本の中には出版社の倉庫で眠ったまま、
書店で読者の目に触れることもなく、
やがて「断裁」の運命をたどる本があります。
そのような本を仕入れてきて、
卸販売しているのが、
神田神保町の八木書店さんです。
街の本屋さんでは「自由価格本」「エコブックス」
「バーゲンブック」「アウトレット本」などと呼ばれ、
定価よりもぐっと下がった値段で販売されています。
「ほぼ日」ではこれを
死の淵からよみがえり、新たな読者のもとに
ふたたび羽ばたく本、という意味を込めて、
「フェニックスブックス」と名付けました。
発売時期がわるかった本、
時代を先取りしすぎてしまった本、
売れ行きがよくて増刷したにも関わらず、
そのタイミングや部数を誤ってしまった本‥‥等、
様々な理由から断裁の候補にされた本とはいえ、
決して「つまらない本」ではないのです。
相当のお宝本も隠れています。
この「フェニックスブックス」を販売するフェアを
10月29日(金)~31日(日)、
神田錦町のポートビル2Fで行います。
ほぼ日の學校長の河野通和をリーダーとし、
ほぼ日の本好きメンバーや、
作家の浅生鴨さん、
赤坂の書店「双子のライオン堂」の
店主の竹田信弥さんと一緒に選書しました。
その数、約1000冊。
当日店頭では、それぞれが自分の選んだ本について
熱をこめて語ります。
ぜひ、神田まで遊びにきてください。
あわせて、TOBICHI東京とTOBICHIのwebショップでも、
「フェニックスブックス」のセットを販売予定です。
こちらもおたのしみに!
その2
フェニックスブックスとは?
八木書店さんに浅生鴨さんが
聞きに行く。
さて、イベントの概要はつかめましたか?
まずは、それ!
10月29日~31日、神田ポートビル2F!
これだけ覚えていただくのでもよいのですが、
もうちょっとだけ、
「フェニックスブックス」の話を深堀りすべく
八木書店さんにお伺いしましょう!
鴨さん、竹田さん、河野が選書をしたのは、
「八木書店」さんの、
書店さんむけのオンラインのお店です。
そこには、在庫のデータベースがあり、
アマゾンでショッピングをするがごとくに、
本が選べます。
扱っている数は、13000タイトル。
総在庫数は145万冊ほど(!)だそうですよ。
その一部が、鴨さんと私が訪問した
神保町のオフィスの地下で
業者さん向けに販売をされているのですが、
大部分は、千葉県にある倉庫にあり、
全国の書店さんに出荷されています。
鴨さん、まずこれを見てみたくなりました。
▲ここが倉庫。左側の建物がA倉庫。奥がBとC。でか!
68年9月から稼働しているそうです。
▲A倉庫の中身です。
ピックアップするときは、人力です。
上の方はフォークリフトを使用します。
▲こっちがB倉庫。すべてが自動になっています。
向こうがみえないくらい棚が深い‥‥。
八木書店の古厩(ふるまや)さんにご案内いただきました。
▲このあたりは、新入荷の本。
「これだけの量の本が本当は、
廃棄処分になってしまって、
その活字は誰の目にも触れずに、
古紙になってしまっていたんだよね‥‥。
そう考えると、やっぱりうれしいなあー。」
と、鴨さん。
では、もうちょっと話を聞きに、
神田のオフィスに戻りましょう。
お話をお伺いしたのは、
「八木書店」の八木さんと、小谷野さん。
▲左が八木さん。右が小谷野さん。
余談ですが、
小谷野さんは「ほぼ日」の乗組員にそっくりな者がいます。
兄弟といってもばれないのではないか。
- 鴨
- 今日は午前中に千葉の倉庫の
見学をさせてもらいました。
- 八木
- 遠くまで行っていただいたのですね。
ありがとうございます。 - どうでした?
- 鴨
- 145万冊の本の圧はすごかったです!
僕の本がなければいいなあと
祈りながらの見学でした。
結果、ありませんでした!
- 八木
- それはよかったです(笑)。
- 鴨
- 早速なのですが、「八木書店」さんは、
いつ頃から「フェニックスブックス」を
取り扱いはじめたのでしょうか?
いまここに、社史の資料をいただきましたが、
もしや、創業時の昭和9年(1934年)ですか?
- 八木
- そのとおりです。
- 本を販売すると、
売れる本も売れない本も誕生するというのは、
今も昔も変わりません。
そうとなれば、
「フェニックスブックス」が生まれるのです。 - 昔は「特価本」とよばれていました。
古本屋さんでご覧になったことはありませんか?
- 鴨
- あります!
「特価本」というシールが
貼られているようなものですよね?
- 八木
- そうです。そうです。
古本屋さんで販売はしているのですが、
「特価本」というのは、
一度人の手にわたった「古本」ではなく「新品」です。
「新品」ですが、
事情があって「特価」になった本ですね。
- 鴨
- 「フェニックスブックス」のお話を聞いていく前に、
もしかしたら、本の価格について、
すこし詳しく
ご説明いただいたほうがいいかもしれません。
僕たちは、本に関わっているので、
書籍は定価で販売しなければならないという
きまりがあることを知っているのですが、
普通の方はご存知ないことかもしれません。
- 八木
- そうですね。
なぜ、書籍は洋服や電化製品のように、
本はセールをしないのかというと‥‥。
- 鴨
- 「再販制度」というものがあって
出来ないんですよね?
