こんにちは、ほぼ日のです。
人生に、一体なんなんだろう、というような
不思議なことが起こったことはありますか?
私はあります。
2017年、北ヨーロッパの国・ラトビアで行われた
「お邪魔者(Saboteur)」という
ボードゲームの世界大会で2位になりました。
いつか世界一になるのが夢です
‥‥なにそれ、と思いますよね。
自分でも思います。
上の写真、隣にいるのは、このゲームの作者、
ベルギー人のフレデリック・モイヤーセンさんです。

個人的な話で恐縮ですが、
一人でも多くの人にこのゲームの楽しさを
知っていただきたく、よかったらお付き合いください
3年間、全力で遊んだ日々の記録です。

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第2回 日本大会の予選に出る。

 
ほぼ日のが参加した
第1回お邪魔者日本大会は
2016年9月に行われました。
私たちはのんきなことに
「ブダペスト行きたいなあ」と、
夢見てわくわくするのみ。
開催日までろくに練習もせず出場することになりました。
さて、当日の会場である高円寺の「すごろくや」さんには、
丸田さんの予測どおり、約40名の参加者が集まっていました。

▲会場に乗り込む、ひぐ。 ▲会場に乗り込む、ひぐ。

 
しかし、世の中そんなに甘くない。
私とコマタは、あっけなく予選敗退してしまいます。
ひぐは12位まで勝ち進んだものの、そこで終了。
優勝したのは「コンノさん」という男性で、
早稲田大学の学生でした。
「いいなあ、あの人、
ブダペストに行けるのか‥‥」
そう思いながら会場を後にしました。

▲会場を後にするひぐ、コマタ。
ひぐは12位入賞の賞品、お邪魔者プレイマットをゲット。
このプレイマットがその後の練習にものすごく役立つことになります。 ▲会場を後にするひぐ、コマタ。 ひぐは12位入賞の賞品、お邪魔者プレイマットをゲット。 このプレイマットがその後の練習にものすごく役立つことになります。

 
その後、私たちは、誰からともなく、
「反省会しようか」と言って、高円寺の
ファミリーレストランに向かいました。
足取りは重く、気分はどん底でした。
ろくに練習をしてなかった私たちに
落ち込む資格もないんですが、
学生時代の部活の試合で負けたときのような
悔しさがこみあげてきました。
大会が5時間と長丁場だったこともあり、
疲労感もありました。
「くやしいくやしいくやしい」
「ああ失敗した、あそこであのカードを出さなければ‥‥」
「もっと練習しよう!」
このカードゲームは、出し方のテクニックや
コミュニケーションも重要で、
運だけじゃ勝てない、
ということも目の当たりにしました。
その後も私たちは定期的にゲームの会を続けました。
なかでも「お邪魔者」を
とにかくたくさんプレイしました。

▲ひぐが12位に入賞して手に入れた「プレイマット」。
マットがなくても遊べますが、あると、断然遊ひやすくなります。
(もともとの商品には付属されていません) ▲ひぐが12位に入賞して手に入れた「プレイマット」。 マットがなくても遊べますが、あると、断然遊ひやすくなります。 (もともとの商品には付属されていません)

 
そしてあっというまに1年が経ち、
2017年の夏がきました。
「今年は優勝したらラトビアに行けるんだって」
すごろくやさんのWebサイトを見た誰かが言いました。
前回の世界大会が盛況だったため、
「お邪魔者」の発売元であるドイツのアミーゴ社が
今年も世界大会を開くことにしたそうで、
その会場がラトビア、ということでした。
ハンガリーの次は、ラトビア‥‥!
すごろくやさんのページを見ると、
前年の「第1回日本選手権」で
優勝した大学生のコンノさんは、
なんと世界3位になっているではないですか。
世界各地から28名の代表が来ていたそうで、
そのなかで3位‥‥! すごい!

▲ハンガリーのブタペストで世界3位になっていたコンノさん。
右から3番目。(すごろくやさんのウェブサイトより) ▲ハンガリーのブタペストで世界3位になっていたコンノさん。 右から3番目。(すごろくやさんのウェブサイトより)

 
さて、ラトビア。
それってどこ? と思われた方もいますよね。
ラトビアは、北ヨーロッパの国で、
エストニア、リトアニア、ラトビア、と揃って
バルト三国と言われています。
検索すると、美しい街の画像がたくさん出てきました。
とくに首都リガの旧市街の美しさが目をひきます。
ひぐ「‥‥行きたいッ!」
コマタ「行こう、ラトビア!」
私「練習しよ!」
またも、「やりたがり」3人の意見は即一致しました。
1年の間に社内のゲーム仲間は増え、


