イラストレーターの福田利之さんといっしょに、
和歌山「アドベンチャーワールド」へ行ってきました!
なぜなら福田さんが、このテーマパークの全動物、
122種類のイラストを描きおろしたからです。
この偉業を記念して、渋谷PARCOの「ほぼ日曜日」では
「1/1動物園」という展覧会をひらきます。
くわしくはこちらをご覧ください。
でも、展覧会をひらくだけでは、
称えるきもちにまだ足りない。
「アドベンチャーワールド」へ行ってきました。
福田さんが描いた動物たちに会いたくて!
動物たちに
「この人が福田さんですよー」と伝えたくて!
‥‥伝わったかどうかは微妙でしたが、
「アドベンチャーワールド」は、
わくわくがとまらない場所でした。
ほんとうに、すばらしかった。
ジャイアントパンダが7頭もいるんですよ?
って、関西の方には常識のようで。
主に、この場所を未体験のあなたにお届けします。
「アドベンチャーワールド」、行ったほうがいいです。
レポートに同行したのは、
福田さんと18年来のお友だち、ほぼ日の山下です。
アドベンチャーワールドに小雨が降ってきました。
傘をさすほどではないですが、
もしかしたら本降りになるかもしれません。
福田さんが歩を早めています。
なぜ、足早なのか。
それは、「エンジョイワールド」で遊ぶために。
「エンジョイワールド」とは、
アドベンチャーワールドの、いわば遊園地部分。
ジェットコースターや
メリーゴーランドがあるゾーンです。
- ───
- 雨、そんなでもないですね。
- 福田
- でも急ぎましょう。
ここは遊園地でもあるので。
そこも紹介したいです。
- ───
- はい。
おすすめの乗り物とかあるんですか?
- 福田
- (ピタッと立ち止まる)おすすめ‥‥。
- ───
- びっくりしたぁ。
急に立ち止まって。
- 福田
- (クルッと振り向く)
それは、パンダフルコースターです。
- ───
- パンダフルコースター。
- 福田
- ぼくも乗ったことないんですが、
ぜひ山下さんと乗りたいと思って。
- ───
- パンダの、ジェットコースター?
- 福田
- かわいいんです。
パンダ型のミニコースターなんです。
- ───
- それは、よさそうですねぇ。
- 福田
- でしょお?
乗ると決めたら急ぎましょう!
- ───
- はい!
- (ふたり、小走りでパンダフルコースター乗り場に到着)
- 福田
- ‥‥‥‥‥‥。
- ───
- ‥‥‥‥‥‥。
- 福田
- ぼくら、こういうことが多いですよね。
- ───
- そうですね。
- 福田
- 身長だって大丈夫なのに‥‥。
- ───
- パンダの車体が、濡れないように
シートをかけられています。
- 福田
- ‥‥ざ、残念。
- ───
- 仕方ないですよ。
子どもたちも乗るコースターですから、
小雨でもお休みになるんですね。
- 福田
- ふたりでパンダのやつに乗ったら、
おもしろくてたのしかったのに‥‥。
- ───
- もう十分たのしいですよ(笑)。
それにほら、
こういう乗り物はふたりで乗ったら
写真が撮れません、危ないから。
- 福田
- そうか、そうですね。
- ───
- このくらいの雨なら
お休みしていない乗り物もあります。
どうします? どれかに乗ります?
- 福田
- いっしょに乗れないのはねぇ‥‥。
- ───
- ‥‥‥あ。
- 福田
- え? なんかええの見つけました?
- ───
- はい。
ふたりで乗れて、雨も大丈夫なの。
- 福田
- どこに?
- ───
- あそこに。
アドベンチャーワールドの観覧車、
「オーシャンビューホイール」です。
雨に濡れません。
いっしょに乗りながら写真が撮れます。
ふたりは、一直線に、
「オーシャンビューホイール」へ向かいます。
向かいながら、
山下がなにかを思いついたようです。
- ───
- (立ち止まる)
‥‥あれに乗るということは。
- 福田
- (立ち止まる)はい?
- ───
- 一対一で、しっかり向かい合いますね。
- 福田
- ですね。
- ───
- インタビューがしたいです。
- 福田
- なんですか急に(笑)。
- ───
- あ、で、いいこと思いついた。
観覧車って時計みたいじゃないですか。
- 福田
- え、ああ、まあ。
- ───
- 観覧車の回転に合わせて
福田さんの人生を振り返るんです!
- 福田
- 言ってることがわかりません。
- ───
- いいから乗りましょう!
- (ふたりでゴンドラへ、イン!)
