こんにちは、ほぼ日のです。
人生に、一体なんなんだろう、というような
不思議なことが起こったことはありますか?
私はあります。
2017年、北ヨーロッパの国・ラトビアで行われた
「お邪魔者(Saboteur)」という
ボードゲームの世界大会で2位になりました。
いつか世界一になるのが夢です
‥‥なにそれ、と思いますよね。
自分でも思います。
上の写真、隣にいるのは、このゲームの作者、
ベルギー人のフレデリック・モイヤーセンさんです。

個人的な話で恐縮ですが、
一人でも多くの人にこのゲームの楽しさを
知っていただきたく、よかったらお付き合いください
3年間、全力で遊んだ日々の記録です。

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第7回 マイナス10度のポーランド。

 
何がなんやら、ですが、
私は2年連続で世界大会に出られることになりました。
世界大会は2018年12月1日。
場所はポーランドの首都、ワルシャワです。
「私、応援に行きます!」
と言ったコマタが、本当に応援に来てくれることに
なりました。

▲出発前に見送ってくれる同僚たち。 ▲出発前に見送ってくれる同僚たち。

▲な、なんと必勝扇子をいただきました。(びっくり!) ▲な、なんと必勝扇子をいただきました。(びっくり!)

▲計画性がないのでギリギリまで仕事。職場から直接空港へ、
行ってきます〜。 ▲計画性がないのでギリギリまで仕事。職場から直接空港へ、 行ってきます〜。

▲メビウスママさんは手作りのお守りをくださいました。 ▲メビウスママさんは手作りのお守りをくださいました。

 
そして、いざワルシャワへ。
コマタとは別々のフライトだったので、
現地のホテルで待ち合わせすることに。
主催のドイツのゲーム会社、アミーゴ社さんが、
私が泊まる予定だったシングルルームをツインに
変更してくれました。

▲ワルシャワ到着!アミーゴ社さんが手配してくれたMDMホテル。 ▲ワルシャワ到着!アミーゴ社さんが手配してくれたMDMホテル。

▲ホテルからの眺め。 ▲ホテルからの眺め。

 
さて、ホテルのロビーでは、
最初にオーストリアのモニカさんという女性に
再会しました。
前年、2017年に決勝卓を囲んだ6人のうちの1人で、
世界4位になった方です。
握手を交わしたのですが、
強く、ぎゅうううっと力を込めた握手で、
モニカさん気合い入ってるなぁ!と思いました。
夜は、宿泊しているホテルのレストランで
歓迎会が開かれました。
お酒や料理が並び、
世界中の参加者が顔を合わせます。
そこでは去年の優勝者、
スペインのオスカー・マーティンや、
香港のホラス・チャンさんとも再会しました。

▲日本で優勝した静岡出身の大学生、しかさんとも合流。 ▲日本で優勝した静岡出身の大学生、しかさんとも合流。

▲「お邪魔者」作者のフレデリックさんとも再会! ▲「お邪魔者」作者のフレデリックさんとも再会!

 
その日の夜は、特にポーランドの街に
繰り出したりはせず、
ひたすらみんなとゲームをして過ごしました。

▲大会前夜のゲーム大会。
この時間が、ものすごーく楽しいのです。
お邪魔者作者のフレデリックさんも一緒にプレイ。
▲大会前夜のゲーム大会。 この時間が、ものすごーく楽しいのです。 お邪魔者作者のフレデリックさんも一緒にプレイ。

▲左、前年度世界チャンピオン、スペインのオスカー・マーティン。
右は、去年のラトビアで会ったオーストリアの選手。
ゲーム好きな二人、子どもみたいな笑顔! ▲左、前年度世界チャンピオン、スペインのオスカー・マーティン。 右は、去年のラトビアで会ったオーストリアの選手。 ゲーム好きな二人、子どもみたいな笑顔!

 
翌朝、2018年12月1日、
アミーゴ社さんが引率の先生のように
みんなに路面電車の切符を配ってくれ、
大会会場へ向かいます。
普段なんの仕事をしているか
全くわからない謎の集団(私も含めて)が、
ぞろぞろとひとかたまりになって、歩き、
電車に乗り、会場へ向かいます。

▲ギリシャのみなさんとも再会! ▲ギリシャのみなさんとも再会!

