2024年、ほぼ日の「老いと死」特集が
満を持してスタートしました。
そのかたすみで、
ひっそりと生まれた企画がひとつ。
「正直、老いや死のことを、
まだあまりイメージできない」という
2、30代の乗組員が、ざっくばらんに話し合う
「老いと死の歌座談会」です。
おそらく私たちの手に負えるテーマではないけれど、
いま考えていることを、気張らずに話してみます。
‥‥タイトルの「歌う」が気になっている方も
いらっしゃるかもしれません。
よくぞ気づいてくださりました。
そうなんです、座談会の最後は、
毎回のおしゃべりから誕生した歌を
みんなで歌います。
どんな歌が生まれるのか、少しだけ、ご期待ください。
担当は、ほぼ日の20代、松本です。
- 棚橋
- 仏教では、亡くなった人につける、
戒名というものがありますよね。
- 松本
- はい。
- 棚橋
- 戒名は、故人の名前から
1字を入れることが多いそうなのですが、
母が「私は桑田佳祐さんが大好きだから、
私の戒名には絶対に『佳』の字を入れたい」
と言っていて。
- 全員
- へえーー。
- 棚橋
- そう言われたとき、自分だったら何の字を入れよう、
と考えました。
- 菅野
- 戒名って、
お金によってつけられる位が変わったりするらしいよ。
- 棚橋
- そうなんですか。
- 菅野
- うん。‥‥そういうことを考えていくと、
はたべーの言っていた
「死後の居住環境は生前の行動に左右される」
という説にも、なんとなく説得力が出てくるね(笑)。
- 渡邉
- ほんとに、上もそんなに世知辛い世界なのかなぁ。
- 松本
- 私たちが生きている世界って、
「いつか死ぬ」ことと「お金がなくなる」ことが
怖いから、たいへんなんだと思います。
時間やお金や土地が限られているから、
奪い合いが起こったり。
だから、あの世ではそれらの限界がないとしたら、
階級などを争う必要もないかもしれないですね。
- 渡邉
- たしかに、共同生活がうまくできたらいいね。
食べものはどうなるんだろう?
- 千野
- そもそも、おなかすくのかな。
- 渡邉
- そうか。おなかもすかないのか。
- 松本
- ずっと生き続ける、意識が残り続けるとしたら、
それはそれで怖いですよね。
やっぱり、終わりはあったほうがいいかも。
- 渡邉
- そうだね。
- 菅野
- でも、わたこちゃんは、
来世で爆誕する予定なんだよね。
- 渡邉
- 爆誕はします(笑)。
この「渡邉直子」としての人生はいったん終わりで、
次の私が爆誕します。
- 菅野
- 次に爆誕するときは、
渡邉直子だったことは覚えてないの?
- 渡邉
- 覚えてないです。
ゼロからやり直します。
- 松本
- ちなみに、みなさん寿命のことは考えますか。
- 千野
- ちょうどいい寿命って、ピンとこないなぁ。
- 棚橋
- うん、わからないね。
- 渡邉
- 「100歳生きたい」という人もいますよね。
- 菅野
- 100年と聞くと「まだまだ先が長いなー」
という感じ?
- 松本
- そうですね。
10年後だったら想像がつきますけど、
40、50歳くらいの自分が想像できなくて。
- 渡邉
- 想像つかないよね。
- 松本
- わたこさんは、来世のほうが想像つくんですか。
- 渡邉
- あはは、そうかも。
- 千野
- もしかしたら、僕たちが貯金しているのも、
なんとなくまだ何十年かは生きると
思ってるからじゃないかな?
