かつて、もう15年以上前に、ほぼ日で、
「いつもさみしい問題」というコンテンツが
とても盛り上がったことがありました。
もともとは、血液型によって、
さみしさを感じる度合いが違うのかも、
という遊びだったのですが、
だんだん本質的な「さみしさ」の話になって、
それはそれで、とてもおもしろかったのです。
そのコンテンツを、ずっと憶えていたのが、
「ほぼ日の塾」の第一期生であり、
いま、さまざまなメディアで活躍している
ライターの朝井麻由美さんでした。
いろんなツールで人と人がつながってる
いまのほうが、さみしいかもしれない。
いや、むかしもいまも、
人はずっとさみしいのかもしれない。
「さみしい」について話していきます。
人選は朝井さんにお任せしますので、
意外な人が登場するかもしれません。
ところでみなさん、いつもさみしいですか?
もともとの「いつもさみしい問題」(2004)
取材・構成 朝井麻由美
写真 髙倉大輔
最上もが(もがみもが)
1989年2月25日生、東京都出身。
ドラマや映画、バラエティ、
ファッション誌などに出演し
さまざまなメディアで活動中。
■Twitter @mogatanpe
■Instagram @mogatanpe
■OFFICIAL WEB SITE https://www.mogatanpe.com
■最上もが公式LINEにて最新情報掲載中
- ──
- もがさんは「さみしい」ですか?
- 最上
- さみしい、ですね。
さみしくない時間のほうが少ないくらい(笑)。
- ──
- いつも、さみしい。
- 最上
- はい。
いちばんさみしいのは、
家に帰ってから、寝るまでの間です。
- ──
- それは、人と会っていて、
急にひとりになったから?
- 最上
- 人と会っていても、いなくても、です。
- ──
- どういう感情なんだろう‥‥?
- 最上
- どういう感情だろう‥‥。
少なくとも、楽しくはなくて、
ポジティブでもなくて、
さみしいから人に会いたいと思うこともあれば、
さみしいから会いたくないと思うこともある。
漠然としたもので、
じぶんでもどうすればそのさみしさが
ぬぐえるのか、わからない‥‥。 - でも、特にさみしいのはここ1年くらいのことで、
でんぱ組.incにいて忙しかったときは、
「さみしい」についてあまり考えて
いなかったように思います。
そもそも当時は寝る時間を確保することで
いっぱいいっぱいだったので。
- ──
- 時間があると考えちゃうんですね。
さみしいって、贅沢な感情なのかな‥‥。
- 最上
- そうかもしれない。
忙しかったときは
「一生懸命なにかをしなきゃいけない」とか、
「突き進まなきゃいけない」とか、
「自分は人のためになにかをしなきゃいけない」
とずっと考えていたので、
「さみしい」よりも
緊張とか、体力的につらいとか、
のほうが勝っていました。 - その頃は、同窓会にも、
同級生の結婚式にも行けず、
コミュニケーションがどんどん
減ってしまったんです。
「仕事だから行けない」ばかりだと、
やっぱりどんどん誘われなくなるわけですが、
以前よりも余裕が出てきたいま、
誰かに会えるのかというと、
別に誰にも会えないことを突き付けられて‥‥。 - 当たり前なんですけど、
人って相手とコミュニケーションを取ったぶん、
相手からも大切にしてもらえるんですよね。
ぼくは長年、そこを怠ってきてしまったな、って。
- ──
- コミュニケーションを取ったら取ったで、
別のつらさもあると思うんです。
- 最上
- ありますね。
それは何度も感じたことがあります。
コミュニケーションをうまく取れなかったり、
じぶんが思っていることを
うまく伝えられなかったり、
だったらひとりでいるほうがいい
と思ったりするけど、
いざひとりになると、
ひとりでいるのもさみしい。
‥‥ワガママな話なんですけどね。
- ──
- うん、うん。
- 最上
- 最近は、「さみしい」の反対、を
一切なくしてしまえば、
「さみしい」って
思わなくなるんじゃないかと思っていて。
- ──
- 「さみしい」の反対。
- 最上
- はい。「さみしい」の反対が、
「楽しい」なのか、「安心」なのか、
何なのかはわからないのですが。
ぼく、実家が三世帯だったので、
家に帰ると必ず誰かがいて、
「きょう、学校でこういうことがあった」とか
たくさん話していたんですよ。
そういうふうに育ったからこそ、
「誰かとしゃべりたい、さみしい」と
思っちゃうのかもしれません。
- ──
- かといって、誰とでもいい、
というわけじゃないんでしょうね。
- 最上
- そうですね。
ぼく、昔からずっとネットゲームをやっていて、
「ぼく」という一人称も、
そのとき男のキャラクターでゲームをして、
チャットをしていたのが
そのままになっているんです。
学校でいじめられて、友達もあんまりいなくて、
そんなときにネットゲームで知らない人相手に
じぶんのキャラクターをつくって
会話をすることに楽しさを見出していて。
間違いなくその頃のぼくは、
ネットゲームに救われました。 - でんぱ組に入った頃にネットゲームをやめて、
最近また復帰したんですけど、
当時とは逆で、
偽りのじぶんで会話をすることに対して、
さみしさというか‥‥
むなしさのようなものを感じたんですよ。 - じぶんの正体がバレないようにしていても、
チャットで会話をするうちに、
みんなお互いがどういう仕事をしているのかとか、
どんな顔をしているのか、と
気になってくるんです。
「接客業だよ」とか適当にじぶんの中で
設定をつくって会話するものの、
だんだん誰に何を言ったかもわからなくなっちゃって。 - それで、仲がいい子ひとりだけには、
ほんとうのことを言ってみたんです。
でも、やっぱり「最上もが」って言われたら、
びっくりするじゃないですか(笑)。
- ──
- それはそうですよね(笑)。
- 最上
- それで、向こうに
変に気を遣われているようなのが伝わってきて、
さみしさを感じてしまいました。
- ──
- ネットゲームの中で偽りのキャラクターで
話すこと自体は昔と変わっていないのに、
「最上もが」になったことで、
その意味が変わってしまったんですね。
- 最上
- だからといって、
オフラインのゲームはそれはそれで、
ゲーム内のキャラクターとじぶんとの壁を感じて、
やっぱりさみしいんですよ。
この世界にぼくは行けないし、
話しかけてもおなじことしかみんな答えてくれない。
- ──
- じぶんは決してオフラインゲーム内の
キャラクターと交われないから。
- 最上
- オンラインゲームは、中に人がいるけれど、
オフラインゲームにはそれが一切ないって思うと、
そのキャラクターを好きになっても、
別に会えるわけじゃないし、
これは現実じゃないんだ‥‥、と痛感してしまうんです。
- ──
- むしろ、現実のじぶんから離れるために、
じぶんとは別物としてゲームをする人もいると思いますが、
最上さんの場合は常に「じぶん」なんですね。
- 最上
- そうですね。ぼくはずっと「じぶん」です。
取材:2018年8月
(つづきます)
2019-04-03-WED
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取材・構成 朝井麻由美
1986年、東京都生まれ。
編集者、ライター、コラムニスト。
著書に『ソロ活女子のススメ』(大和書房)、
『「ぼっち」の歩き方』(PHP研究所)、
『ひとりっ子の頭ん中』(中経出版)など。
『MOTHER2』とウニが好き。