マイク１本でラップするアフロさんと
アコースティックギターを弾くUKさんからなる
二人組の音楽バンド「MOROHA」。
糸井重里はあるイベントに参加した際、
MOROHAのパフォーマンスを観て、
そのことばと音楽に魅了されたといいます。
正反対の個性、対極にある価値観、
プラスとマイナス、あっち側とこっち側‥‥。
相反するものを分けようとせず、
混じり合ったそのままを受け入れる。
軽やかに飛び交う３人の会話からは、
そんなテーマが浮かび上がってきました。
はじめてMOROHAを知るという方は、
トーク前にほぼ日オフィスでおこなわれた
彼らのミニライブの映像から、どうぞ！
アフロ（左）・UK（右）
MOROHA（もろは）
2008年に結成された
MCのアフロとGtのUKからなる2人組。
結成 当初は、渋谷Familyや池袋Bedなど、
HIPHOPクラブイベントをメインにLIVEを行うが、
生音でビートのない編成ゆえ出演者や
オーディエンスから冷ややかな視線を浴びていた。
こうした現場を通して屈強な精神力を養う。
言葉から汗が滲み出る程に熱量を持ったラップ、
そしてギター1本だからこそ際立つ
UKの繊細かつ獰猛なギターフレーズ。
個々の持ち味を最大限に生かす為、
このMC×Gtという最小編成にこだわる。
抽象的な表現を一切使わず、
思いの丈を言い切るそのスタイルとリリックは、
賛否両論を巻き起こしている。
鬼気迫るLIVEはあなたにとって毒か薬か。
雪国信州信濃から冷えた拳骨振り回す。
- 糸井
- 「下手に見せる」とか「わざと音を外す」とか、
テクニックとしてやる人はいますよね。
壇上に上がる直前で、わざと転んでみせるとか。
ああいうの、ぼくは嫌だなって思っちゃう。
できることならふつうがいい。
憧れは子どもですよ、やっぱり。
- アフロ
- 無邪気さというか。
- 糸井
- 考えてないっていうかね。
- アフロ
- でも、子どもの頃って
ちょっと考えてませんでした？
- 糸井
- 考えてたんですよ。
子どものときにそれで失敗したんでしょうね。
アフロ君は、ひねてた子？
- アフロ
- ひねてたっていうか、
大人にサービスしてましたね。
寝顔を見られてるのを知っていながら、
「かわいいと思って見られてんなあ」とか。
だったらもうちょっと寝ててやるかって。
なんなら口をムニャムニャしてみたり（笑）。
- 糸井
- 作品ですね（笑）。
ウケたいと思うのは本能ですから、
子どもは子どもでそれをしますよね。
- アフロ
- 大人になってから同じことをやると、
たぶん下手なのが腹立つんですかね。
- 糸井
- うーん。
- アフロ
- 俺、性格って最初から持ってるものじゃなくて、
目指すものだと思っているんです。
- 糸井
- いいこと言うね。
- アフロ
- いいこと言ってんなと思いながら言いました（笑）。
でも、俺、ほんとうにそう思うんです。
- 糸井
- うん。
- アフロ
- だから、壇上にあがる前に転んだりするのも、
そうやって人に好きになってもらいたいんだろうなって。
相手に心開いてもらうために
自分の失敗話をしようみたいなノリで。
でも、糸井さんがそういうのを嫌いなのは、
わざとやってるってわかっちゃってるからですよね。
- 糸井
- わかられてるってことに気づかない
「鈍さ」に腹が立つんだと思う。
- アフロ
- ああ、たしかに（笑）。
いまの目線は「ジョンのそれ」ですね。
- 糸井
- ジョンのそれ（笑）。
- アフロ
- ああ、でも、めっちゃわかります。
そうかもしんないですね。
- 糸井
- それが何回も何重にも重なっていくと、
やっぱり人のことが信用できなくなりますよね。
スターとか人気タレントみたいな人が
危ない橋を渡ってるなって思うのは、
みんながおもねってくるのが見えるのに、
「あっ、気づきませんでした！」を
わざとやってるからなんです。
だから偉くなった人が自分を維持するのって、
相当難しいんだろうなあと思いますね。
- アフロ
- きっと、そうなんでしょうね。
役者さんがウワーッて泣きの演技をして、
「OK！」って言われた瞬間に、
「いまのどうでした？」って
切り替えられる人いるじゃないですか。
ドラマのメイキング映像とか見てると。
- 糸井
- いますね。
- アフロ
- 俺、ああいうの見ると、
役者はすごいなって思っちゃうんです。
技術で泣いて、気持ちはすぐ切り替わるんだって。
そのことを役者さんに話したら、
あれはスタッフに対してのアピールだって。
それ聞いて、なんかめんどくせえなあと（笑）。
