ずるい、ひどい、よすぎる、ええーーっ! 
‥‥そんな悲鳴が聞こえてくるのは当然です。
だって、いまどき、どういうわけか、
ロサンゼルスで大谷翔平選手の試合を
観られることになったのです! ほんとごめん! 
もともとは、糸井重里がロサンゼルスに
お住まいの方とSNSを通じて知り合い、
「いらっしゃいませんか?」というお誘いに
応えて渡米することになったわけです。
で、糸井さんひとりで行くのもあれだし‥‥
という非常にぼんやりとした理由で
突然、この超幸運な任務に抜擢された
ラッキークルーが俺、ほぼ日の永田泰大です! 
ごめん、ほんとごめん! でも超うれしい! 
せめて現地で毎日書くよ、レポートを。
どうぞよろしくお願いします。ほんとごめん。

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#02

無事にロサンゼルスに

ロサンゼルスに着いた。

というようなことを書きはじめたときに、
いつもうっすら違和感を感じるのが
「ロサンゼルス」という表記である。

ロサンゼルスというのは英語で表記すると、
「Los Angeles」であり、
ふつうにそのままカタカナになおせば、
「ロス・エンゼルス」、もしくは、
「ロス・エンジェルス」である。

この「エンゼル」なのか「エンジェル」なのか
というあたりもまず引っかかるが、
そこはまあ、よろしい。
「恋のエンジェル」などは「エンジェル」でいいけど、
「金のエンゼル」と「銀のエンゼル」は
絶対に「エンゼル」でなければならない、
というような話は、まあ、よろしい。

なにがいいたいかというと、
ロサンゼルスには「エンゼル」、
つまり「天使」が含まれているわけである。

インターネットを探りゆけば、
「Los Angeles」はスペイン語で、
開拓当時に入植した人たちが
「天使たちの女王の街」と呼んだことが
由来であることからもわかるとおり、
「ロサンゼルス」という名称の主役は
あきらかに「天使」である。

にもかかわらず、
「ロサンゼルス」という街の名前からは、
まるで「天使感」を感じない。
いくら単語の冒頭が母音であるときは
直前の単語の子音とつながって
いわゆるリエゾンが起こるとはいえ、
天使の大切な冒頭の「エン」部分が
溶けて流れて「ロサン」と転じるのは、
天使目線でいうとこれ、いかがなものなのか。
むしろ天使推しの目線からいえば、
いっそ「ロス」を削除して「エンゼルス」という
都市名にしてもいいんじゃないか。

という、ここまでのくだりを読んで、
賢明な読者諸兄のみなさまがたは、
このように思っているに違いない。

ほかに書くことないんか?
‥‥ないんである。

いや、たしかにね、ぼくはね、言いましたよ。
ドジャースタジアムで大谷翔平を観るなんていう、
誰もがうらやましくてしかたがない
貴重な機会を得たからには、
毎日、かならずや、現地から、
熱いレポートをお届けしますよ、と! 

しかしね、あなたね、
考えてもみてくださいよ。

着いたその日はやれやれ着いたということで
ホテルにチェックインしてしばしくつろぐ、
くらいのことしかないでしょうが。
写真撮ったところでごくごくありふれた
ロサンゼルスの街が写るばかりで、
それをそのまま「着きました。ホテルです」とか書いて、
あなたは満足できますか? 溜飲が下がりますか? 

そりゃあね、空港に着いたらね、たまたまね、
眼の前を遠征から帰ってきたばかりの
ドジャース御一行が歩いてて、
あわててぼくも追いかけて、
「遠くからだったけど大谷見えましたよ、
やっぱ大きかったですよ!
ニューバランスの靴履いてましたよ!」
みたいなことが書けるんだったらそうしますよ。
でもあなた、そんなことがあると思いますか?
(『ホーム・アローン』のマコーレー・カルキン風に)
── I don’t think so.

そういうわけで、胸を張っていいますが、
本日、とくに大きなトピックはございません。
糸井と永田、財布をすられたとか、
オレンジジュースを注文したら
カリカリベーコンサラダが出てきたとか
そういうおかしなこともとくになく、
天使の街での初日をふつうに過ごしました。

あ、でも、ちゃんと街に出かけてね、
ほぼ日手帳を仕入れている、
「Paper Plant Co」という
ちいさなかわいい文房具屋さんに行ってきましたよ。

ここのお店のオーナーは、
昔、テレビの情報番組などによく出ていた、
こずえ鈴さん。
いまはアメリカに移住し、名前もあらためて、
ショップ経営などをされているようです。

我々が訪れているときに元こずえ鈴さんが
たまたまお店にいらっしゃった、ということもなく、
きちんとディスプレイされたほぼ日手帳を眺めて、
すごいねぇ、こんなところにきちんと届いてるねぇ、
などと糸井と言いながらお店を出ました。
がんばれ、ほぼ日手帳。

あ、そうそう、今回の旅の
通訳と案内を担当してくれているのは、
元ほぼ日の乗組員、リンジーです。
リンジー、いつもありがとうー。

それにしてもアメリカ、
来たのがひさしぶりすぎて、
いまが何時なのか、
これが時差ボケなのかもよくわからない。
ええと、いつ寝ればいいんだろう。
あっ、つまりこれが時差ボケなのか。

それでは、ともかく、また明日。

(つづきます)

2024-09-26-THU

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