こんにちは、ほぼ日のきょんです。
私は「生活のたのしみ展」の企画を担当しています。

「生活のたのしみ展」は、
新型コロナウイルス感染拡大の状況を勘案して、
しばらく開催ができていません。
しかし、この間にも
「たのしみ展にぜひ出展いただきたい」と思う
素敵なブランドや、作家さんなど、
「おNEWなもの」との出会いがありました。

その方たちを、早くみなさんにご紹介したい!
そして、魅力的な「おNEWなもの」にさらに出会いたい!
「おNEWなものさがし」は、
そんな思いからスタートしました。

今回ご紹介するブランドは、
世界各地の職人と、手仕事の商品を制作している
「mills」さんです。

>millsさんについて

mills

「mills」は、世界各地に点在する工房や
職人とのものづくりを通して、
伝統と技法を繫いでいきたいと考えています。

職人による手仕事を大切に、
少量機械生産による工房と積極的に協業し、
消えつつある職人や技術、その土地に暮らす人々や風土、
情景などをお伝えしたいという理念のもと活動しています。

商品を取り巻く景色を想像してみてください。
いつもと違う日常が見えてくるかもしれません。

millsウェブサイト

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第3回 インドでのショール制作について、 お話をうかがいます。

世界各地の職人と、手仕事の商品を制作している
「mills」さん。
今回ほぼ日で販売する
シャープな印象のかっこいいショールは、
主にインドで制作されているとのこと。

「どうして遠いインドの地で
ショールを作っているんだろう‥‥」
いよいよその疑問について、
デザイナーの高木さん伺うことができました。

ほぼ日
今回ほぼ日で販売させていただくショールは、
どれも制作過程で
インドが大きく関わっているショールです。
なぜ、ショールづくりの地に
インドを選ばれたのでしょうか?
高木
テキスタイルの歴史の中で、
インドはとても重要な場所なんです。
現在、大量生産に用いられているプリント技術は、
インドで誕生した「ブロックプリント」という技法が
おおもとになっています。
ほぼ日
「ブロックプリント」。
高木
模様を手彫りした木のブロックで、
ハンコのように布地に模様をつける技法のことを
「ブロックプリント」といいます。
そしてインドでは、今もこの技術が受け継がれています。
日本では、伝統の技術を受け継いでいくうちに、
つくられる物の値段がどんどん高くなってしまったり、
受け継ぐ人がいなくて、
なくなってしまう技術も多くありますよね。
でもインドでは、「ブロックプリント」が誕生してから、
長い歴史を経て、今も同じ技術が残っている。
これは、本当にすごいことだなと思って、
この技術を使ってものづくりがしたいと思ったんです。

ほぼ日
何世紀も前と同じ技術をつかって、
いまも新しいものが生まれている‥‥
なんだかロマンも感じますね。
そして、インドにはそれだけ歴史のある工房が
たくさん残っているんですね。
高木
はい。
私が制作をお願いしている工房は、
ジャイプールという都市から
1時間ほどの村の中にあります。
インドでブロックプリントが盛んなところは、
ジャイプールを拠点として2箇所あって、
1つがサンガネール、
もう1つは、バグルーという町です。
サンガネールは、
王族のための「ものづくり」をしていた町です。
染めものには、繊細な花模様を描いたり、
金のふちどりを施したりと、
完成品は華やかな印象になります。
また、より鮮やかな色に染めるために、
現代では化学染料を使うのが主流です。
一方のバグルーは、もともと庶民のための町でした。
身の回りにあるものを使って染めていたので、
草木などを用いた植物染めが基本です。
決して派手ではありませんが、
大地を感じる素朴な印象のものが多いんですよ。

ほぼ日
地域によって、
同じ染め物でも印象が大きく異なるんですね。
高木
はい。
私は植物染めを使って商品をつくりたかったこともあり、
バグルーの町で工房を探しました。
ただ‥‥なかなかお願いできる工房が見つからなくて、
苦労したんです。
生産方法が近代化されすぎて、
人と人とのふれあいが希薄だったり。
数量の話し合いがうまくまとまらなかったり。
セクハラがひどい工場もあって、ショックでしたね。
ほぼ日
そんな‥‥!
高木
最終的には知り合いの方に、
「あそこは良い工房だよ」と紹介してもらったところが、
大当たりだったんです。
ほぼ日
わあ、よかったです。
高木
工房さがしが難航して時間がかかってしまったぶん、
人との出会いが増えたので、
そのご縁を繋いでもらいながら
ようやく出会えた、って感じです。

ほぼ日
インドで繋がったご縁ですね。
高木
そうなんです。
インドでものづくりをしている人と会うと、
「インドって出会いのある国だよね」って、よく話します。
例えば、私がおしゃれな洋服を買った次の日に、
偶然その洋服のデザイナーに出会って、仲良くなれたり。
それ以外のシーンでも、
私はインドでの人の出会いにとても恵まれているなあ、と
思うことが度々あります。
そして、それは私だけでなく、
私のまわりでインドにいた経験がある人は、
同じように感じてることが多いようで。
ほぼ日
インドには人と人を結びつける
パワーみたいなものがあるんでしょうか。
そこに高木さんの人柄が加わって、
素敵な出会いを引き寄せたんですね。
見つかった工房ではどんな出会いがありましたか?
高木
工房にいる職人さんは全部で6人くらいで、
そのうち2人の職人さんに
「mills」のショールをつくってもらっています。
私がプリントをお願いしている模様は、
単純なように見えて、実は難易度が高いのですが、
いつもきれいにプリントしてくださいます。