- 松本
- うわ、そうか。
‥‥貯金と聞いて思い出したのですが、
最近考えていることがあって。
私、いままで、やらなきゃいけないことを
全部終わらせてからでないと、
遊べない性格だったんです。
- 畑
- へえー。
- 松本
- でも、人生レベルで考えたとき、
これからもそのように生きていたら、
たぶんやりたいことをやる前に
死んじゃうなと思ったんです。
やらなきゃいけないことをやるだけで
終わってしまう、というか。
- 渡邉
- ああー。
- 松本
- 「若いうちにがんばって、老後豪遊するぞ」
と計画していたとしても、
豪遊する前に死んじゃうかもしれないなと。
- 菅野
- え、まっきー、老後豪遊するぞって思ってたんだ。
- 全員
- (笑)
- 松本
- 人生、いろいろやらなきゃいけないことが
あるじゃないですか。
それらにひとつずつ
「終わった、終わった」とチェックを入れていって、
老後に「ああ、もうやることない。遊ぶぞー」
となる予定だったんです。
- 菅野
- そうなんだ。
あのね、いますぐ遊んだ方がいいよ。
- 松本
- そうですか(笑)。
「やらなきゃいけないことがある」と思うと、
遊ぼうとしても不安になってしまうんですけど‥‥。
- 千野
- いましかできないことがある、
という考え方もあるよ。
- 松本
- あ! たしかに。
- 千野
- それを「不安」で通り過ぎちゃうのは、
なんか、悲しい気がする。
体力が必要なこととか、爆食いとかね。
- 渡邉
- 爆食いね。
- 千野
- 僕はすでに、
どんどん食べられなくなってる気がします。
- 渡邉
- わかる。私も、
ケーキの食べ放題は苦しくなってきた。
これから、いまよりもっと
食べられなくなっちゃうかもしれないから、
食べ放題は「いま行っておかないと」
と思ったよ。
- 松本
- うーーん、それで言うと‥‥
- 渡邉
- まっきーが、また苦しんでる。
- 松本
- 「いま好き放題食べていたら、
のちのち体を壊して、
そのとき好きなものを食べられないかも」
と思ってしまって。
- 渡邉
- そのときはそのときよ。
- 全員
- (笑)
- 渡邉
- たぶん、ほんとうに体調が悪くなる前に
「やばい」と気づくと思う。
- 松本
- ああ、「やば」となったら止まればいいんですね。
- 渡邉
- うん。そのブレーキをうまく調整するよう、
気をつければいいんじゃないかな。
- 畑
- きょうものすごく食べたからって、
数年後に具合悪くなるわけではないからね。
きっと。
- 渡邉
- 毎日ケーキ5個を食べるのは
体によくないだろうけど、1日ぐらいならね。
- 菅野
- ご年配の人には、
「もっと早くいろいろやっておけばよかった」と
おっしゃる方が多いんだって。
だから、
やりたいことは早めにやっていいんだと思うよ。
やりたいことって、
そのときどきで変わっていくし。
- 松本
- たしかに。
- 菅野
- いま「いつかこれをやりたい」と思っていることは、
2年後にはきっと、
そんなにやりたくなくなっているから(笑)。
やりたいときにやったほうが、いい味を味わえる。
- 松本
- ほんとですね。
学生のときは、
期限や締切があるものが多いですよね。
でも、これからは結婚など
「みんなで守る締切は決まっていないけど、
『やっときなさい』と言われているような
気がするもの」に向き合わないといけないのかなと
思っていました。
- 渡邉
- ああ、結婚か。
- 菅野
- そういうことは「やることリスト」に
入れなくて大丈夫だよ。
- 松本
- そうか、そうですね。
学生のときとは考え方も変えたほうが、
きっといいんですね。
- 菅野
- それにしても、みんなが考えることのメインは、
老いや死より「いまやらないといけないこと」や
「成長したいこと」なんだ。
- 渡邉
- そうなのかもしれないです。
- 畑
- 「自分の葬式をどういう会にするか」
ということは考えます。
- 渡邉
- あ、わかるわかる。
- 菅野
- おおー、そうなんだ!
- 渡邉
- 音楽をガンガンかけたい。
みんなにおいしいごはんとか食べてほしい、
私の遺影の前で。
- 松本
- 「私のお墓の前で泣かないで」ではなくて。
- 渡邉
- うん、せっかくだから、
たのしんでいってほしい。 - 今回、できあがった歌がこちら。
- ♫気になっているのは
墓石で違う上の家
墓で通信 電話で呼ばれる
老いたら不審者
(2曲目はおしまいです。お読みいただき、ありがとうございました! 来月、3曲目をお届けします。)
2024-09-13-FRI