- 糸井
- うん（笑）
- アフロ
- でも、そういう俺らだって、
さっきここで演奏しましたけど、
そのときといましゃっべってる自分は違いますよ、
の気持ちがちょっとあるんです（笑）。
- 一同
- （笑）
- アフロ
- 演奏中はあんな感じだけど、
終わったらニコニコして、
撤収も手伝いますよみたいな顔してる俺って、
やっぱりまわりへのアピールが入ってるんだなって。
- 糸井
- まさに半径０メートルの感想が（笑）。
- アフロ
- そういう俺の変化を、
UKはずっと横で見てるわけだよね？
- UK
- 変化というか、変異をね。
時代における。
- 糸井
- もっとややこしいやつだった？
- UK
- エグかった（笑）。
- 一同
- （笑）
- アフロ
- ワハハハハハ！
- 糸井
- けっこうケンカもした？
- UK
- ふたりでは、そんなないです。
- 糸井
- 他人とは？
- UK
- 他人とは‥‥してたですね（笑）。
- アフロ
- 尖ってなきゃいけないっていう使命感？
だからよくないんだ、
ジョン・レノンの話とか。
もうしないでくださいよ。
「すごい人は性格が悪かった」とかいうと、
「俺もそっちに合わせなきゃ」って思っちゃうもん。
それ、不幸になるよ。不幸になる。
- 糸井
- あいつより俺の方が尖ってるとか。
ピリッとした俺でいなきゃなみたいな。
- アフロ
- 俺ら、そんなんばっかでしたから。
ほんとうに地獄だったのが、
まだ全然売れてないときに、
出演者みんなが同じ楽屋になると、
そこでマウントの取り合いがはじまるんです。
愛想よくあいさつしたほうが負けみたいな。
だからなるべく無愛想な感じで、
ざーっす、みたいな感じで入っていって。
- 糸井
- 一応、あいさつはするんだね。
- アフロ
- 無視はさすがにしないですけど、
ほとんど相手の顔も見ないで、
なるべく無愛想に「ざーっす」みたいな。
- 糸井
- ちょっと薄目にして（笑）。
- アフロ
- そんときの俺は、
絶対まわりになめられたくなかったから、
楽屋に入ったら誰とも話さず、
おもむろにカバンからリンゴを取り出し、
それを無言でかじってみたり‥‥。
- 一同
- （笑）
- アフロ
- そして俺は楽屋の隅をじっと見つめ、
ときおり何か真実に気づいたような顔で
小さくうなずいてみたり。
- 糸井
- なんなの、それ（笑）。
- アフロ
- いや、そういうやつを育てちゃうんですよ。
ジョン・レノンの話とかは。
よくない、危険だ！
- 糸井
- それを何年もやってたの？
- アフロ
- やってましたね。
あと、お灸もやってました。
- 糸井
- お灸？
- アフロ
- 俺、タバコ吸わないんですけど、
くわえタバコで煙を出してるバンドマンとか、
ちょっとハードボイルドに見えるわけですよ。
でも俺、タバコが吸えないんで、
楽屋で肩に「お灸」を乗せてました（笑）。
- 一同
- （笑）
- 糸井
- わははははは！
- アフロ
- 楽屋の奥でひとり、
両肩から煙出してるやつがいるっていう（笑）。
- 糸井
- それ、相方は見てたわけだよね（笑）。
- UK
- 見てもない。
- 一同
- （笑）
- 糸井
- 見てもない（笑）。
- UK
- 見てもないです。
- アフロ
- でも、お灸は一緒にやってたよね？
- UK
- いや、俺はギターで腕を使うから。
たまに疲れをとるためにやってたけど。
- アフロ
- それ、筋肉のため？
- UK
- そうだよ。
- アフロ
- ほんとか？
- UK
- 決して煙目的ではない（笑）。
（つづきます）
2023-10-10-TUE
-
©2023 SIGLO/OFFICE SHIROUS/Rooftop/LONGRIDE
MOROHAのアフロさんが初主演を務める
映画『さよなら ほやマン』が、
11月３日（金・祝）より新宿ピカデリー他、
全国で公開されます！舞台となるのは、宮城県石巻のとある離島。
漁師をめざす兄アキラと、
船にのることができない弟シゲル。
その兄弟の前に現れたのは、
東京からやってきたワケありなマンガ家。
その３人がひょんなことから
共同生活をはじめるという青春物語です。アフロさん演じるアキラは、
ちょっとおバカなところがありつつも、
不器用で、まっすぐで、
どんなときでも弟を守ろうとする
正義感あふれるやさしいお兄ちゃん。
ことばにできない複雑な感情を
全身で表現するアフロさんの演技に、
ぜひ最後の最後まで注目してみてください。全国の劇場劇場一覧は、
映画の公式サイトからご覧いただけます。