ほぼ日
ブロックプリントが特に上手なお2人なんですね。
高木
そうなんです。
そのうち1人は、職人としての仕事のほかに、
小学校の先生もしているんです。
もともと、その方のお母さんが工房で働いていて、
小さな頃から工房に慣れ親しんでいたので、
時間ができるとブロックプリントの仕事を
手伝ってくれるそうです。
そして、二足のわらじにも関わらず、
実は彼が工房の中でいちばんブロックプリントが
上手という(笑)。
小学校の先生だからということもあるのでしょうか、
とても忍耐強くて、丁寧な仕事をしてくださるんですよ。
工房のオーナーさんがこっそりと、
「彼がいちばんいいよ」って教えてくれました。
ほぼ日
高木さんは職人の方と直接お会いして、
そういったお人柄も把握されながら
制作を進めていらっしゃるんですね。
高木
はい、新型コロナウイルスのことがあるまでは、
1年のうちに1ヶ月間ほどインドに行って、
職人さんに会うようにしていました。
新しい柄をつくるときは、
実際にプリントしてもらうと
思った通りにいかないこともあるので、
途中でやっぱりこうしようとか、
その場で相談できたほうがいいんです。
あと、その場に私が行かないと
作業を進めてくれないことも多くて‥‥。
「この人はどうやら本気らしい」と
わかっていただくためにも足を運んでいます。
実際は、「どう? どう?」って言いながら、
隣でチャイとか飲んでるだけなんですけど(笑)。
ほぼ日
会って、お話しできることが大事なんですね。
高木
はい、職人さんによって得意不得意があったり、
個性があるので、会って初めてわかることもあります。
わざと斜めに柄を配置したデザインなんかだと、
プリントする人によっては
柄が歪んでしまったりするんですが、
先ほどの小学校の先生でもある方は、
ぴしっと線をひいて下書きしたあと、
「こことここを繋げると、こうなって‥‥」と、
自分の頭で考えながらやってくださる。

ほぼ日
学校の難しい課題を解くような感覚で、
やりがいがあって熱中できるのかもしれませんね。
高木
そうかもしれないです(笑)。
すごく性格がでます。
お願いしているもう1人の職人さんは
とても寡黙な方なんですが、
ある柄をプリントするときに、
「刷毛を使ってやってみようよ」と提案したら、
ふだん笑わない顔をニヤッとさせながら、
とても楽しそうにプリントしてくださって。
それを見たときに
「あ、打ち解けてきたな」って、
嬉しくなりました(笑)。
ほぼ日
そういった背景をうかがうと、
インドでつくられたショールが
ぐっと身近なものに感じられますね。
小学校の先生がつくってるのか‥‥。
ここはハケを使って楽しくつくったのかな‥‥とか、
いろいろ想像してしまいます。
高木
そうですね、ショールを見ているだけで、
職人さんが見えてきて面白いです。
ちょっとインクが跳ねているところをみつけると、
このときはすごくノリノリで作業していたんだな、
元気だなあとか。
ほぼ日
ノリノリ(笑)。

ほぼ日
今回、ほぼ日ストアでは、
ブロックプリントのショールだけでなく、
藍染めのショールも販売させていただきます。
高木
はい。
藍染めのショールは、インドで手織りした布を、
奄美大島の工房で染めてもらってます。
ほぼ日
布を染める場所に、
なぜ奄美大島を選ばれたのかも気になります。
高木
これも人との繋がりで、
ご紹介いただいたのが始まりですね。
「奄美大島で泥染めも、
藍染めもやっている工房があるらしいよ」と。
奄美大島は、泥染めという染色方法が有名ですが、
泥染めを手掛けながら、
藍染めも同じ工房で手がけているところは
珍しいんです。
紹介いただいた工房は、
もともとは泥染めで大島紬を染めていましたが、
藍染めにも挑戦されるようになりました。
私は、藍染めと泥染めを両方組み合わせて
インドの布を染めたら、
面白いものができそうだなと思い、
その工房に行ってみました。

ほぼ日
「mills」さんの藍染めのショールに
色の深みがあるのは、
藍染めと泥染め、2種類の染めによるものなんですね。
高木
そうなんです。
また、染めを重ねる回数に応じて
布地の表情がカラーシェードのように
段々と変わっていくので、
それぞれの商品にshade1、shade2‥‥と名付けました。
ほぼ日
ブロックプリントのショールも、
藍染めのショールも、
millsさんのショールには
草木や泥の、自然の力を感じるような風合いがあって、
それが魅力だとも思います。
高木
私は、商品から職人さんのことだけでなく、
村の景色や情景が想像できるようなものを、
これからもつくっていきたいなと思っています。
このショールがうまれた場所には
どんな植物が生えているんだろうとか、
町にはラクダもいるかな‥‥なんて、
空想でもいいから、景色をふくめて
商品を感じて見てくれたら嬉しいです。
ほぼ日
素敵ですね、
想像を膨らませて、旅をする気分を楽しみたいです。
高木
私自身が妄想家なこともあるので(笑)。
ぜひ想像してみてください。
そして、世界各地にこんなに素敵な工房があって、
素晴らしい職人さんがいることを
知っていただきたいです。
そのためにも、私はこれからも
いろんな手仕事の職人に会いに行こうと思います。
ほぼ日
ハンガリーで高木さんが出会った職人さんや、
インドで伝統をつなぎ続ける職人さんなど、
手仕事で魅力的なものをつくる方が、
まだまだ世界中にたくさんいらっしゃるんですね。
これから高木さんが、どんな職人さんと出会って、
どんなものが生まれるのか、
私もとても楽しみにしています!
本日はありがとうございました。
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「mills」さんのショールの販売は、
2021年4月27日AM11時からスタートします。
商品のラインナップは、ぜひこちらからご覧ください。
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Photos
Yusuke Shirai

(「おまけ編」では、millsの高木さんと
西葛西で 「おNEWなものさがし」をします。)

2021-04-25-SUN

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