こんにちは、ほぼ日の永田です。
もう、20年以上前から、2年に一度、
オリンピックの全種目を可能なかぎり観て、
そこに寄せられる膨大なメールに目を通し、
それらを翌朝までに編集し、読むだけでも
1時間くらいかかる長文コンテンツに仕上げて
大会期間中毎日公開する、という、
常軌を逸することをやっておりました。
しかしそれも2020東京オリンピックで一区切り。
前回の北京オリンピックからは、
毎日、観ることは観るものの(観るんですね)、
メールの編集と長文テキストの公開はやめて、
1日1本、観戦コラムを書く、という、
のんびりした姿勢でやっています。
観戦しながらのリアルタイムな感想は、
永田の旧ツイッターのアカウント
(@1101_nagata)で発信しています。
ぎゃあ、とか、うぁっ、みたいな反応は
そちらでおたのしみください。
旧ツイッターのアカウントをお持ちの方は
ハッシュタグ「#mitazo」をつけて、一緒に、
くわっ、とか、ひぃぃ、とか言いましょう。
#17
1試合だけ勝たせるとしたら?
- 頼む、神様、勝たせてくれ‥‥!
- なんてぼくらは祈るけど、
神様からするとそれ、たいへんなことだなと、
ぼくは思うのだ。 - もしもぼくが、長年のスポーツ観戦歴を認められ、
超越的なちからでもって、
「スポーツの勝ち負けを決める神様」とかに
抜擢されたら、もう、なに? 地獄の日々ですよ。
神なのに地獄とはこれいかに。 - だって、ぜんぶ勝たせたいもの。
仮に、神様になったぼくが、
いまのぼくの応援方針と一緒だったとすると、
ぜんぶ金メダルにしちゃうよ。 - うーん、ここは勝負っぽく、
この選手とこの選手は
初戦で負けることにしようかな、
とか、やんないよ。
この日に向かって努力してきたのを、
神、知ってるもの。 - ていうか、逆説的に、神はいないね。
すくなくとも勝負を司る神はいない。
いたらたいへんだもの、神。
いたら「もっと他の神がいいです」って、
異動希望届を出すと思う、神。 - じゃ、たとえばだよ?
1試合だけ勝たせてあげられるとしたら、どう?
このパリオリンピックのなかで、
1試合だけ勝たせることができる。 - って、コラムのネタとして書いただけでも、
もう、プレッシャーが押し寄せてくるよ。
冗談だよ、わかってる、遊びだよ遊び、わかってるよ。 - あくまで遊びとして、友だちとの雑談だとして、
1試合だけ勝たせるとしたら、どの試合だろう。
あなたならどの試合ですか。 - まあ、なんていうの、ノミネート試合というか
候補となる試合はいくつかぱっと浮かぶよね。 - 柔道混合団体決勝戦の、
たとえば阿部一二三選手の登場したあの試合。 - あと数秒で追いつかれてしまった
男子バスケットボール予選、日本対フランス戦。 - まさにあと1点が遠かった、
男子バレーボール決勝リーグの日本対イタリア戦。 - 中国に挑戦するまえに途絶えてしまった、
卓球男子団体準決勝の、
たとえば最後の張本智和戦。 - ああ、そうだ、阿部詩選手の
あの試合をやり直すというのはどうだろう。 - 結果的に銅メダルはとったけれど、
須﨑優衣選手のあの試合の
勝敗を変えるというのもある。 - またしてもベスト8の壁に阻まれた男子サッカー、
決勝トーナメントのスペイン戦はどうだ。 - 昨日のSHIGEKIXの準決勝もあるかもしれない。
もっと先の対戦が観たかった。 - あ、田中希実選手に勝たせるというのはあるかな。
いや、いきなり勝っちゃうのは不自然か。
いやいやいや、不自然とかないから。
1試合だけ勝たせるとしたら、っていう話だから。 - ああ、やっぱりこれは無理だなあ。
いまいくつか考えただけで、
なんか、ぜんぜんわくわくしないもの。
それどころかむしろ、遊びで書いた
上の試合にかかわる選手の人たちに
失礼なことした気分だもの。 - 自分でそういう遊びを提案して、
自分で否定しちゃってごめんよ。
でも、おかげでよくわかった。 - スポーツは、絶対に、思い通りになってはいけない。
どんな1点も、どんなプレイも、どんな演技も、
どうなるのかわかってはいけない。
それがスポーツのかけがえのない魅力なのだ。 - 昨日、これまで観たことのなかった
競技のメダルを2つも観た。 - 男子高飛び込みの玉井陸斗選手と、
近代五種の佐藤大宗選手だ。
たいへん失礼ながら、
願うことすらしていなかった競技だった。 - とってほしい願うメダルはあとすこしで逃し、
思ってもみなかったメダルのニュースに沸く。
ぜんぶ、どうなるかわからないから、おもしろい。 - そう考えると、「勝つべくして勝つ」というのは、
もう、とんでもなくすごいことなのだなあと思う。 - ひとつひとつがどうなるかわからないことが
前提になっているスポーツのなかで、
この人が勝つだろうと周囲に思われるほど、
安定して勝ち続けている。
まずそれがとんでもないことだ。
そのうえで、4年に一度の、独特のプレッシャーのある、
まさになにが起こるかわからないオリンピックで勝つ。
うわあ、気がとおくなる。
だから、連覇とか、すさまじいことなんだな。 - ぼくはどのスポーツも、
優勝候補が優勝するというのがけっこう好きなんだけれど、
そういう理由なんだなと思う。 - だから、またしてもいま書きながら思っているけれど、
ぼくがこのオリンピックのなかで
ひとつだけ好きな金メダルを挙げるとしたら、
レスリングの藤波朱理選手のそれかもしれない。 - 意外な人が奇跡を起こして勝つのも
スポーツの醍醐味だけれど、
強い人が強いまま勝つのもスポーツのおもしろさだ。
やり投げの北口榛花選手も、
勝ち続けてそういう選手になってほしい。 - さて、明日は、もう最後のあいさつを書くことになる。
ああ、24時間後には終わってるんですね。 - こんなにおもしろいパリオリンピックが。
(つづきます)
2024-08-11-SUN
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