こんにちは、ほぼ日の奥野です。
以前、インタビューさせていただいた人で、
その後ぜんぜん会っていない人に、
こんな時期だけど、
むしろZOOM等なら会えると思いました。
そこで「今、考えていること」みたいな
ゆるいテーマをいちおう決めて、
どこへ行ってもいいようなおしゃべりを
毎日、誰かと、しています。
そのうち「はじめまして」の人も
混じってきたらいいなーとも思ってます。
5月いっぱいくらいまで、続けてみますね。

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第08回 あの「面接」から、約10年。いまは仕事がおもしろいです。[志谷啓太さん(元・悩める就活生)]

──
最後に会ったの、いつでしょうね。
志谷
もう何年も前だと思います。
──
今は、おつとめは‥‥。
志谷
ええっと、IT系の会社に勤めてます。
いちど辞めて、戻ってきたんですけど、
あしかけ7年くらいいます。
──
ああ、けっこう長いですね。
いまは、何をなさってるんですか?
お仕事の内容的には。
志谷
最初は、プログラムを書いて、
アプリをつくる人だったんですけど、
最近は、
プロジェクトを管理する人ですね。
──
えっとつまり、社会人になって
もう10年くらい経つってことかな。
志谷
そうですね、10年目くらいです。
──
いやあ、そっかあ。
就職活動で思うように内定が取れず
悩んでいた志谷くんが、
「糸井さん、僕を面接してください」
って、
ほぼ日にメールしてきたわけですが。
志谷
ええ。
──
あれって、
東日本大震災の前の年の冬だもんね。
それを考えると、
社会人歴10年には、なりますよね。
志谷
そうですね。ただ、でも、
10年もはたらいているって感じは、
あんまりしないですけど(笑)。
──
取材させていただいたときは、
はたらく直前のところで悩んでいて、
挫折も味わっていましたよね。
志谷
はい。
──
実際どうですか、社会に出てみたら。
おもしろいですか、仕事。
志谷
そうですね‥‥‥‥うん。
最近、ようやく、
はたらくっておもしろいかも‥‥と、
思えるようになって(笑)。
──
おお、いいですねえ。
おもしろいよね、はたらくって。
つらかったり、へこんだり、
めんどくさかったりもするけど。
志谷
はい(笑)。
──
具体的には、どういうところが?
志谷
自分ができることって、
同じ職種の人たちの中で比べても、
たいして抜きん出た部分も
ないんですけど、
でも、
すごくよろこんでもらえることが、
たまーに、あったりして。
──
おお、お役に立ってる感。
志谷
なんか、そういうときに、
おもしろいですし、うれしいです。
人に一目置かれるような仕事では、
ぜんぜん、ないんですけど。
──
でも、学生のころには、
自分が役に立てるかどうかなんて、
考えもしなかったと思うんです。
はたらく‥‥ということについて、
そういう観点では、
あんまり考えてなかったというか。
志谷
ああ、そうですね。
ただただ、怖かったというだけで。
──
でも、恐怖だった「はたらく」も、
毎日ヘタでもはたらいてれば、
それなりになんとかなるもんだし、
「人の役に立つ」ようなことも、
そのうちに
できるようになるなと思いながら、
自分も、
もう、20年くらいはたらいてる。
志谷
そうですね、本当に。
ただ、それで納得できるとも、
あんまり思ってなかったですけど。
──
納得?
志谷
いや、昔は‥‥学生だったころは、
やっぱり、
「ひとかどの人物にならなければ」
って、焦っていたので。
──
ああ、そうか。
志谷
自分は何者かになれるんだろうか、
そんなことばかり考えてました。
ひとかどの人物になれなかったら、
みじめな人生に終わる、
そんなことを本気で思ってんです。
──
だから「怖かった」んだね。
志谷
そうですね。
で、そんなふうに、
自我が思い切りふくらんだ状態で、
内定が取れずに悩んで、
糸井さんに「面接」してもらって。
──
だから「ふつうの子」だって言われて、
ガックリきちゃったんだね。
ふつうの子‥‥って、
ぜんぜん悪い意味じゃないんだけどね。
志谷
就職に失敗したら、
まわりの友だちにも引け目を感じて、
うまく話せなくなっちゃうかもって、
びくびくしてたんだと思う。
──
でも、そんなことはなかった?
志谷
はい。10年社会ではたらいたら、
