糸井重里が監修し、企画、設定、全シナリオを手掛けた
RPG『MOTHER』シリーズ。
そのことばをすべて収録した本を
2020年12月に発売したことをきっかけに、
立ち上げたのが「ほぼ日MOTHERプロジェクト」です。
『MOTHER』にまつわるコンテンツや
アイテムをつくっている本プロジェクトのなかから、
代表的なアイテムの
つくり手のお話や現場のようすをお伝えします。

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WAREHOUSE スウェット 第1回 約30年間作られてきた逸品。

アメリカの文化をとことん追求するブランド、
「WAREHOUSE COMPANY
(以下、ウエアハウス)」にあこがれて、
コラボレーションのお願いをしたのは2年前のこと。
まっさきにオーダーしたのが
今回完成した、吊り編みのスウェットシャツです。

ウエアハウスのスウェットは、
着古されたヴィンテージを徹底的に研究して、
おどろくほど忠実に再現されています。
そのアメリカンヴィテージに対する情熱と
研究と技術の凄みが、
この吊り編みのスウェットシャツにも
たっぷり注ぎ込まれています。
広報担当の藤木将己さんに
お話をうかがいました。

──
前回は『MOTHER』の
長袖Tシャツを作っていただきました。
今回はそのときと同じプリントで、
満を持してスウェットシャツです。
藤木
本当は、最初から
「スウェットシャツを」と
お願いされていたんですけど。
やっと実現できました。
──
はい。そのときは、
「すぐにはできないんですよ」と
お話をいただいて。
藤木
すぐにでもやりたかったんですけど、
「ちょっと待ってほしいんです、
いろいろ整理しますので」と、
いったんお断りしてしまって。
すみませんでした。
──
いえいえ。
それは、工場の関係で?
藤木
そうなんです。
ウエアハウスの
スウェットシャツの生地は、
和田メリヤスという吊り編み機を
所有されている工場が作っています。
和田さんとのつき合いは長くなるんですが、
「数をたくさん発注できるから」
とかではなくて、
間に入っていただいている人と人との
関係性でつながっているんです。
うちも
「どれだけ時間がかかろうとも‥‥」
みたいな感じでお付き合いを
させていただいていて。
このスウェットを継続するには、
第一に和田メリヤスさんのラインを
考えないとダメなんです。

△藤木将己さん △藤木将己さん

──
今回作っていただいたのは、
「403」という型番の
スウェットシャツです。
藤木
僕がウエアハウスに入社したのが
1997年なので、もう27年経ちました。
「403」は、そのさらに2年前くらいに
作り始められたモデルです。
仕様も当時から基本的に変えていません。
──
つまり、ウエアハウスの
定番であり、自信作。
藤木
その通りです。
当時、僕が入社したときに、
倉庫とも言えないような狭い部屋に
蓋の開いたダンボール箱が
たくさん置いてあったんです。
そのダンボール箱の中に入っていたのが、
オレンジ色の「403」でした。
当時は展示会もなかった時代ですから、
全国の特約店に
「週末、お店に置いてみてください」と言って
サンプルを出荷していたんですね。
売れればそのまま買い取ってもらえますが、
ダメな場合は戻されてしまう。
そのとき、ウエアハウスの代表である
塩谷兄弟(塩谷健一、塩谷康二)が、
自信満々に言ったんですよ。
「まあ見ててみ、絶対返って来ないから」って。
二人の言う通り、全国のお店に送った商品は
ほとんど返ってきませんでした。
──
当時から好評だった、と。
藤木
はい。でもこのスウェットシャツ、
当時から変えたところが
ひとつだけあるんですよ。
──
それは?
藤木
サイズ感です。
当時のアメカジはジャストサイズで
タイトに着るのが主流。
着丈もすごく短めでした。
でもいまは36(当時いちばん
小さかったサイズ)がなくなって、
着丈も長くなったんです。
──
時代の流れによる変更ですね。
今回のスウェットシャツも、
サイズは42と44、
MサイズとXLサイズなんですけど、
少し大きめに着ていただきたくて、
この2サイズをお願いしました。
藤木
はい。いまは少し大きめで
だぼっと着るのが主流ですからね。
昔のアメカジのTシャツや
スウェットシャツは、
いまでは考えられないくらい
着丈が短くて。
それでいて、みんなジャストで着たいから、
小さいサイズが本当によく売れたんです。
いまとは真逆。
懐かしいですね(笑)。
──
ウエアハウスのスウェットシャツは、
その当時から和田メリヤスさんが
作っていたんですか?
藤木
はい。ですから形も着丈以外は変えず、
ずっと同じ生地を使っているんです。
このあいだ、和田さんのところで、
「あと何年できるかなあ? 」なんて
話題にあがるとも聞きましたけれども、
ウエアハウスも来年で創業30年になりますし、
この先、何年作っていただけるのかは、
正直なところ、本当にわかりません。

──
そもそも、
スウェットシャツというものが
この世に登場したのは、
いつ頃だったんですか?
藤木
これは諸説あるんですけど‥‥。
スウェットシャツが生まれる前、
同じ役目のものは、セーターでした。
1920年代ごろまでは、
あらゆる競技のユニフォームが
ウールセーターで、
コットン素材は、
Tシャツなどの肌着でしかなかったんです。
その後、1924年のパリオリンピックで、
アメリカ代表の選手が
初めてオールコットン製の
スウェットシャツを着ました。
──
1924年というと、
いまから100年前。
藤木
はい。いまのナイキとか
アンダーアーマーみたいに、
当時はスポルディングという
アメリカの大企業がサプライヤーでした。
そのスポルディングが、
オールコットンのスウェットシャツを
世界で初めてつくったんです。
だからアメリカ以外の
ほかの国の選手は、みんなウールの
スウェットシャツを着ていました。
そういった大舞台で
トップアスリートが着た後って、
新製品がバーッと発売されるんですよね。
だから当時も、
まずオリンピック選手たちが着て、
そのあと1930年代にかけて、
コットン製のスウェットシャツというものが
普及していったのだと思います。

△1936年のベルリンオリンピックの資料。
史実は、ウエアハウスが所蔵する
当時の資料によって裏付けされている。 △1936年のベルリンオリンピックの資料。 史実は、ウエアハウスが所蔵する 当時の資料によって裏付けされている。

(つづきます)

WAREHOUSE スウェット
(ONETT / TESSIE)
19,250円(税込)

1930年代のヴィンテージスウェットを
忠実に復刻したウエアハウスの
定番スウェットとコラボしました。
「ONETT」はオネット市役所がモチーフ。
カレッジスウェット風に仕上げました。
「TESSIE」は「タッシー・ウォッチング隊」が
モチーフです。

素材
コットン100%

サイズ
M(42):着丈68cm 肩幅51cm 身幅59cm 袖丈62cm
XL(44):着丈70cm 肩幅53cm 身幅62cm 袖丈63cm

Model:
Leo Holderman / Nana Mchedlidze

Stylist:
Yutaka Aoki

Hair makeup:
Shoko Narita

Photographer:
Kyosuke Azuma(Styled Images)
/ Hiroyuki Oe(Product Detail)

 


 

2025-01-06-MON

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