糸井重里が監修し、企画、設定、全シナリオを手掛けた
RPG『MOTHER』シリーズ。
そのことばをすべて収録した本を
2020年12月に発売したことをきっかけに、
立ち上げたのが「ほぼ日MOTHERプロジェクト」です。
『MOTHER』にまつわるコンテンツや
アイテムをつくっている本プロジェクトのなかから、
代表的なアイテムの
つくり手のお話や現場のようすをお伝えします。

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WAREHOUSE スウェット 第2回 セットインフリーダムとフカフカの丸起毛。

──
今回作っていただいた「403」も、
モデルにしたヴィンテージの
スウェットシャツがあったんですか?
藤木
もちろんありました。
1939年頃に作られたスウェットシャツで、
オールコットン製。
ウイルソンという会社のもので、
これがそのヴィンテージの現物です。

──
袖の付け方が特徴的ですよね。
藤木
これは後にも先にも
ウイルソンしかやっていない
独特な袖の付け方なんです。
名前がなかったので、
僕らで「セットインフリーダム」と
名づけました。
「セットイン」というのは、
ボディに肩から付いている、
オーソドックスな袖の付け方のこと。
「フリーダム」というのは、
野球のアンダーシャツみたいな
袖の付け方のことです。
そして「セットインフリーダム」は、
肩からはセットインになっているんだけど、
脇がフリーダムになっているんです。

──
ふたつのいいところ取り、なんですね。
人が実際に腕を動かしたときのことが
考えられているという。
藤木
やっぱりスポーツウエアですからね。
たとえばボールを投げるときって、
こう、肩を上げるじゃないですか。
でもこれなら、
吊ったような感覚にならないんです。

──
私も今日着ていますが、
生地もフカフカで、
とてもあたたかいです。
藤木
フカフカなのは、丸起毛のおかげですね。
──
丸起毛。

△生地の裏側はこのような処理。 △生地の裏側はこのような処理。

藤木
スウェットシャツとして、
ウール製よりもコットン製が
発達した理由のひとつに、
水洗いがしやすくて乾きやすいから、
というのがありました。
やっぱり、スポーツウェアですからね。
でも保温性が高いのはどちらか、
と言ったら‥‥。
──
ウール製の方ですよね。
藤木
はい。その保温性を
カバーするために生まれたのが
丸起毛です。
いちから説明すると、
ウエアハウスのスウェットシャツの生地は、
脇に継ぎ目がありませんよね。
これは、吊り編み機を使っているからです。
△ 紡績(綿花・羊毛・麻などの繊維を紡いで糸にすること)から製織(糸を編んで織物にすること)までの様子。
藤木
こうして作られた「丸胴」と呼ばれる生地は、
その名の通り「筒状に編まれた生地」です。
その生地を、裏側から掻いて
起毛させているんです。
──
丸い生地の状態のまま?
藤木
はい。一般的なのは、
生地を一度切って平面上にしてから、
起毛を掛ける方法です。
でも、丸胴のままでも
起毛を施せる工場がまだ日本にはあって。
そこにお願いしているんです。
──
そうすることで、
ぺたんとした生地が
フカフカになって、保温性も上がる、と。
藤木
そういうことです。
僕も今日「403」を着ているんですけど、
これは7年間くらい、
かなりの頻度で着たものです。
だいぶ質感が変わっていると思いますよ。
──
(触って)本当だ、フカフカというよりは、
さらっとしていて、少し硬さがありますね。
しっかりしている、と言いますか。
藤木
これは、着込むことで裏側の丸起毛が取れて、
タオル生地のようになった状態です。
糸の脂分もだんだん抜けるから、
ドライなタッチになっていくんですよ。
こういったところも、
ヴィンテージそのままに再現できています。
──
色もだいぶ違いますね。
藤木
とくにこの色(オートミール)は
表糸と中糸、つまり表側に出ている糸が、
オーガニックコットンなんです。
だから、最初は赤みが強い。
洗っていくと、水道水に晒されて、
だんだん白くなっていくんです。

△左が半年ほど着た状態、
右(藤木さん)が7年着た状態。
同じ製品ですが、これだけ差が出ます。 △左が半年ほど着た状態、 右(藤木さん)が7年着た状態。 同じ製品ですが、これだけ差が出ます。

──
スミクロのほうは?
藤木
スミクロは「反染め」と言って、
生地が編み上がった状態で、
丸起毛を施した後に染めるんです。
これが、スタッフが
10年くらい着て
フェード(色褪せ)させたものです。

──
味わいが出ていて、かっこいいです。
脇の下のあたりの黒が、元の黒ですもんね。
藤木
はい。洗濯して天日干しをしたり、
大事に長く着てもらったりしているうちに、
こういうふうに色が抜けていきます。
なかには「色ムラがある」って
思う人もいるかもしれないですけどね。
「パティーナ」って聞いたことありませんか?
たとえば車でも、腕時計の文字盤でも、
スウェットシャツでも、
ヴィンテージの世界では
いまこういった「使い古した味わい」に
価値がある、とされているんです。
ですので、経年変化も、
ぜひ楽しんでいただきたいですね。

(つづきます)

WAREHOUSE スウェット
(ONETT / TESSIE)
19,250円(税込)

1930年代のヴィンテージスウェットを
忠実に復刻したウエアハウスの
定番スウェットとコラボしました。
「ONETT」はオネット市役所がモチーフ。
カレッジスウェット風に仕上げました。
「TESSIE」は「タッシー・ウォッチング隊」が
モチーフです。

素材
コットン100%

サイズ
M(42):着丈68cm 肩幅51cm 身幅59cm 袖丈62cm
XL(44):着丈70cm 肩幅53cm 身幅62cm 袖丈63cm

Model:
Leo Holderman / Nana Mchedlidze

Stylist:
Yutaka Aoki

Hair makeup:
Shoko Narita

Photographer:
Kyosuke Azuma(Styled Images)
/ Hiroyuki Oe(Product Detail)

 


 

(つづきます)

2025-01-07-TUE

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