2024年、ほぼ日の「老いと死」特集
満を持してスタートしました。
そのかたすみで、
ひっそりと生まれた企画がひとつ。
「正直、老いや死のことを、
まだあまりイメージできない」という
2、30代の乗組員が、ざっくばらんに話し合う
「老いと死の歌座談会」です。
おそらく私たちの手に負えるテーマではないけれど、
いま考えていることを、気張らずに話してみます。

‥‥タイトルの「歌う」が気になっている方も
いらっしゃるかもしれません。
よくぞ気づいてくださりました。
そうなんです、座談会の最後は、
毎回のおしゃべりから誕生した歌を
みんなで歌います。
どんな歌が生まれるのか、少しだけ、ご期待ください。
担当は、ほぼ日の20代、松本です。

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第2回〈その3〉孤独になるのは怖い?

(途中から参加予定だった、
棚橋さんが来てくれました)
松本
棚橋さん、いきなりすみませんが、
お名前と年齢をお願いします。
千野
事情聴取だ。
棚橋
名前は棚橋絵美里です。年齢、28です。

松本
ありがとうございます。
渡邉
いま、死後の世界について話してるんです。
棚橋
なるほど。
松本
「お墓の大きさによって、
死後の世界での住める家のサイズが
違うんじゃないか」という話をしてました。
わたこさん(渡邉)は、
お墓は死後の世界の人と話すときの
受話器みたいなイメージで。
棚橋
はあ、受話器。ほう。
松本
お墓に向かって「明日勝たせてください」
とか言うと、先祖が「わかった。叶えてやろう」
と来てくれる、みたいな感じ‥‥
だと言ってます、わたこさんは。
全員
(笑)
松本
棚橋さんは、事前にお聞きしたところによると、
死のことはあまり考えない派らしいですね。
棚橋
そうですね。
渡邉
死んだら生まれ変わる派ですか。
棚橋
ああ、ドラマの『ブラッシュアップライフ』を見て、
自分の前世は何だったんだろう、
後世は何なんだみたいなことは考えました。
「アリクイにはなりたくないな」とか(笑)。
松本
死に対してフラットなんですね。
ちなみに、みなさん、老いについてはどうですか。
千野
老いかぁ‥‥。
そういえば先日、地元に帰ったときに、
友だちと待ち合わせをして。
場所がちょうど小学生の通学路だったんです。
松本
はい。
千野
集団下校の列が通りかかって、
先頭の子が僕を見て
「あの人、先生が言ってた不審者じゃない?」って。
松本
うわあ、 傷つく。
千野
どんどん列の後ろのほうに伝わっていって、
僕の前を通った小学生たちが
「あの人、そうだよね。
こういうときは警察に電話するんだっけ?」
みたいな話を、次々と‥‥(笑)。
待ち合わせをしていた友だちが来てくれたので、
誤解は解けたんですけど。

渡邉
通報はまぬがれたんだ。よかったね。
千野
自分が子どもだったころは、
通学路に見慣れない大人がいると「あやしいな」と
思っていたんですが、
いまはもう自分があやしい側なんだ‥‥と思って、
ショックでした(笑)。
これが、僕の
「年取ったなぁ」というエピソードです。
渡邉
悲しいエピソードだ。
松本
アイドルなどを見ても、同じようなこと思いません? 
「このアイドル、年下なんだ」って。
渡邉
あ、わかる。
新しくデビューする人たちが、
全員自分より年下ということが多くなりますよね。
昔は、アイドルといえば
「憧れのお兄さん、お姉さん」だったのに、
いまは子どもを見るような目線で
「がんばって」と応援してしまう。
松本
そうなんです。プリキュアとかも。
菅野
昔は、プリキュアを年上として見てたんだ。
松本
はい。プリキュアを見て
「中学生くらいになれば、ああなれるんだな」
と思ってました。
渡邉
たしかに、将来の夢がプリキュアって言ってる子、
いましたね。
私は、いま夢を訊かれたら
「プリキュア」とは言えないな‥‥。これが老いか。
あと、最近
「平成レトロ」みたいなものも流行ってますよね。
そういうものを見て
「懐かしいー」と思うとき、
ちょっと老いを感じる。

あるね。
松本
老いというより
「ああ、若くないんだ」という気持ちかも。
棚橋
たしかに。
渡邉
はたべーは、
子どものころから大人びていそうなイメージだけど、
プリキュアとか見てた? 
見てたよ。
でも、プリキュア見たあとに、ニュース番組見てた。
全員
(笑)

チャンネルを替えて。
意味はわかってなかったけど、株価とか見てました。
渡邉
そうなんだ。大人びてるね。
松本
みなさん、けっこう達観しているんですね。
老いや死のこと、そんなに怖くないですか? 
渡邉
私は、孤独になるのは怖いなぁ。
松本
そういえばこのあいだ、私も
「親や友だちがどんどんいなくなって、
最終的にほんとに孤独になったらどうしよう」
と思って、すごく落ち込んだんです。
菅野
そうなんだ。急に? 
松本
はい。でも、そのとき「最後にこれさえあれば幸せ」
というものはあるかな、と考えたんです。
そうしたら、私は本とホットケーキが好きなので、
最低限そのふたつだけは
自分で守れるように生きていこうと
決めることができて、
ちょっとラクになりました。
棚橋
へえー。
松本
だから、ホットケーキほかほかで死ぬつもりです。
全員
(笑)
菅野
まっきーのSDカードにはその遺言が入ってるんだ。
松本
はい(笑)。
菅野
はたべーはどう思う? 
私は、死は怖いですが‥‥
「死ぬとき孤独だったらどうしよう」
ということは、そんなに思わないです。
渡邉
思わないんだ。
地元を出て東京に来てから
「入れるコミュニティが少ないな」
という居心地の悪さを感じることが、
たまにあったんです。
でも、地元に帰ったら好きな街がある。
そのほかにも、大学時代に住んでいたところや、
旅行先で出会った場所のような拠点を
いくつか持っていたら、
「ここでダメになっても、
別の場所に移動すればいいか」
と思えるようになりました。
だから、いま、ここで孤独だとしても、
このままずっと孤独かもしれないとは、
あまり考えないです。
松本
なるほど。
最後の瞬間にひとりだったとしても、
各地に自分のことを知っている人や、
思い出の街があったら、
寂しくないということですね。
どちらかと言うと、死んだあとに忘れられるのが
寂しいかもしれません。
あの世から地上を見てみたときに、自分のことを
「あの人誰だったっけ、
名前が思い出せないんだよね」
と話されていたりしたら‥‥
松本
悲しい。
ショック。
松本
「死んだら忘れられるかも」と考えたら
ガーンと感じるということは、
お墓って、忘れられないためのものでも
あるのかもしれないですね。
千野
あーー。
松本
でも、私自身は逆に、
あんまり残り続けるのも恥ずかしいかも。
菅野さんはどうですか。
菅野
私の世代は、たぶんね、
「早く忘れてほしい」と思っている人が多いと思う。
そうなんですか、へえー。
松本
どうしてですか。
菅野
うーん、はっきり説明はできないけど‥‥
あとくされがないことが好きなのかな。

渡邉
私も、わりと忘れられてもいいかも。
松本
え、わたこさんも。
渡邉
生まれ変わって、
またこの世に飛び出す予定だから(笑)。
松本
そこまでプランが決まっているんですか。
渡邉
うん、また爆誕するので。
「待ってろよ!」ぐらいの気持ちでいます。
だから、忘れられるのは
そんなに気にならないですね。

(第2回その4に続きます)

2024-09-12-THU

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