ほぼ日オフィス、引っ越します!
通いなれた「青山」を離れ、
次なる新天地「神田」に大移動です。
しかも今度の新オフィス、
これまでのはたらき方を見直し、
まったく新しい発想でつくるとか。
えっ?なにそれ?どういうこと?
というわけで、秋頃までつづく
新オフィス完成までのてんやわんやを、
不定期連載でおとどけします。
担当は「ほぼ日」稲崎です。

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09 救世主、現る。

先日、お引っ越し関係でこんなことがありました。
お話の主役は、この方です。

えっと‥‥‥‥誰ですか?

そう思われるのも無理はありません。
有名人でもなければ、
ほぼ日乗組員でもないこの男。
いったい何者で、なぜここにいるのでしょうか。

話は数週間前にさかのぼります。

ある日のほぼ日オフィスでのこと。
お引っ越しプロジェクト担当の小竹が、
オフィスに貼られた図面を見ながら、
小さなため息をついていました。

「はぁぁ、どうしようかしら」

▲総務の小竹さん。ほぼ日のお引っ越し番長です。 ▲総務の小竹さん。ほぼ日のお引っ越し番長です。

あら、どうしたんですか、小竹さん。
ため息なんかついちゃって。

「いや、今度のお引っ越しって、
ビル一棟の大改造じゃないですか。
できるだけ素敵なオフィスにして、
みなさんによろこんでほしいんですけど‥‥」

うんうん‥‥けど?

「現実的な話で恐縮なんですが、
やっぱり会社のお引っ越しですから、
費用もけっこうかかるんですよね。
こうしたいなあっていう理想はあっても、
すべて実現できるわけではないというか。
なので、そのへんのところを、
ちょうどいま調整していまして‥‥」

あぁ、なるほど、そういうことでしたか。
たしかにビル一棟の工事ですからね。
まったく見当もつきませんが、
そりゃ、たくさんのお金もかかるでしょう。
ちなみに、いまいちばん悩んでるところは?

「いまの悩みといえば、
やっぱり新しくつくる家具のことですね。
いまある家具も使いますが、
新しくつくるものもけっこうあるんです。
でも、いい木材でつくろうとすると、
すぐに予算オーバーになってしまって‥‥」

と、そのとき、後方から誰かの声。

「なに、木材がほしいのかい?」

▲振り返ると、そこには声の主が。 ▲振り返ると、そこには声の主が。

彼女の名は、さくら。
商品企画チームに所属するほぼ日乗組員。
担当商品に、ほぼ日のカレンダーや
LDKウェアなどがある。

突然、声をかけてきたさくらさん。
さらにこう続けます。

「木材がほしいなら、旦那に聞いてみよっか?」

えっ、えっ、どういうこと?
さくらさんの旦那さん、まさかキコリ?

「ちがうちがう、キコリじゃない。
うちの旦那、ニッタクスっていう
木材の会社で働いてるんだよね。
もしかしたらいい木材を、
お値打ち価格で提供してくれるかもよ」

おぉーー、なんとなんと!
まさに「棚からぼたもち」とはこのこと!
というか、前から気になっていたのですが、
「棚からぼたもち」ってどういうこと?
だって、棚からぼたもちが落ちてきたら、
「やったーー、ぼたもち!」と思う前に、
「誰だ、そんな不安定なところに
ぼたもちなんか置いたやつは!」
ってなるような気がするのですが‥‥。
あぁ、すみません、関係のない話でした。
ぼたもちじゃなく、いまは木材の話でしたね。
強引にぐいっと戻します。

ありがとうございます、さくらさん。
ダメ元でかまいませんので、
旦那さんに一度聞いてみてもらえませんか。
ぼたもち‥‥じゃなく、木材のこと。
ぜひ、小竹さんの笑顔のためにも!