- ───
- それではさっそく、はじめます。
スマホで声を録音して、と。
- 福田
- だからなにを?(笑)
- ───
- インタビューですよ。
- これを読んでくれているみなさま、
あらためまして、
福田利之さんです。
アドベンチャーワールド、
全122種類の動物を描ききりました。
- 福田
- はい(笑)。
- ───
- 福田さんは、いつどこでお生まれに?
- 福田
- そこから?!
- ───
- ですから、この、ね、
観覧車で回りはじめたいま、
ここで人生のはじまりを訊きます。
- 福田
- ああー。
- ───
- で、まあ、仮に、人生60年とします。
もっと長いですけどね、ひとまず。
観覧車一周で60年。
回転に合わせて、
誕生から訊いていくんです。
- 福田
- ‥‥なるほど。
- ───
- 題して、「人生観覧車」。
- 福田
- また、演歌のようなタイトルを(笑)。
- ───
- のんびりしてられません!
お生まれは?
- 福田
- 1967年ですね、3月18日生まれです。
- ───
- つい最近じゃないですか。
あらー、
お誕生日おめでとうございました。
- 福田
- ありがとうございます。
55になりました。
- ───
- 出身地は、大阪ですね。
- 福田
- はい。
- ───
- ほら、ゴンドラの位置は、
もう10歳くらいですよ。
どんな小学生でした?
- 福田
- ふつうに、ほんとにふつう。
どこにでもいる子どもでした。
- ───
- 絵は好きだった。
- 福田
- いや、まだそのころは。
- ‥‥というか、
スピーカーから音楽が(笑)。
- BGM
- ♪チャラッチャ~ チャチャチャ~
- ───
- いいですねー、軽快なBGM。
- ああ、もう中学生です。
- 福田
- 中学時代もごくごくふつうで。
- ───
- 絵は?
- 福田
- まだですね。
- ───
- 初恋は?
- 福田
- 初恋(笑)。
それは小学校のときでした。
○○○○○ちゃん。
- ───
- 名前は言わなくていいです(笑)。
- なんと、青春は一瞬です。
もう高校生になりました。
どんな高校生だったんでしょう?
- 福田
- スポーツをやるようになりました。
テニスとか。
- ───
- テニス。
絵は?
- 福田
- 絵はまだそんなに。
とにかくスポーツでした。
- ───
- スポーツ。
すこしは絵も?
- 福田
- ま、すこし描いてはいましたけど、
大学生になるときですね、
絵で食べていけたらと思ったのは。
- ───
- 憧れが芽生えたんですね。
- 福田
- 憧れということで言うと、
やっぱり、横尾忠則さんの世代ですね。
横尾さんの影響を受けました。
あとそう、父親がカメラマンだったので
写真や絵の話を聞いたり、
作品を見る環境はわりとあったので、
なんとなく自分も絵が好きに‥‥。
- ───
- ゴンドラは大学時代に入っています。
大阪芸大ですよね。
- 福田
- はい。
大学に入ってすぐ、
少林寺拳法部に入部しました。
- ───
- 芸大なのに。
どうしてその方向に?
- 福田
- ねえ。
当時、流行ってたんですよ、
格闘技とか映画の『少林寺』とか。
- ───
- はいはい、流行ってました。
- 福田
- 絵の勉強をしにいくつもりが、
2年くらいずっと
少林寺拳法をやっているという(笑)。
- ───
- 2年もやってたんですか。
- 福田
- 一応、黒帯までいきました。
- ───
- でも、少林寺拳法のために
芸大に入ったわけじゃないですよね。
- 福田
- 3年生でそれに気づきました。
- ───
- 気づいてくれてよかったです。
- ‥‥わ、遠くまで見える。
- 福田
- もう頂上ですか?
- ───
- いや、まだもうちょっとあります。
いま、25歳くらいかな。 - 大学を卒業しました。
イラストレーターになりましたね。
- 福田
- そうですね、ぼちぼちと。
- ───
- 現在の画風は、もうそのころから?
