こんにちは、ほぼ日の奥野です。
以前、インタビューさせていただいた人で、
その後ぜんぜん会っていない人に、
こんな時期だけど、
むしろZOOM等なら会えると思いました。
そこで「今、考えていること」みたいな
ゆるいテーマをいちおう決めて、
どこへ行ってもいいようなおしゃべりを
毎日、誰かと、しています。
そのうち「はじめまして」の人も
混じってきたらいいなーとも思ってます。
5月いっぱいくらいまで、続けてみますね。
- 河野
- まだひとりも感染者が出てないんです、
岩手県。(4月23日時点の状況です)
- ──
- あ、そうですよね。まだ「0」ですか。
- 河野
- そう。なので、うちのまわりの連中は、
「ひとりも出してたまるか!」
みたいなところがあるんですよ(笑)。
- ──
- おお(笑)。
- 河野
- だから、夜の飲食店、ガラッガラです。
- 八木澤商店のお客さんでも、
外食関係のみなさんは厳しい状況です。
- ──
- 感染者はいないと言っても、
そうですよね、やっぱり同じですよね。
- 河野
- 通常営業を休んで、
お弁当のデリバリーをしはじめた人も
いらっしゃいますけど、
正直それでも厳しいだろうと思います。
- ──
- 八木澤商店さんは、どうですか。
- 河野
- うちも、売上げでいうと、
3月で昨対比14%くらいダウンです。
- ──
- やっぱり、影響が。
- 河野
- ありますね。
- 毎日、営業も企画の提案もできないし、
イベントも組めないし、で。
- ──
- ええ。
- 河野
- なんで、
ひたすら、社員とやりあってますよ。
- ──
- やりあってる?
- 河野
- いやあ、教育訓練というんですかね。
朝から晩まで。 - たとえば、
自社商品をより「いいもの」にする
デザインを考えてみたりとか。
- ──
- すごい。
- 河野
- いまも隣の部屋でやってるんですが、
チームにわかれて、
自社の商品やメニューを取り上げて、
「何を、誰に向けて、
どのように伝えるか」みたいな、
1日の就業時間内に
アウトプットをひとつ、仕上げたり。
- ──
- それ、学校じゃないですか。
- 河野
- そうなんです。そんなことしてます。
- いま、工場はフル稼働しているので、
工場のメンバー以外の、
店舗だったり、
営業企画の社員と一緒にやってます。
- ──
- そういう時間って、
これまでも、あったりしたんですか。
- 河野
- ないですね。
- ──
- じゃ、はじめてですか。
- 河野
- はい。こんなことを言ったら
ちょっと不謹慎かもしれないですが、
「いい時間」だなあと思って。
- ──
- わあ、そうですか。
それを聞いたら、うれしくなります。
- 河野
- 昨日はビジネスマナーを学びました。
- ──
- ああ、そういうものまで。
- 河野
- 今、ちょっと先行きが見えないんで
5月に入ってからは、
25%くらい、
工場の稼働を落とす予定なんですね。 - そこで、こんどは工場の社員も含め、
社員全員に対する教育講座を
はじめようかなと思っているんです。
- ──
- すごい。何を学ぶんですか。
- 河野
- 発酵、ですね。
- ──
- おおー、ズバリのテーマですね。
- 楽団の人たちが、
音楽の理論を学び直すみたいな。
- 河野
- いや、意外と、そうでもなくて。
- つまり、工場のメンバーも、
営業部隊も、商品開発の社員も、
自分の仕事については、
とうぜん詳しく知ってるんです。
- ──
- ええ。
- 河野
- でも、あらゆる発酵食品の中で、
自分たちの商品が
どういった位置づけにあるのか、
という見方は、
あまりできてないと思うんです。
- ──
- 発酵の世界への、俯瞰視点。
- 河野
- 俯瞰と深堀り、ですかね。
- そのあたりを
徹底的にやろうかなあと思ってます。
- ──
- なるほど。
- 河野
- いま、資料をつくってるんですけど、
かなり長い講座になると思います。
- ──
- 河野さんが教えるということですよね、
それって、つまり。
- 河野
- そうですね、はい。座学で。
- ──
- これまで労働時間の「4分の1」を
発酵の勉強に、充てていくと。
- 河野
- ええ。テストもやりますよ。
- ──
- やっぱり学校。カンニングしたりして。
- 河野
- ハハハ。そんなやつは「落第」ですね。
- ──
- 河野さんは、これまでも
「発酵」がテーマのワークショップを