「オッケー、じゃあ連絡してみるね。
旦那もほぼ日といっしょに
何か仕事したいって言ってたから、
いい返事もらえると思うよ」

‥‥と、それから数週間後のこと。
オフィスにやってきたひとりの男。

▲最初に出てきた謎の男です。 ▲最初に出てきた謎の男です。

彼の名は、淡路雄大。
ニッタクスの東京営業部所属、課長補佐。
そう、本日の主役であり、
先ほど話にあったさくらさんの旦那さんである。

さくらさんから事情を聞いた淡路さんは、
そのあとすぐに会社と相談して
木材調達の話を進めてくれていたのです。
それだけでなく設計担当の
SUPPOSEさんにも連絡をとり、
「どこにどれくらい必要なのか?」
「どれくらいの厚み、強度、予算は?」
というようなやりとりを済ませたのち、
淡路さんは今回の結論を、
ぼくらのオフィスに伝えにきたのでした。
てなわけで、さっそくおうかがいします!
木材の件、どうなったんでしょうか?

「結果を先にお伝えしますと、
今回、ほぼ日さんのために、
弊社の最高クラスの木材を
特別にご用意できることになりました」

▲淡路さんの決め顔いただきました。 ▲淡路さんの決め顔いただきました。

か、かっこぃぃーーー!

なんと、突然の話にもかかわらず、
ニッタクスさんのご厚意により、
家具をつくるのに必要な量の木材を
特別にご用意していただくことになったのです。
さくらさん、ありがとう!
淡路さん、ありがとう!
ニッタクスさん、どうもありがとうございます!

今回ご提供いただく木材サンプルを、
わざわざ見せに来てくださった淡路さん。
せっかくなので、どんな木材なのか、
いろいろと教えていただきました。

「今回、ご用意できたのは、
弊社の『ホワイトバーチ』という合板ですね。
そもそも『合板』というのは、
大根のようにかつら剥きした木を
接着剤で何層も重ねて、
熱でプレスした木の板のことです。
薄い木を重ねてつくるので、
木口面はこのように縞模様になるんです」

▲ホワイトバーチとは、日本でいう「白樺」のこと。 ▲ホワイトバーチとは、日本でいう「白樺」のこと。

へーー、なるほど。
これが「合板」というものですか。
まるでウエハースのようです。

「ニッタクスのホワイトバーチは、
材料をフィンランドから輸入しています。
状態によってランクがあるのですが、
弊社は表面や木口が美しいものだけを輸入して、
意匠用の木材として販売しています。
面強度が一般合板の中でも最強クラスで、
高級感も申し分ありません」

えぇ、そんなにいい木材なんですか?!
なんだか恐縮です。
そんな素晴らしい木材を、
ほんとうにありがとうございます。
‥‥で、その木材をつかった家具は、
次のオフィスのどこに使われるんですか?

「SUPPOSEさんからは、
5階と6階の執務スペースで
使われると聞きました。
あと、糸井さんのお部屋の
ミーティングテーブルですね。
その天板に使っていただきます。

この素材、無塗装だと白っぽく見えますが、
クリア塗装すると木目がキレイに出ます。
時間が経つとすこし飴色に変わるので、
そういうのもたのしんでいただきたいですね」

淡路さんの話によると、
ニッタクス」という会社は、
1919年に北海道で
日本初の合板工場をスタートさせた
国内木材産業のパイオニア的存在。

高品質な合板・木製品の会社として知られ、
住宅や商業施設だけでなく、
鉄道車両の内装や、
音楽ホールなどの公共施設、
競艇ボートやレーシングカーにいたるまで、
さまざまなところで、
ニッタクスの製品が使われているそうです。

淡路さんがそんなニッタクスに
入社したのは4年前のこと。
もともとはフリーランスの家具職人として
活動していた時期もあったそうです。
いまは営業部に所属しているため、
直接手を動かすことはないようですが、
現場で大工さんたちと話をしていると、
職人時代を思い出して
つい手伝いたくなってしまうとか。