 
大会会場は、ワルシャワ国立競技場、
「ユーロ2014」のサッカー大会も行われたスタジアムです。
前回のラトビア国立図書館もかっこよかったし、
ここもまたすごい。
フィールドでプレイするのか! と一瞬思いましたが、
ま、そんなはずはなく、
競技場の中の、広い会議室のようなスペースに通されました。

▲会場のワルシャワ国立競技場!
テンションが上がった私をコマタが撮ってくれました。 ▲会場のワルシャワ国立競技場! テンションが上がった私をコマタが撮ってくれました。

▲競技場内の会議室みたいなスペース。ここが会場。
ギリシャの小学生選手、ペトロくんと。
▲競技場内の会議室みたいなスペース。ここが会場。 ギリシャの小学生選手、ペトロくんと。

▲がんばります! ▲がんばります!

 
さて、予選がはじまるのは
10時30分、決勝も含めて終了するのは17時近く。
長丁場です。
なんと直前に大会ルールがいくつか変わりました。
(具体的には、中央に破損しているカードを
置くはずだったのがなくなったり、
自己中ドワーフの数が減ったり)、
抗議しているプレイヤーがいたりして、
予選がなかなかはじまりません。
そんなこんなでバタバタッとしつつも、
11時頃、なんとか無事スタート。
予選は、「金鉱堀り」チームが
どんどん点を重ねていきました。
私は、連続して「自己中ドワーフ」役を
引き続け、まったく点が入らず、
自分のペースに持っていけない。
前半、ほとんど点を取れずに昼休憩に入ります。
落ち込む私に、オスカーが
「昨年のことを思い出せ」と励ましてくれました。
しかさんもがんばっている様子です。
気を取り直して、予選後半!
一度ゴールを決める(金を掘り当てる)ことができました。
このまま勝ち続けたい、と思ったのですが、
その後、思うように点は積み上げられず‥‥
結果、私は惨敗し、
28人中20位で予選敗退することになりました。

 
しかさんも22位で予選敗退です。
日本勢、敗北。
そんななか、去年優勝した
スペインのオスカー・マーティンと
4位だったオーストリアのモニカさんは、
今年も決勝テーブルに進めるようでした。
強い人は強いものです。

▲決勝テーブル。
アジアからは台湾の男性が勝ち進んでいました。 ▲決勝テーブル。 アジアからは台湾の男性が勝ち進んでいました。

▲白熱する決勝テーブル。 ▲白熱する決勝テーブル。

 
「なんで、私はこの決勝テーブルに
座っていないんだろう」
うつろな目で、私はただただ
決勝卓を眺めていました。
何が何でも勝ちたいという気持ちが、
足りなかったのではないか‥‥。
自分を情けなく感じながら、
みんなのプレイが力強く、まぶしく見えました。
優勝したのは、あの、
ホテルに着くなりバッタリ再会した、
ぎゅうううっという握手が力強い、
オーストリアのモニカさんでした。

▲モニカさんの優勝スピーチ。
▲モニカさんの優勝スピーチ。

 
同じ会場で行われた「WIZARD」という
ゲームの世界選手権では、
前年ラトビアのホテルのエレベーターで
偶然会ったギリシャ人のバシリスが優勝していました。

▲ギリシャ人、優勝。中央がチャンピオンのバシリス。 ▲ギリシャ人、優勝。中央がチャンピオンのバシリス。

▲お邪魔者優勝のモニカさんと、WIZARD優勝のバシリス。 ▲お邪魔者優勝のモニカさんと、WIZARD優勝のバシリス。

 
モニカさんにバシリス、
親しくなった人たちが
優勝するのを見るのは、うれしい。
素直に祝福できます。
だけど、このとき、それ以上に私の心には
ただ悔しい気持ちのみが
ぐるぐると渦巻いていました。
まったく勝てず、
決勝テーブルにも進めなかったことが、
ものすごく悔しかったのです。
その日の夜、アミーゴ社さんが開いてくださった
「おつかれさま会」でも、
負けてしまった‥‥という重い気持ちを
引きずっていました。

▲おいしいものをいただきましたが
ほとんど味も覚えておらず。 ▲おいしいものをいただきましたが ほとんど味も覚えておらず。

 
翌朝、目覚めたときも、
まだ「悔しい‥‥」と思いました。
自分はどれほど負けず嫌いだったのだ、と思いました。
そんな私に、
「これから私たちはワルシャワ観光に行くけど、
あなたたちも一緒に行きますか?」

