ネスのソフビ(※)を作るプロジェクトが
スタートしたのは2020年1月のこと。
それから月日が経ち、2024年、
私たちが目指した「ネスのおもちゃの決定版」は、
M1号さん、チャイルド工芸さん、オビツ製作所さんの
3社の協力を得て、ついに完成しました。

その制作の過程、つまりメイキングの一部始終は、
しっかりと記録しておきたい。

そんな強い思いから、
これまでのすべての打ち合わせで
ボイスレコーダーを回していました。
そのため、手元にはたくさんの音声データが残っています。

これは、ネスのソフビの完成後に
あらためて録ったインタビュー記事ではありません。
4年半にわたる制作の記録の中から
とくに重要な箇所だけを抜き出した
制作日記のようなものです。

題して「ネスのソフビができるまで。」。
制作に携わった3社との主要なやり取りの様子を、
当時の空気感とともにお届けしていきます。

※ソフビ:PVC(ポリ塩化ビニル、通称ソフトビニール)を
金型に流し込んで成型する人形の通称。

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第2回 作りかけでも、すでにネス。(2020年2月4日 チャイルド工芸にて)

ソフビで「ネスのおもちゃの決定版」を作るため、
原型の製作を担当していただいたチャイルド工芸を
訪ねてから約1ヵ月後。
私たちは、ふたたびチャイルド工芸を訪れました。
前回に引き続き、お相手は代表取締役社長の鹿野健一さんと、
原型の製作を担当してくださった主任の勢村譲太さんです。


左:鹿野建一さん 右:勢村譲太さん 左:鹿野建一さん 右:勢村譲太さん

──
最初の打ち合わせから、1ヵ月くらいが経ちました。
鹿野
そうですね。
いま勢村が原型を持ってきますから、
ちょっとお待ちくださいね。
──
え、もう完成しているんですか?
鹿野
遠回りしても仕方ないから、
一度実際のサイズで作ってみて、
動かしてみたほうが話が早いかなと思いまして。
勢村
持ってきました。
──
わあ、すごい。

勢村
細かいディテールはまだですけど、
これがだいたいの形です。
これをベースにご意見をいただいて、
ブラッシュアップしていきましょう。
──
作りかけでも、すでにネスですね。
ここまで作ってみて、いかがでしたか?
勢村
おもしろい作業でしたよ。
本来のキャラクターのイメージを崩さないように、
どこまでレトロなムードを出すかという
せめぎ合いでした。
手足をちょっと太めにして、
物を持たせるために手も若干大きくしました。
鹿野
ボリューム感があってかわいいですよね。
でもソフビになると、
ここから約4%くらいは縮むんですよ。
それで、原型は少し大きく作っているんです。
高さで言うと、1センチくらいは小さくなって、
全体的にシュッとしますよ。
──
なるほど、そうなんですね。
もう座ることもできるんですか?
勢村
はい。ちょっと待ってくださいね。

──
あ、座れましたね!
勢村
ソフビになれば、いまよりは頭も軽くなりますし、
もっと座らせやすくなると思います。
──
すでに随分できている印象ですが、
あとやり残していることというのは?
勢村
各所のディテールアップと修正ですね。
顔も見直しますし、左右の腕のバランスもよくしたい。
あと気になっているのは‥‥
脚を格好よく開いている、というのが
ネスのイメージだったので、開いてみたんですよね。
でもこれは、もう少しズドンとさせたほうが
いいかもしれません。
──
なるほど、バットはもう持てるんですか?
勢村
はい。

──
おお、握れていますね。
勢村
まだ棒ですけどね(笑)。
あとでちゃんとバットにしますのでご安心ください。
でもいまのままだと、帽子のつばに
バットの先端が当たってしまいそうなんですよね。
腕の付け根と手首の角度も、ちょっと見直してみます。
──
ありがとうございます。
ちなみにこの原型は、
どうやって作っていったんですか?
鹿野
うちの場合は、大きなワックスのブロックから
各パーツを削り出していくんです。
勢村
ご希望だったので、
制作中の写真も細かく撮っておきましたよ。
たとえば胴体のパーツの場合ですが、
これが元のワックスのブロックで‥‥。

──
あ、ワックスに直接図面を貼って、
切ったり削ったりしていくんですね。
これって、修正したくなった場合やり直すことって‥‥。
勢村
できますよ。半田ごてやヘラを使ってペタペタと、
粘土と同じでワックスを足したり、あるいは削ったり。
でも全体的なバランスを見直すとなったら、
パーツをいちから作り直すこともあります。
──
でも、この、現在の状態の型は
なくなってしまうわけですよね。
勢村
そうですね。これを改造しますので。
──
後戻りはできない、と。‥‥むずかしいですね。
勢村
また直せばいいんですけどね(笑)。
鹿野
これ、成型するときに
リュックが邪魔かもしれないよ。
勢村
確かに、出っ張っているから
(成型時に金型から)抜きづらそうですね。
鹿野
だいぶ立体的だから、
リュックは別パーツにしようか?
──
別パーツというのは、つまりリュックの裏側に
かん着(ジョイント)をつけて、
背中にくっつけるということですよね。
鹿野
はい。別パーツにしない場合は、
いまのリュックのふくらみを薄くして、
抜きやすさを考慮したほうがよさそうです。
でも、ふっくらしていたほうがかわいいですよね?
──
そうですね。
ゲームに登場するグッズ(アイテム)が、
パンパンに詰まっているようなイメージで。

鹿野
じゃあ、頭、胴体、手脚とリュックで、
7パーツに分けましょう。
──
ありがとうございます。この段階で、
原型を一度M1号さんに監修してもらいましょうか。
勢村
わかりました。じゃあ、ちょっと直して、
お渡しできる状態にしてから発送しますね。

(つづきます)

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