そういうところからは、
解放されたような気がしています。
ふつうであるということは、
別に「みじめ」でも何でもないし、
ふつうの自分でも、
誰かによろこんでもらえたりする。
──
うん。
志谷
で、誰かによろこんでもらえたら、
自分自身も、
こんなにもうれしいんだなあって、
いまは、感じているので。
──
現在の自分に、
ひとまず「納得」できてることは、
とてもいいことなんじゃない?
何かをあきらめるとか、
そういうこととは、ちがう意味で。
志谷
そうですね。
──
なりたい自分、というものには、
急にはなれないけど、
徐々になっていくもんだろうし。
志谷
ぼく、何年か前に、
糸井さんに、
直接、質問する機会があって。
──
へえ。
志谷
10年前、
糸井さんに「面接」してもらったあと、
ぜんぜんダメだと思って、
すごっくガッカリしていたとき‥‥。
──
うん。
志谷
覚えているかどうかわかりませんけど、
奥野さんが、
「糸井さん、
とっても一生懸命に話してたと思うよ」
って、言ってたんです。
──
ああ、そうだっけ。
志谷
あのときのぼくは、
そういう言葉を受け入れられるような
状態じゃなくて、
なんでもっとうまく話せなかったんだ、
みたいな気持ちでいっぱいで。
──
うん。
志谷
だけど、あとから考えてみたら、
どうして糸井さんは、
一生懸命に話してくれたんだろうって
思うようになったんです。
それで、糸井さんに
「あのとき、何をどうしようとして、
一生懸命に話してくれたのか、
覚えていたら教えてください」って。
──
おお。
志谷
そしたら糸井さん、
「奥野くんが、どんなふうに感じて
一生懸命だと感じたのかは
わかんないけど、
ほかの誰かと話すときと同じように、
一生懸命だったよ」って。
──
ああ、なるほど。
志谷
「だから、志谷くんと話したときにも、
いつもどおりに、
一生懸命に話そうとしてたんだろうね」
とおっしゃってたんです。
──
やっぱり‥‥あのときの志谷くんって、
「悩める就活生」だったわけだよね。
そういう学生さんを目の前にしたとき、
「できるだけ正確に伝えられたら」
みたいな気持ちになると思うんですよ。
志谷
ええ。
──
しかも、あのときって、
「コーヒー屋をやってみればいいよ」
みたいな話で、
表面的には突き放した感じだったし、
どうしたら、
へんな伝わり方をしないように
伝えられるかなって
考えながら話すと思う。自分でも。
志谷
はい。
──
だから、一生懸命だったって印象が、
いつも以上に残ったのかも知れない。
志谷
で、いまになって思うのは、
それって本当にすごいことだぞって。
──
ああ、そうですか。
志谷
だって、いま、
ぼくが就活に悩む大学生を目の前に、
一生懸命に話せるかと言ったら、
正直あんまり自信ないかもしれない。
──
そんなこともないんじゃない?
志谷
仕事とか、はたらくって、
一生懸命にやるものだと思うんです。
責任の伴うものだし、
お金だって、関わってくることだし。
でも、ただの何にもない大学生に、
一生懸命に話すって、すごいと思う。
──
でも、そのほうが、おもしろいよね。
志谷
ああ、そうなんですよね。
──
真面目とか真剣とか一生懸命って、
「仕事」というものを
おもしろくするための、
何か重要なもののような気がする。
志谷
ええ。わかります。
──
で、
大学生と話した糸井さんにとっても、
原稿にまとめたぼくにとっても、
あの「ふしぎな面接」は、
まぎれもなく「仕事」だったと思う。
志谷
はい。
ありがたい経験をさせてもらったと、
今さらながら、思っています。
──
でも、いまのことも、志谷くんが
それこそ「一生懸命」に、
社会で10年もはたらいたからこそ、
わかるようになったことですよね。
志谷
そうですかね。
──
うん。自分で気づいたことは、
やっぱり、自分のものなんじゃない?
志谷
そうなのかな。
──
今日の話は、まるごと、
就活の学生さんに聞かせたいですね。
志谷
いやあ、それは、ちょっと‥‥
はずかしいかもしれないです(笑)。

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(つづきます)

2020-05-11-MON

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