予選に参加することになりました。
 
一方、「お邪魔者」の大会も進化していました。
初年度の2016年は、予選と決勝が同日に行われ、
すべて1日で終わったのに対し、
2017年は、東北、本州、四国、九州など
各地で予選会が行われ、
その予選会で勝ち抜いた1名が
日本大会に参加できる、ということになりました。
全国で26回も予選が開かれるようでした。
一人が同時に複数の予選会場に申し込みはできません。
と、いうことは‥‥
各予選会場に最低5人の参加者がいるとしたら、
総数は130人以上‥‥?
もしも10人が参加したら260人‥‥!?
負けた時点で他の予選に空きがあれば出られるという
システムなので、単純に計算はできませんが、
これは大変だ! と思いました。
ラトビアに行けるのは、たった1名なのです。
私たちは互いに予選で潰し合わないよう、
極力、ばらばらに予選会に出ることになりました。
都内のあちこちで予選会が開かれていたのです。
そして、
「予選に出場はしないけど、
練習だけならつきあってもいいよ」
という人たちも次々現れて、
社内に「ラトビアへの道」というグループができました。
メンバーは20人。

▲夜のオフィスで練習する私たち。
和気あいあい‥‥とかではなく、かなり真剣。 ▲夜のオフィスで練習する私たち。 和気あいあい‥‥とかではなく、かなり真剣。

 
今思えば、完全に「部活」だったと思います。
のんびりしているように見える弊社ですが、
みんなそれなりに仕事を抱えています。
それでも、みんなの意気込みは高く、
「今日は原稿の締め切りだから最後まで
参加できないけど、20分だけなら練習できるよ!」
などと言っては、合間を見つけて練習に励みました。
そして、夏の暑いさかりに、
「みんな日本大会で会おう!」を合言葉に、
ある者は決算で忙しい中、
ある者は「ほぼ日手帳」の仕事がピークを迎える中、
意気揚々と予選会の会場へ乗り込んでいきました。
しかし、
次々とグループラインに流れてくるのは、
「負けました‥‥!」という報告です。

▲五反田の予選にタエが参戦。
残念ながら予選突破ならず。
▲五反田の予選にタエが参戦。 残念ながら予選突破ならず。

▲「タエの仇をうつ!」と意気込むコマタも負けてしまう。 ▲「タエの仇をうつ!」と意気込むコマタも負けてしまう。

▲みちこは、東京・西荻窪からバスに乗って行ける予選会場へ。
(会場の写真がグループのラインに送られてきた)が、
結果は‥‥残念! ▲みちこは、東京・西荻窪からバスに乗って行ける予選会場へ。 (会場の写真がグループのラインに送られてきた)が、 結果は‥‥残念!

 
だめだ、どんどんみんな負けている!
そろそろ誰かが勝たないと‥‥。
そんなことを思いつつ、
私も渋谷「人狼ハウス」で行われた予選会に参加しました。
そこがどんな場所か、私は全く知りませんでした。
職場からそれほど遠くなく、
会社帰りに行ける時間帯の予選だった、
という理由で選んだのですが、
この予選会場は、ちょっと特殊な雰囲気だったのです。
というのも、参加者のほとんどが、
普段「人狼」というゲームが好きで
頻繁にプレイしている人たち。
この「人狼」に慣れ親しんだ人たちって、
お邪魔者のプレイの仕方がちょっと違うのです。
とにかく言葉による攻撃力がものすごい。
ゲームがはじまるやいなや、
誰が敵チームで誰が味方チームかを見分けるために、
ひたすら口論が繰り返されます。
私の知っていた「お邪魔者」は、
自分が場に出したいカードがなかったときに、
「手持ちのカードを場に捨てる」という行為をしても、
特に誰かに指摘されることなく、
進行していくものでした。穏やかに淡々と。
ところが、「人狼」メンバーとプレイすると、
誰かがカードを出すたびに、
最初から最後までこんなふうに追求がはじまるんです。
「え、え、え、今なんでカード捨てたんですか???」
「怪しすぎます!!!」
「いったん妨害しておきますか」
相手を攻撃するカードもバンバン場に出ます。
一点の怪しさも見過ごすまいとする
ビシッとした雰囲気にびっくりしたのですが、
不思議なもので、カードを出すたびに言葉で攻撃されると、
だんだんこちらも熱くなってきます。
自分は相当な負けず嫌いだったのかも、と思いました。
隠れていた性格が出るのも、
このゲームの特性なのかもしれません。
そして、何がなんやらですが、
人狼ハウスでの地区予選、
気づけば私が優勝!‥‥していました。

▲人狼ハウスで優勝し、予選通過。
2位のしぐれさん(左)と3位のかぼちゃさん(右)とは
このときが初対面だったのですが、
その後、毎年顔を合わせることになりました。 ▲人狼ハウスで優勝し、予選通過。 2位のしぐれさん(左)と3位のかぼちゃさん(右)とは このときが初対面だったのですが、 その後、毎年顔を合わせることになりました。

 
「人狼ハウス」での「お邪魔者」は、
「こんなこと言い合って、後で気まずくならないのかな」
と思ってしまうような会話が続いたのですが、
プレイ終了後は驚くほどサッパリしていたのが印象的で、
それがすごく心地良かったのです。
こういう「お邪魔者」も、楽しい! 
「人狼」好きなみなさんとの戦いで、
お邪魔者の世界が広がった感じがしました。
(今では、この雰囲気がないと物足りないと
思ってしまうほど‥‥!)
 
