こんにちは、ほぼ日のです。
人生に、一体なんなんだろう、というような
不思議なことが起こったことはありますか?
私はあります。
2017年、北ヨーロッパの国・ラトビアで行われた
「お邪魔者(Saboteur)」という
ボードゲームの世界大会で2位になりました。
いつか世界一になるのが夢です。
‥‥なにそれ、と思いますよね。
自分でも思います。
上の写真、隣にいるのは、このゲームの作者、
ベルギー人のフレデリック・モイヤーセンさんです。
個人的な話で恐縮ですが、
一人でも多くの人にこのゲームの楽しさを
知っていただきたく、よかったらお付き合いください。
3年間、全力で遊んだ日々の記録です。
- 2017年、世界2位になった私。
その日から、生活が一変し、
身辺が騒がしくなりました。 - ‥‥とか書きたかったのですが、
実際はそんなこと、何一つありませんでした。
せいぜい同僚に、
「よっ、日本一のお邪魔者!」
とか言われたくらいです。
先輩からは「何だっけ、出たゲーム。お邪魔虫?」
などと間違えられたりしました。虫‥‥!? - 何事もなかったように、
いつもの、会社と家を往復するだけの
日々が過ぎていきます。 - だけど、私のなかでは、
「なんて楽しかったんだろう」
という思いが消えませんでした。
言語も文化も何もかも違う人々とテーブルを囲んだ瞬間、
正月に家族とゲームをしているような
気持ちになりました。 - 思い返せば返すほど、みんなちょっと変わってて、
穏やかで、ただただゲームが好き、
という人たちばかりだったように思われました。
お邪魔者、というヘンなゲームに集まる人たちには、
どこかそういう牧歌的な要素があるのかもしれません。 - たとえば、世界大会で優勝した
スペイン人のオスカー・マーティン。
彼なんて、心底ゲームを愛する人でした。
世界大会の当日、私が緊張と、全然勝てない焦りとで
頭がぐるぐるになっていたとき、
昼の休憩時間に、オスカー・マーティンは、
別のゲームで遊んでいたのです。
- 何人かと友人になり、
ギリシャのみんなとは、正月に
ギリシャへ行った際に再会し、お茶をしました。
私が年末年始に1週間の短期講座に通った
アテネの語学学校の、
数百メートル圏内に彼らも住んでいるという、
またもびっくりな偶然がありました。
- そしてあっというまに2018年の初夏がきました。
「今年の世界大会はポーランドだって!!」- 日本大会のお知らせが出る前に、
ドイツのサイトを毎日チェックし、
いちはやく情報を掴んだ私は、
みんなを誘って、また練習を開始します。
- ポーランドは音楽の国。
予選もまだなのに、すでに行く気になっている‥‥。
私たちはいつでも前のめりでした。
- そして、2018年の夏、地区予選がはじまりました。
とにかくまずは予選突破しなくては!
私の心はメラメラと燃えていました。
みんなも、燃えていました。
不思議な夏でした。
- 燃えすぎていた私は、
まずは自分が予選に勝って、
みんなの士気を高めようと考え、
真っ先に一人で予選会場へ向かいました。
そして無事、私は予選を通過し、
日本大会に行けることになりました。
- 自分が勝った後は、みんなの応援にまわります。
何もできませんが、
ただ「がんばれー!」というために予選会場に付いていき、
意味もなくその会場の中にいる、
ということを繰り返しました。
そのころは、どこの予選会場に行ってもふじたさんがいる、と
ほかの参加者に言われたりしました。 - 2018年の夏は、そういう夏でした。
- 結果的に、予選を通過し、
高円寺で行われる2018年の日本選手権に
出られることになったのは、
との2人です。
コマタは2016年に大会に出た初期メンバーなのですが、
2017年は出られなかったので、リベンジです。
- うれしいことに、この年から
世界大会に行ける日本人枠が「2名」に増えました。
コマタと私は、 - 「よし!2位以内に絶対入ろう!」
- と決意を新たに、日本大会に乗り込みました。
- 2018年の日本大会は10月に行われました。
3回目となると、
顔見知りも増えてます。
たとえば必ず予選を勝ち上がってくる
人狼ハウスで出会った「しぐれさん」と「かぼちゃ」さん。 - 本名も年齢もいまだにわからないのですが、
毎年必ず会うし、会えるとうれしく、
私は勝手にライバルと思っています。
予選会で会った人たちも続々と現れて、
さながら同窓会のようでした。
- 予選に2時間を費やし‥‥
トップで通過したのは、とみさきさんでした。
- 私は、全く成績ふるわず、
予選突破できるかどうかの瀬戸際。
前年の世界大会の一部始終を見てくれていた
メビウスママさんから
「あなたは負けはじめてからが強いのよ!」
という励ましを受け、
最終的に5位での予選通過となりました。
- そう、決勝戦ではまたも、しぐれさんの姿があったのです。
しぐれさんは
「ふじたさんは去年ラトビアに行ったでしょ。
今年は譲ってくださいよ」
と宣言してきます。
反対の立場だったらそう思うのは当然です。
ということで、勝負は荒れに荒れました。
- そして、個人的に忘れられない瞬間は、
同僚が
私に「妨害カード」を置いた瞬間でした。
「全力でやろう。遠慮はナシで!」
と直前にお互いに言ってあったので、
(まあ、いつも遠慮なんかしてないんですが)
すごく爽快な気持ちのいい瞬間‥‥
というシーンなのですが、
私は内心こんなふうに叫んでいました。
(おーい、コマちゃん、私もコマちゃんも、
役割は「お邪魔者」で、今は
ふたりとも味方同士なんだよ~~!
