
糸井重里が監修し、企画、設定、全シナリオを手掛けた
RPG『MOTHER』シリーズ。
そのことばをすべて収録した本を
2020年12月に発売したことをきっかけに、
立ち上げたのが「ほぼ日MOTHERプロジェクト」です。
『MOTHER』にまつわるコンテンツや
アイテムをつくっている本プロジェクトのなかから、
代表的なアイテムの
つくり手のお話や現場のようすをお伝えします。
『MOTHER2』30周年の記念に、
ジェフのメガネをつくりたい!
JINSさんにお願いしたら快諾してくださって、
「ふつう」と「ドット」の
2つのジェフのメガネができあがりました。
「ふつう」は、
「ジェフのメガネが現実にあったとしたら?」
というコンセプトからデザインした
クラシックなフレームでサングラス仕様。
「ドット」は、
「ゲームのなかのメガネをそのまま再現したら?」
という試みを形にしたドット画のフレームで
ブルーライトカット仕様。
ジェフのメガネについて、
企画のリーダーの内海允斗さんと、
デザイナーの叶雄吾さんに
お話をうかがいました。
- 叶
- 振り切ってますよね、この2つ。
「ふつう」も「ドット」も
どちらも好きなんですけど、
物としての存在感は、
自分の予想を超えてきたというか。
- ──
- ああ、デザインしてるときと、
実際に物になったときでは、
デザインされた方から見ても
印象が違うんでしょうね。
- 叶
- そう。
ものすごい弾けたものができたなと思って。
『MOTHER』ファンの方に、
コレクションしていただけたら
うれしいなと思います。
△デザイナーの叶雄吾さん。
- ──
- コレクション。うんうん
- 叶
- こうやって見比べると、
けっこう「ふつう」が丸い印象で、
「ドット」はかなり四角い印象に仕上がったかなと。
「ふつう」と「ドット」は、一見違うんですけど、
よく見るとベースの形の要素は同じです。
- 内海
- 「ふつう」と「ドット」は、
「ふつう」がリアルなジェフのメガネで、
「ドット」はドット絵のジェフのメガネで、
3Dと2Dの世界観で2パターンです。
だから、2本並んでる方が
メリハリがあっていい感じもしますね。
△企画リーダーの内海允斗さん。
- 叶
- その面白さは意識しました。
「ふつう」の解像度が粗くなると
「ドット」になります。
- ──
- 解像度の違い!なるほど!
それにしても、
「ドット」の企画案をはじめて見たときは、
びっくりしました。
- 叶
- はい。挑戦でした。
- 内海
- 挑戦だよね、本当に。
- 叶
- 実際に工場でつくる前にデザイン画を
部内のメンバーで確認するんですね。
それは通ってはいるんですけど、
でも、たぶん、誰ひとりとして、
「ドット」のほうは、
まともにかけられるものになるとは
思ってなかったんじゃないかなと。
- 内海
- そうね、それはあるかもね。
- 叶
- 誰もなにも言ってこなかったけど、
「まあ、ゲームのグッズだしね」ぐらいに
思ってた人は多いんじゃないかな。
ぼくはそんななかでも密かに、
ちゃんとかけ心地がいいっていうのを目指して、
必ずそうなると信じてやってたんです。
かけ心地悪かったら、
ただの置物になっちゃうんで。
- 内海
- みんな、構造に対して
何も言わなかったというか、
言えなかったに近いのかもしれないです。
いや、「ドット」みたいな形は
やったことがなさすぎて、
指摘ができなかったっていうか。
そんななか、叶さんは
最後まで考え続けていたと思います。
- 叶
- そうですね。
かけ心地がいいようにするのが、
けっこう地道な作業でした。
なんか違う、ここが狭い、でも広げたら、
ジェフのメガネじゃなくなるとか、
いろいろ右往左往した上で
最終的にここまで持っていったというか。
めちゃくちゃ
トライ・アンド・エラーがありましたね。
シンプルだけど難しかったです。
- 内海
- たぶんJINSが過去に作ったメガネで、
ここまでドットをそのまま立体化して、
現実世界に起こすことをしたのは、
初めてと思っていますし、
「『MOTHER2』30周年の
アニバーサリーです」ってお話をもらって、
おそらくこういう機会は
そうそうこないと思ったときに、
叶に対しての要望も、
「振り切って、好きなことやってください」
でした。
- 内海
- 要はいい意味でデザイナーを選ぶし、
すごくいいっていうベストの1本を、
立体化してみちゃおうよ、みたいな。
それに対して、叶が全力で応えて
この形を起こしたデザインです。
で、アイデアの時点から、
JINS側ではこれを立体化したら
相当面白いっていう手応えがあって、
最初に企画書をお持ちするときも、
そもそもやりたい前提で話を持っていきました。
ほぼ日さんなら、きっと応えてくれるだろうと。
このぐらいやった方がファンの方も
喜んでくれるんじゃないかと。
- 叶
- 「ドット」って、
見た目はインパクトありますけど、
かけていただくと
意外と普通のメガネと
変わらないかけ心地です。
「ドット」は鯖江でつくってるんですけど。
設計者の人と話をしながら、
メガネとして成り立つように調整をして、
実現した経緯があります。
鯖江には3D造形というか、
そういう設計のプロフェッショナルの方が
けっこういて。
- ──
- ほお! 「ドット」は鯖江なんですね?
相談をしたときはどういう反応でした?
- 叶
- 難しいのを持っていくと
渋い顔されるのかなと思ってたんですけど、
逆で、普段やってないことに
挑戦できて楽しいみたいな。
けっこう楽しそうな印象でしたね。
- ──
- あ、それはうれしかったですね。
- 内海
- (笑)
- ──
- 「ドット」はテンプル(つる)のデザインが
ギザギザしていて、
かける前は痛そうに思ったんですけど、
かけたら全然痛くなくて。かけ心地もよくて。
で、少し内側に向かってカーブしているところが
かっこよくって。
こう折りたたんで閉じたときも、
カーブもすごいかっこいいと思いました。
- 叶
- はい。
「ドット」はテンプルを太くした方が合うなって
思ったんですけど、
太いとメガネとして調整できないんです、
だから、調整をしなくていいような
こういう、ちょっとビヨンビヨンとはねて
顔を包み込むような構造を採用しました。
- ──
- あ、なるほど!
だからいろんな人の頭の形に合うんですね。
- 内海
- そうですね。補足ですが、メガネって、
メガネを耳に対して曲げて引っかける
調整が必要な仕様と、
ストレートなテンプルで、
そのまま顔を包み込むようにかける仕様‥‥
スポーツタイプのサングラスに多いんですけども、
大きく2つのパターンがあるんですね。
- 叶
- ぼくとしては、
ぜひこれでゲームしてくれたら
ありがたいなと思ってます。
- 内海
- ブルーライトカットなんで、ぜひ。
- ──
- 「ドット」は丸いケースが
ついているんですよね。
- 叶
- はい。
ケースは、このメガネ拭きとセットで
ストーリーを考えました。
ジェフが最初に登場するときのストーリーです。
- 叶
- 研究所から出発して、スカイウォーカーに乗り、
飛んでいき、落ちると。
ぼくはこの爆発のグラフィックが
すごい好きだったので、
ぜひこれを入れたいなと思ってました。
- 叶
- 内側はウインターズのマップで、
結果、こういう丸いケースになりまして。
- 叶
- このポーチは、
カバンやリュックにつけていただくと、
意外とかわいいかなって。
- ──
- かわいいです。
小物入れとしても、すんごくかわいいです。
(つづきます。)
2025-02-17-MON