- 八木
- そうです。
小売店が商品に
自由に価格をつけることができません。
書籍の他にCDなどもこれにあたります。 - ただ、例外もあって、
出版社が、定価で売らなくていいよ、
といってくれれば、
価格を自由に設定することができるようになります。
これが「フェニックスブックス」です。
だから「自由価格本」という名称で呼ばれたりもします。
また、廃棄直前の本なので、
取引する時の価格もぐっと抑えられています。 - 以前は、ひとつの商品に
2つの価格があるということが嫌われて、
新刊を販売する書店に置かれることはなく、
主に古本屋さんが取り扱いをされていましたが、
ここ20年ほどは、新刊書店でも
取り扱いをされるようになってきたんですよ。
- 鴨
- 全国で「八木書店」さんのほかにも
同じようなことをされている会社はあるのですか?
- 八木
- ほとんど無いと思います。
かつては数社あったのですが、
会社そのものが廃業されたり、
事業を中止されたりしています。 - 日本であまり知られていませんが、
実は、世界ではこういう「自由価格本」は
ごく普通のこととして存在しています。 - 八木書店の
「フェニックスブックス」のラインナップには、
洋書もあるのですが、
それは、私自身がシカゴで開催される
「フェニックスブックス」専門のブックショーで
直接買い付けてきているものです。
世界では、本の流通量の5%くらいが、
「フェニックスブックス」だといわれています。 - アメリカのオレゴン州には、
新刊本、自由価格本、古本が
ずらっとそろって販売されている、
「パウエルブックス」という
有名な書店もあるんですよ。
- 鴨
- わー、おもしろいですね。
日本だと大概「フェニックスブックス」は、
専用の棚がありますよね。
- 八木
- そうですね。
新刊を出版社さんに返品をするときなどに、
「フェニックスブックス」が混ざってると
一回、弊社が買い付けた本が、
また出版社に戻ってしまうなんていう間違いが
起こりやすくもなってしまいますからね。
- 鴨
- 先程、ここ20年で新刊を扱う書店さんでも、
「フェニックスブックス」を販売しはじめた、
というお話がありましたが、
それはなぜなんでしょう?
- 八木
- 仕入れ値が新刊よりも
ぐっと抑えられるということもあって
商材として優秀なことがあげられるかと思います。
- 鴨
- なるほど、収益の側面もあるんですね。
- 作家としては、というよりも一人の本好きとしては、
廃棄になる運命だった本が、
もう一回、流通にのって、
誰かに読んでもらえるチャンスが増えるのは
ありがたいと思うんです。
- 小谷野
- 日本では年間約7万点のタイトルが発行されていて、
そうなると発売日が重なって、
書店員さんたちの目にとまらずに、
お客さんの目にとまらずに埋もれていってしまうのを
たくさん見てきました。
埋もれてしまうということは、
結局は誰の目にも触れないままに
この世から消えてしまうのです。
こういう本を少しでも
どうにかできるならばという思いはあります。 - とはいえ、弊社で扱える量には限界があるのですが‥‥。
- 鴨
- 少しでも救われる本があれば
うれしいですよ! - 今後の「フェニックスブックス」まわりで
なにかやりたいこととか、こんなふうにしたい、
ということなどはありますか?
- 八木
- 今後、というか「すでに」なのですが、
軽井沢のアウトレットモールに、
「フェニックスブックス」だけの
本屋さんを出店しました。
「アウトレット本」とも言われていますから、
「アウトレットにアウトレット本」です。
ちょっと今、コロナで大変ですけれど。
▲軽井沢の店舗「PAGES」。
- 鴨
- おしゃれ!
おしゃれ店舗!
いいですね。
こんな試みもされているのですね。 - 今度、ドライブがてらいってみます。
▲八木さんと鴨さん。
地下の「フェニックスブックス」売り場にて。
(また次回!)
2021-10-20-WED
-
― イベント詳細 ―
フェニックスブックスフェア
日程:10月29日~31日
時間:
10月29日(金)11時頃〜19時頃
10月30日(土)11時頃〜19時頃
10月31日(日)11時頃〜16時頃(←閉店時間注意!)
※その日用に準備をしていた在庫がなくなった場合
早めに店じまいをすることがあります。
「ほぼ日」のツイッターでお知らせいたします。[その他のお知らせ]
■当日の入場について
- 新型コロナウイルスの感染対策として、
入場の人数の制限をすることがあります。
その場合は、整理券をお配りする予定です。 - 発熱や味覚障害などの症状のある方は
来場をお控えください。 - ご来場時は、必ずマスクをご着用ください。
- 入場時に、
非接触型体温計にて
検温させていただきます。
(37.5度以上の方はご入場をご遠慮いただきます。) - ご入場の際、
除菌用アルコールをご利用ください。
■場内撮影について
- 当日は「ほぼ日」の腕章をつけたスタッフが
写真撮影をしております。
ほぼ日刊イトイ新聞WEBサイト、
その他の媒体、
TwitterやFacebookなどのSNSで
公開されることがあります。
■お問い合わせについて
- school-event@1101.com宛に
「フェニックス」という件名でお送りください。
なるべく早くお返事いたしますが、
お待たせすることもございますこと、
ご了承ください。
- 新型コロナウイルスの感染対策として、