパーライブ」
「カウントダウンTV」などなど‥‥。 - 90年代、00年代のCDセールス全盛期に学生時代を
過ごしてきたので、
歌で時代を振り返るのがどうも好物なのです。
編み図などを確認したいときにも
邪魔にならない存在感、
見終わったあとの満腹感、
けっこう編み進んだよね、と思える達成感などが
わたしの編みものの名伴走者として
わたしに支持されつづける理由であります。 - 今日は年末にみた「紅白歌合戦」で
はじめて聞いたyoasobiを聞きながら書いてみました。
さて、今年もまた編みものを楽しんでいきましょう!
お散歩のお供のアランのポンポン帽親子。
夫は長い時間帽子をかぶると頭が痛くなるのですが、
三國さんデザ インのニット帽はかぶり心地もとても良いそうです。
子供のは少し 大きかったけど、来年にはちょうど良い事を願って。
次はセーターを編む約束をしていたのですが、
自分も欲しくなり先 に寄り道してきます。
夫は長い時間帽子をかぶると頭が痛くなるのですが、
三國さんデザ
子供のは少し
次はセーターを編む約束をしていたのですが、
自分も欲しくなり先
お揃いのアランのポンポン帽子、
とってもかわいいです。
次はどんなお揃いができあがっていくのか、
楽しみですね。
とてもいい写真ですね、頬が緩みました。
青い帽子と赤い帽子、公園でも街中でも
ご自分の家族を見つけるときの目印になるでしょうね。
これからも欲しいものから順に、どんどん編んでくださいませ。
青い帽子と赤い帽子、公園でも街中でも
ご自分の家族を見つけるときの目印になるでしょうね。
これからも欲しいものから順に、どんどん編んでくださいませ。
“わたしのニット風景”を、年明けも引き続き募集します。
ほぼ日の中で編みものの進み具合やできばえを
みんなでたのしみあえたら、と思います。
完成した作品のコーディネート、お供のお菓子やお茶など
写真とひとこと添えて送付ください。
送り先→postman@1101.com 件名→わたしのニット風景
福岡県の三菱アルティアムで行われている「編みものけもの道 三國万里子展」は1月末まで。次回は東京にも巡回します!
2021-01-13-WED