やってらっしゃいましたよね。
- 河野
- はい。
- ──
- ああいうのとは、またちがうんですか。
- 河野
- そうですね、発酵ワークショップでは
「お醤油をつくってみる」だとか
「菌のお話をする」といったもので、
飲食店さんだとか、
料理を勉強したい人たちに向けていて、
まあ、内容も、
1日で終わるようなものなんですよね。
- ──
- ええ。ワークショップですものね。
- 河野
- でも、社員向けとなると、
つまりは発酵のプロが生徒になるので、
かなり深いところまで行きます。 - わたしの言っていることが、
それぞれの毎日の仕事とリンクして
「ああー、ここで、つながったのか」
みたいなことになるはずで。
- ──
- ふだんのワークショップでも、
そんなことは絶対にないと思いますが、
相手がプロだとしたら、
なおさら、
適当なごまかしなんかできないですね。
- 河野
- そうです、そうなんです。
すぐに、バレちゃいます。 - だから、もう、真剣ですよ。こっちも。
何十時間分のテキストを用意してます。
- ──
- ひゃあ、そんなにですか。醸しの先生。
- 河野
- ビシビシいきます(笑)。
- 醸す、という言葉には
「時間をかけて熟成させ、つくりだす」
という意味もあるので。
- ──
- なるほど、発酵のプロを醸すんですね。
- 今回のコロナの感染拡大って、
2月、3月と、
じわじわ深刻度が増してきましたけど、
河野さんは、いつくらいから、
こういうことやろうと考えてましたか。
- 河野
- 発酵の勉強じたいは、
いつかやりたいなあと思ってたんです。
- ──
- 今回のコロナの騒動よりも前から。
- 河野
- そうですね。
- へんな話、通常営業をしているときには、
こういう時間はとれなかったので、
こう言っちゃ何だけど、楽しみなんです。
- ──
- 見るからにワクワクしてる感じですもの。
画面越しにも、わかるほど(笑)。
- 河野
- あ、そうですか(笑)。
- もちろん社員にも学んでほしいですけど、
これは、自分にとっても、
どえらい武者修行になると思っています。
もう、何だか緊張してたりもするし‥‥。
- ──
- ご存じだと思いますが、糸井さんも、
毎週水曜日に全社員の前で話すんですね。 - そのことが、
いちばん大変な仕事なんだって、いつも。
- 河野
- わかるなあ。そうですよ、きっと。
社員の前が、いちばん緊張するんですよ。
- ──
- そういうものですか。
- 河野
- はい。責任もあるし、期待もあるしでね。
- もともと八木澤商店があったところって、
ご存じですよね。
- ──
- はい、川沿いの。
- 河野
- 今年の11月に、その跡地に
「発酵パークCAMOCY(カモシー)」
という
「発酵」をテーマにした商業施設が、
オープンするんです。
- ──
- はい、ロゴマークができたのを見ました。
- あれって元の八木澤さんのあった場所に、
できるんですか。
- 河野
- そうなんです。
うちを含む7社が集まって、つくります。 - 陸前高田を「発酵の街」として、
もっと、おもしろい場所にしていこうと。
- ──
- いいなあ。
- 河野
- でですね、そこでは世界中の発酵食品を、
販売しようと思ってるんです。 - 日本の味噌醤油はもちろんなんですけど、
チーズとかヨーグルト、
ワインや生ハム、チョコレート、
パン、クラフトビール‥‥
などなどの発酵食品を、たくさん集めて。
- ──
- わあ、おもしろそう。で、おいしそう。
- 河野
- さらに、日本の発酵食品と、
日本以外のアジア圏の発酵食品と、
ヨーロッパの発酵食品と、
それぞれどうちがうのかみたいなことも、
学べるようにしたい。
- ──
- すごーい。発酵って、今、
たくさんの人が興味を持ってますもんね。
- 河野
- そういう意味でも、
今回の「発酵の学校」で勉強しておけば、
うちの社員も、
お客さまに何か聞かれたとき、
ちゃんと答えられるようになるかなあと。
- ──
- じゃあ、コロナウィルスの自粛期間中に、
八木澤商店みなさん、
いっそう、パワーアップするわけですね。
- 河野
- そうなったらいいですね。
- だから,そのためにも、
今は思いっきり「屈伸」しとくつもりで。
- ──
- もっと高く「ジャンプ!」するために。
- 河野
- はい。
(明日はギターウルフセイジさんの登場です)
2020-05-06-WED