こんにちは、ほぼ日の奥野です。
以前、インタビューさせていただいた人で、
その後ぜんぜん会っていない人に、
こんな時期だけど、
むしろZOOM等なら会えると思いました。
そこで「今、考えていること」みたいな
ゆるいテーマをいちおう決めて、
どこへ行ってもいいようなおしゃべりを
毎日、誰かと、しています。
そのうち「はじめまして」の人も
混じってきたらいいなーとも思ってます。
5月いっぱいくらいまで、続けてみますね。
- ──
- 大三郎さんは、いま、どちらですか。
- 坂本
- 月山の南側ですね。
- ──
- ずっと住まれてらっしゃるんですか。
そのあたりに。
- 坂本
- そうです、はい。
- ──
- インタビューさせていただいたのは、
2014年だったんですが、
その後、お会いする機会もなくて。
- 坂本
- ご無沙汰しています。
- ──
- 大三郎さんも作家として参加された
山形ビエンナーレもあったし、
山形在住の画家の方に取材をしたり、
山形にはわりとご縁があったので、
大三郎さんにも、
いつか会いたいなと思ってたんです。
- 坂本
- ああ、そうですか。
- ──
- こんなかたちでの再開ですが、
どうですか、いま、暮らしとしては。
- 坂本
- まあ、山のふもとに住んでますから、
感染の恐怖感は、
都市部の人ほどには、ないんですが。
- ──
- ええ。
- 坂本
- 妻の実家が旅館を経営しているので、
その経営をはじめ、
日常生活のいろいろな部分が、
ストップしてしまってる状況ですね。
- ──
- 大三郎さんの山伏としての活動には、
何か制限が、ありますか。
- 坂本
- いま、山菜採りの時期なんですよ。
- ──
- 山菜?
- 坂本
- はい。山菜を採ることは、
昔から、山伏の仕事だったんですね。 - 山へ観光や修行に来た人たちに
食べさせるための山菜を採るんです。
- ──
- へええ、明確に「山伏の仕事」だと。
- 坂本
- イメージ的に、あんまり
結びつかないかもしれないんですが、
ずーっと、おそらく
何百年も根づいている仕事なんです。
- ──
- じゃあ、いまは山に入って、
山菜を採ってらっしゃるわけですね。
- 坂本
- ええ。今年も採っています。
その意味では、変わらないんですが。
- ──
- 季節季節によって、
山伏の行動に決まりはあるんですか。
- 坂本
- そうですね、春は山菜採りをやって、
夏は山にこもっています。 - で、そのときに山の案内をしたりも。
- ──
- 一般の山岳ガイドさんじゃなく、
山伏さんに
山をご案内いただくということには、
何かちがいがあるんですか。
- 坂本
- より突っ込んだ山の文化を知りたい、
そういう人だったり、
山伏の修行を体験してみたい、とか。 - そもそもは自分も、そういう動機で。
- ──
- あ、山伏におなりになったんですか。
- もともとは、
アートギャラリーにお勤めですよね。
- 坂本
- ええ、その周辺に、漫画家の
岡崎京子さんがいらっしゃったので、
岡崎さんのアシスタントを、
やらせてもらってたりしたんですが。
- ──
- イラストレーターも、やってらして。
- 坂本
- 日本という国のものづくりが
どういうところから生まれたのかに、
興味があったんです、ずっと。 - 調べてみると、山伏って、
日本の芸術芸能のなりたちや発展に、
深い関わりのある人だった。
- ──
- それで、山伏になった‥‥んですか。
- 話は戻りますが、じゃ、本来ならば、
これから夏にかけてのシーズン、
そういう、
日本の文化の源を体験したいという
お客さんが、いらっしゃる。
- 坂本
- そうですね、いつもなら。
今年は、どうなるかわからないです。
- ──
- 山伏とお金の関係性って、
どういった感じになってるんですか。
- 坂本
- ええ、たとえば、さっきお話をした
「山菜採り」ですけど、
今年も、変わらず採りに行きますが、
食べてくれる人がいなければ、
お金には、ならないじゃないですか。
- ──
- ええ。
- 坂本
- ふきのとうの味噌の瓶詰めなんかも
自分でつくって、
道の駅で売ってたりするんですけど、
旅行者がいなければ、
それも、買ってもらえないですよね。
- ──
- はい。
- 坂本
- 山伏の生活って、経済活動とは
縁遠いと思われがちですが、
今回のコロナの場合は、
直接、収入に関わってきていますね。
- ──
- コロナウィルスは、
何百年も続く月山の山伏の生活にも、
影響を及ぼしている。
- 坂本
- そうですね‥‥あらためて、
とんでもない災厄なんだと思います。
- ──
- 山伏以外のお仕事は、
いま、どんな状況になっていますか。
- 坂本
- それが、なぜか今月に入って、
仕事の依頼が増えてきてるんですよ。
- ──
- へえ。たとえば、どういう?