予選で優勝したその夜、
「ほぼ日」のお邪魔者グループが渋谷まで来てくれ、
人狼ハウスで会った初対面のかぼちゃさんも交えて、
夕食を食べることになりました。
前年の優勝者、コンノさんも一緒です。
(コンノさん、なんと人狼ハウスでの予選に
来ていたのです)
コンノさんは、ハンガリー・ブダペストでの世界大会が
いかに楽しかったか、を熱っぽく語ってくれました。

「世界大会は、主催のドイツのゲーム会社が
前夜祭みたいなものを開いてくれ、料理やお酒が出ます。
自然と誰かがボードゲームを出してきて、
世界中の人とお邪魔者とか、
いろんなゲームで遊べるんです。
めちゃくちゃ楽しかったです」

▲左、かぼちゃさん。右、コンノさん(2016年の世界3位)。 ▲左、かぼちゃさん。右、コンノさん(2016年の世界3位)。

 
コンノさんは、こう続けました。
「エストニア代表の女の子がかわいくて、やさしくて。
話はしたんですけど、恋人がいるかどうか
聞けなかったのが心残りなんです。
その子に会うために今回も出たいんです」
‥‥なにそれ!
そうか、世界大会だとそんな良いこともあるのか。
「練習しましょう」
「そう、練習しなきゃね」
「みんなを誘ってやろう!」
みんなは予選突破を目指し、私は本戦に向けて、
業務後、オフィスの会議室で練習を続けました。
月に1〜2回、試合が近づくと週に3~4回。
それ以外にも、私は近所の人が主催するゲームの会に
お邪魔者を持ち込み、土日もそこで練習しました。
お邪魔者というゲームは、運と
その場のコミュニケーションも勝敗に絡んでくるので、
練習しても強くなるかどうかはわかりません。
それがこのゲームの不思議なところです。
しかし、カードの種類と枚数は
全部覚えておいて損はありません。
「十字カードは5枚」
「爆破カードは3枚」などとボードに書いて覚えました。

 
そういう練習の成果もあったのか(?)、
さらに
2人がそれぞれ予選会を勝ち抜いて、
日本大会への出場権を得ました。
ひぐと私は2年連続の参加、
ひなは初参加です。
目指すのは、2017年9月、
第2回日本大会での優勝です。
去年のリベンジをする! ラトビアに行きたい! 
私たちはものすごく燃えていました。

(つづきます)

2021-09-28-TUE

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  • お邪魔者ってこんなゲームです。

    ドイツ生まれのボード(カード)ゲーム。
    「お邪魔者」と「お邪魔者2」がありますが、
    大会は通常の「お邪魔者」のほうを使います。
    3人以上でできますが、5~8人がベストな人数です。
    最初に引く役割カードによって、
    「金鉱掘り」チームと「お邪魔者」チームに別れます。
    どのチームになったかは自分だけがわかっています。
    各々の言動やカードの出し方を見つつ、
    味方が誰か、敵が誰か、を推理しながら、
    順番に1枚ずつカードを場に出していきます。
    「金鉱堀り」チームは「道」のカードをつないで
    金塊を掘り当てると得点が入ります。
    「お邪魔者」チームは「金鉱掘り」の動きを妨害し、
    金鉱を掘り当てる前に全員の手持ちのカードを
    尽きさせることができると
    得点が入ります。

    基本的な遊び方やルールは
    すごろくやさんのページをご覧ください。
    (動画付きでわかりやすいです)

    ★このほか、日本・世界大会用の特別ルールには、
    「自己中ドワーフ」という
    新しい役割も加わります。
    これによりゲームが一段と楽しくなるので、
    基本的な遊びかたがわかったら、
    ぜひ大会ルールでも遊んでみてください。
    「自己中ドワーフ」の役になった人は、
    「金鉱掘り」になりすまし、 自分のターンで
    金鉱を掘り当てると、 得点を独り占めできます。

    ※「自己中ドワーフ」の役割カードは、
    「お邪魔者」の商品には付いていないので、
    「赤い服を着た金鉱掘り」の役割カードを
    「自己中ドワーフ」にみなすといいですよ。
    (私たちもそうしています)
    2019年の世界大会のルールはこちら。

    協力:メビウスゲームズすごろくや