- 福田
- そうですね、そんなにぼくは
画風が変わってないと思います。
成長してへん(笑)。
- ───
- いいえ、それはぜったいにないです。
- ‥‥そろそろ頂上じゃないですか。
- 福田
- いい眺め。
- ───
- フラミンゴが見えます。
- ───
- ‥‥30歳を過ぎました。
頂上です。
- 福田
- 観覧車は下がりはじめてる。
- ───
- 下がってきてます。
- 福田
- 人生下り坂に(笑)。
- ───
- いやいや、円熟です(笑)。
- しばらくは、
大阪でお仕事を続ける日々ですね。 - 福田さんはずっと、
画家ではなくイラストレーターで。
- 福田
- そうですね。
それは父親が商業カメラマンだった
影響もあると思います。
絵を売って食べる画家の仕事が、
自分にはできる気がしなかった。
イラストレーターのほうが、
合ってるなと。
- ───
- 誰かの望みに応えるほうが。
- 福田
- そうですそうです、
依頼されて、描いて、
よろこんでもらうのがうれしい。
- ───
- それはいまでも変わらない。
- 福田
- はい。
ますますその気持ちが強くなってます。
- ───
- 今回のアドベンチャーワールドの絵も
まさしくそうですよね。
- 福田
- そうですね、
よろこばれるといいんですけど(笑)。
- ───
- ほぼ日の場所で何度か
個展を開いてくれてますが、
そういうときも画家の気持ちはなく。
- 福田
- 個展は、人に会えることとか、
いっしょに準備するのがたのしいです。
原画を販売したい気持ちは
そんなにないんですよ。
ほしいと言ってくださる人がいるので、
そういう人のために、すこし。
原画を買っていただくよりも、
その絵からできた
ポストカードとか本とかグッズとか、
そういうのを生活に入れてもらうほうが
うれしく感じます。
- BGM
- ♪ター タララー タタタラー
- ───
- 急にBGMが感動的な曲調に(笑)。
- 福田
- ええ話してるみたいに(笑)。
- ───
- ‥‥いま40歳くらいの位置かな。
- 福田
- じゃあもう、山下さんには会ってます。
- ───
- はじめて福田さんに会ったのって、
たしか18年とか前ですよ。
- 福田
- はあーー。
- ───
- ということは、
そろそろ大阪から東京へ。
- 福田
- そうですね。
- ───
- 吉祥寺へ。
- 福田
- 吉祥寺は長かったですね。
ほんとに肌が合いました。
- ───
- そこからはもう、
みなさんご存じの活躍で。
- 福田
- やめてください(笑)。
- ───
- たくさんの人たちと知り合って、
あたらしい仕事に取り組んで‥‥。
- 福田
- その感謝は、ほんとうにあります。
みなさんのおかげで
好きな絵を続けられてるんです。
- ───
- 今、いい顔してます。
- 福田
- ははは。
- ───
- いいです、いい顔。
- 福田
- メガネ曇ってますけど(笑)。
- ───
- その眼鏡の曇りさえも、いい!
- 福田
- 近い、近い(笑)。
- BGM
- ♪ターターター ターラーー
ターラー ラーラー
ターー ラーー ララーーー
- ───
- ‥‥50歳くらいになりました。
- 福田
- 実年齢に近づいてきてます。
- ───
- このころ、吉祥寺から徳島へ‥‥。
- 福田
- そうですね、この時期に移りました。
現在、ベースは徳島です。
- ───
- 自然の中で、絵を。
- 福田
- なんにもないところなんですよ。
- ───
- ‥‥55歳に、なりました。
つまり、まさしく今。
ふたりでゴンドラに乗っている今です。
- 福田
- 初めて山下さんに会ったとき、
55になってもこういうことしてるとは
思いもしませんでした。
- ───
- さあ、ここからは未来ですよ。
知らない領域。 - 今からの5年間、福田さんが
何をやっているのかぼくは知ってます。
- 福田
- なんですか。
- ───
- いいイラスト描いてますよ~。
- 福田
- はははは。
- ───
- いいイラスト描いてますよ~!
- 福田
- ありがとうございます(笑)。
- ───
- ここだけ、ここだけマスクをはずして
写真を一枚撮りましょう。
真正面から‥‥はいオーケー!
- 福田
- まもなく到着ですね。
- ───
- 最後の最後!
横に並んで、スマホで自撮りを!
はやくはやく、こっちきて!
- 福田
- ほいほい(となりに来る)。
- ───
- (パシャッ)はい、撮りました。
戻って戻って!
- 福田
- ほいほい(向こうへ戻る)。
- (ゴンドラのドアががらがらと開く)
- スタッフさん
- ありがとうございました!
足元にお気をつけてー。
- ───
- ありがとうございました!
- 福田
- ありがとうございましたー。
一周、約15分の「人生観覧車」は、終了。
ゴンドラから降りたら、
雨はほとんどやんでいました。
よかった。
だってこれから、
キリンやゾウ、ライオンに会える、
サファリワールドに向かうのですから。
-
ほぼ日曜日(渋谷PARCO8階)で開催!
福田利之 イラストレーション
1/ 1(じつぶつだい)動物園