- 坂本
- 連載をしてほしいだとか、
単発で、文章をお願いしますだとか。 - 先行きが不透明になってくると、
山伏に仕事が来るみたいです(笑)。
- ──
- なるほど‥‥っていうか、
このインタビューもまさにそうです。 - この企画をはじめようと思ったとき、
パッと思いついた人のなかに、
大三郎さんが、いらっしゃったので。
- 坂本
- 何ででしょうね(笑)。
- ──
- やっぱり、山伏のみなさんって、
俗世間から
離れたところで生きている人という
イメージがあるから。 - 物理的にも、精神的にも、考え方も。
- 坂本
- もちろん、そういう方もいますけど、
このあたりの山伏って、
日常生活はふつうの人が多いんです。 - もともと、
成人儀礼がもとになっている関係で。
- ──
- 成人儀礼。
- 坂本
- 15歳とか節目の年齢になったとき、
山へお参りする文化があって。 - 山伏の修行に行くのも、そのひとつ。
地元のヤンキー青年たちが、
こぞって、山へ来たりするんですよ。
- ──
- 白装束を身にまとって、ですか。
- その流れで、ふだんはふつうだけど、
「たまに山伏に変わる人」がいる。
- 坂本
- 地方のお祭りで
お神輿かつぎに参加している人って、
ヤンチャなイメージ、
けっこう、あるじゃないですか。 - あれを、このへんにスライドすると、
山伏になるような感じ。
- ──
- はああ、なるほど。
- あの、山伏とか修験道では、
今回のような大きな災禍に対しては、
どういうふうに考えますか。
- 坂本
- 昔は、疫病死病が流行ったりすると、
宗教者がお祭りをして、
悪いものを追い払おうとしてました。 - でも、これは個人的な考えですけど、
災いが起きるのは、
神の怒りに触れたからだ、みたいに、
言ったりもするじゃないですか。
- ──
- ええ。
- 坂本
- ぼくには、その考えはないんですよ。
- そこを突き詰めていくと、
たとえば、病に罹ってしまっても、
神の罰だからといって、
現代の医学に頼らず、
生命を落としてしまったり。
- ──
- なるほど。
- 坂本
- 先日も、たまたま見かけたんですが
ある学者の人が、
いま世界にふりかかっている災厄は、
神の罰だと言ってまして。
- ──
- そうなんですか。
- 坂本
- 人間が自然をないがしろにしてきた、
その報いなんだって。 - そういう側面はあるかも知れないし、
比喩的な表現なのかも知れないけど、
やっぱり、ぼくには、
その言い方は受け入れられなかった。
- ──
- そういった「言葉の使いかた」から
距離をとっているところも、
大三郎さんらしいなあと思いますね。
- 坂本
- 山伏であるからこそ、
というような部分はあると思います。
- ──
- あれ、いま、くろぐろとしたモノが。
もしかしてクマの毛皮、とか?
- 坂本
- あ、はい。そうです。
妻のおじいちゃんが獲ってきたクマ。 - 敷き物とかに使ってるんですが。
- ──
- クマの敷き物!
- いんなものが、壁にかかってますね。
大三郎さんの背後を、よく見ると。
- 坂本
- これとか、シャケの皮でつくった靴。
けっこう昔のものですけど。
- ──
- えっ、なんか、カッコいい!
どの部分が「シャケの皮」なんですか。
- 坂本
- ソールの部分ですね。
- ──
- そんなに丈夫なんですか、シャケの皮。
- 坂本
- 硬いですね、すっごく。
- これは、イタチの毛と木の皮でできた
パソコンケース。
クッション性もあって気に入ってます。
- ──
- うわあ、すごーい。へー。カッコいい。
それ、なんていう木の皮ですか?
- 坂本
- ヤマザクラです。
- 1年のうちで
3週間くらいしかとれない樹皮を、
使ってるんです。
- ──
- はぁ~、最後に、山伏らしい暮らしを、
いっぺんに拝見したような気分です。
- 坂本
- ははは、すいません(笑)。
- ──
- ものづくり、してらっしゃるんですね。
- 坂本
- ええ、してますね。
こういう生活をしてるとね、やっぱり。
(明日は葦船探検家の石川仁さんの登場です)
2020-05-16-SAT