「ニッタクスという会社のことを、
もっとみなさんに知ってほしいんですよね」

そう話す淡路さんは、
ニッタクスが30年以上製造していた
「木箸」にその可能性を見いだします。

ニッタクスの木箸は、
「積層強化木(コムプライト)」という
アルミのように硬く、
水にも強い素材でつくられています。
学校給食・業務用のお箸として、
30年以上製造されているそうですが、
一般にはほとんど流通していませんでした。

淡路さんはこの木箸を、
デザイナーの角田陽太さんディレクションのもと、
New Chopsticks」という名前で、
一般向け商品として生まれ変わらせたのです。

▲「New Chopsticks」の公式ページより ▲「New Chopsticks」の公式ページより

かるすぎず、重すぎず、
手にぴたっとおさまるかたち。
木箸なのに先が細く、
美しいシルエットなのが特長です。
いやー、淡路さん、
これ、ほんとにいいお箸ですね。

「ありがとうございます。
すごく硬い素材でつくられているので、
すごく丈夫で、食洗機でも洗えます。
これは余談なのですが、
じつはうちの妻は20年くらい、
同じニッタクスのお箸を使っていました」

に、にじゅうねん!
えっ、20年前ってことは、
さくらさんと淡路さんが出会う前ですよね?

「そうです、そうです(笑)。
そこは、ほんとに偶然なんです。
私もニッタクスに入社するまで、
こういうお箸があるって知らなかったので。
入社したあとに妻から教えてもらって、
ものすごくびっくりしました」

へーー、そうなんですね。
じゃあ、それがきっかけでプロポーズを?

「あははははは、まさか(笑)。
でも、ちょっと運命は感じましたね。
いまは、私も妻も、あと5歳の息子も、
このニッタクスのお箸を使っています。
そうそう、この前ごはんのとき、
息子がこう言ってくれたんです。
『父ちゃんのおはし、つかいやすいね!』って」

うわーー、めっちゃいい話!
世界でいちばんうれしい感想ですね。

「もう、めちゃくちゃうれしかったです。
正直、泣きそうになりましたね(笑)」

▲5歳になる息子は、商品ページのモデルとしても父ちゃんをサポート! 写真:©Takuro Ogawa ▲5歳になる息子は、商品ページのモデルとしても父ちゃんをサポート! 写真:©Takuro Ogawa

「販売ページも自分たちの手作りなんです。
ほぼ日さんの商品の見せ方とか、文章とか、
いろいろ参考にさせていただきました。
妻からダメ出しされたりしながら(笑)。
あと、SUPPOSEの谷尻誠さんとは、
もともとお付き合いがあったので、
カタログを見てもらって、
いろいろアドバイスもいただきました。

だから今回、すごくうれしいんです。
谷尻さんとほぼ日がお引っ越しでコラボして、
そこに自分の会社の木材も使ってもらえて。
‥‥あれ、なんでこんな話してるでしたっけ(笑)」

と、まあ、そんな会話をしながら、
ぼくはニッタクスの会社の歴史や
木材のマニアックな話など、
予定の時間を大幅にオーバーしながら、
たっぷりと淡路さんに教えていただきました。

そして帰り際、何度も断ったのですが、
「ぜひ受け取ってほしい」ということで、
淡路さんはいろいろな種類の
「木材サンプル」をたくさん置いていかれました。
あのー、ぼくたちもうすぐ引っ越しなんですけど‥‥。

淡路さんが手配してくださった木材は、
現在、山形にある家具工場に送られ、
職人さんたちの手で加工されているそうです。
いったい、どんな家具になるんでしょうか。
つづきは、またどこかでお知らせしますね。

ほぼ日の本社移転まで、あと1ヶ月。
いろんな方々の力を借りながらも、
一歩ずつゴールに向かっている気がします。
次回の更新も、おたのしみに。

(次回につづきます)

2020-10-16-FRI

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