私に妨害カードを置くと、
コマちゃんも勝てないんだよ~!) - これは、完全に自分のせいです。
私が正体を隠しすぎてしまったせいで、
つまり自分の戦略ミスで、
ますます点がまったく入らない‥‥。
お邪魔者って、相手を疑うゲームなので、
そのへんの塩梅が難しいんです。
- そして決勝戦が終わりました。
先に書いたように、今年は2名までがポーランドに行けます。
冷静な人、あるいは頭のいい人だったら、
これまでのみんなの得点をぱっと計算して
誰が優勝、準優勝なのか
大体わかっていたと思いますが、
私はそのとき、全く状況がわかりませんでした。
- これは無理だ、絶対に負けた‥‥。
集計を待つ間、そう思っていました。
そして、発表の時間がきました。
すごろくやのスタッフの方がマイクを持ち、
全員の視線がそこに集中します。 - 「1位は、しかさん!」
しか、さん‥‥!
私の右隣に座っていた、静岡出身の若者です。
- いいなあ若者、ポーランド行けるのか‥‥!
などと思っていた、その瞬間、
「2位は、ふじたさん!!!」
- え、私!!!!!??????
- 本当にびっくりしました。
心底、びっくりしました。
得点計算をすると、
な、なんと、私が2位だったのです。
- そして(コマタは日本4位になりました)が
言いました。 - 「私、ポーランドに応援に行きます!」
(つづきます)
2021-10-02-SAT
-
お邪魔者ってこんなゲームです。
ドイツ生まれのボード(カード)ゲーム。
「お邪魔者」と「お邪魔者2」がありますが、
大会は通常の「お邪魔者」のほうを使います。
3人以上でできますが、5~8人がベストな人数です。
最初に引く役割カードによって、
「金鉱掘り」チームと「お邪魔者」チームに別れます。
どのチームになったかは自分だけがわかっています。
各々の言動やカードの出し方を見つつ、
味方が誰か、敵が誰か、を推理しながら、
順番に1枚ずつカードを場に出していきます。
「金鉱堀り」チームは「道」のカードをつないで
金塊を掘り当てると得点が入ります。
「お邪魔者」チームは「金鉱掘り」の動きを妨害し、
金鉱を掘り当てる前に全員の手持ちのカードを
尽きさせることができると得点が入ります。基本的な遊び方やルールは
すごろくやさんのページをご覧ください。
(動画付きでわかりやすいです)★このほか、日本・世界大会用の特別ルールには、
「自己中ドワーフ」という新しい役割も加わります。
これによりゲームが一段と楽しくなるので、
基本的な遊びかたがわかったら、
ぜひ大会ルールでも遊んでみてください。
「自己中ドワーフ」の役になった人は、
「金鉱掘り」になりすまし、 自分のターンで
金鉱を掘り当てると、得点を独り占めできます。 ※「自己中ドワーフ」の役割カードは、
「お邪魔者」の商品には付いていないので、
「赤い服を着た金鉱掘り」の役割カードを
「自己中ドワーフ」にみなすといいですよ。
(私たちもそうしています)
2019年の世界大会のルールはこちら。