と声をかけてくれた人がいました。
この年はじめて参加していた、お邪魔者プレイヤーの、
ギリシャ人のヤニスさんでした。
静岡のしかさんは、
この日はアウシュヴィッツに行く予定がある、
と言って先に旅立っており、
残された私とコマタは、
ギリシャ人とのワルシャワ観光に混ぜてもらうことに。
メンバーは、「お邪魔者」と
「WIZARD」の大会に参加していた
ギリシャ人4人と、スペインのオスカーです。
英語とギリシャ語が入り混じった会話をしながら、
極寒のワルシャワを歩きます。
ヤニスさんが引率の先生のように、
ガイドブックを読み上げながら、
1つ1つ見どころを解説してくれます。
それを生徒のように聞く私たち。

▲中央、ヤニスさん。
▲中央、ヤニスさん。

▲ワルシャワ旧市街。
▲ワルシャワ旧市街。

 
ショパンの心臓が安置された聖十字架教会、
キュリー夫人の生家、
コペルニクスの像‥‥
昨日の悔しさをひきずっていて、
観光をする気分じゃ全くなかったのですが、
目にするものは新鮮で、
何もかもが美しかったです。

▲ポーランドは音楽の国。演奏するオスカーとコマタ。 ▲ポーランドは音楽の国。演奏するオスカーとコマタ。

 
その日の気温はマイナス10度でした。
ひたすら寒く、
しかしどこを切り取っても絵のように
美しいワルシャワ旧市街。
5時間も歩き続け、完全にクタクタになりましたが、
きれいなものを見続けたおかげか、
少しずつ気持ちが回復しました。
歩きながら、
私は1年に1回、お邪魔者大会に出るんだ、
そしてもし負けても世界大会がある限り、
見に行くことにしよう。
そう決意したのです。

▲後ろには前日にプレイしたワルシャワ国立競技場。
大会に出たみんなと。
▲後ろには前日にプレイしたワルシャワ国立競技場。 大会に出たみんなと。

▲街はもうクリスマス仕様。
寒さに耐えかね、焼きウィンナーを食べました。 ▲街はもうクリスマス仕様。 寒さに耐えかね、焼きウィンナーを食べました。

▲親切なギリシャ人のヤニスさん。ワルシャワの博物館にて。
本業はドイツの大学で、マンモスなど古生物を研究している教授です。
▲親切なギリシャ人のヤニスさん。ワルシャワの博物館にて。 本業はドイツの大学で、マンモスなど古生物を研究している教授です。

▲コマタと私とオスカー・マーティン。 ▲コマタと私とオスカー・マーティン。

▲世界大会の日はコマタの誕生日でした。
それを知ったアミーゴ社のスタッフの女性が、
コマタにゲームをプレゼント!
本当にあったかい、すてきな方々でした。
▲世界大会の日はコマタの誕生日でした。 それを知ったアミーゴ社のスタッフの女性が、 コマタにゲームをプレゼント! 本当にあったかい、すてきな方々でした。

▲ポーランドでも、いつのまにかボードゲームを買い込んでた
オスカー・マーティン。彼は真のゲーム好き! ▲ポーランドでも、いつのまにかボードゲームを買い込んでた オスカー・マーティン。彼は真のゲーム好き!

 
朝から晩まで極寒のワルシャワを一緒に歩き回り、
合間にホットチョコレートや
ホットワインを
飲んだりもして、
すっかり打ち解けあった私達。

「またお互いに勝ち抜いて来年必ず会おう!」

と言い合い、それぞれ帰国しました。

(あと1回だけ、つづきます)

2021-10-03-SUN

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  • お邪魔者ってこんなゲームです。

    ドイツ生まれのボード(カード)ゲーム。
    「お邪魔者」と「お邪魔者2」がありますが、
    大会は通常の「お邪魔者」のほうを使います。
    3人以上でできますが、5~8人がベストな人数です。
    最初に引く役割カードによって、
    「金鉱掘り」チームと「お邪魔者」チームに別れます。
    どのチームになったかは自分だけがわかっています。
    各々の言動やカードの出し方を見つつ、
    味方が誰か、敵が誰か、を推理しながら、
    順番に1枚ずつカードを場に出していきます。
    「金鉱堀り」チームは「道」のカードをつないで
    金塊を掘り当てると得点が入ります。
    「お邪魔者」チームは「金鉱掘り」の動きを妨害し、
    金鉱を掘り当てる前に全員の手持ちのカードを
    尽きさせることができると
    得点が入ります。

    基本的な遊び方やルールは
    すごろくやさんのページをご覧ください。
    (動画付きでわかりやすいです)

    ★このほか、日本・世界大会用の特別ルールには、
    「自己中ドワーフ」という
    新しい役割も加わります。
    これによりゲームが一段と楽しくなるので、
    基本的な遊びかたがわかったら、
    ぜひ大会ルールでも遊んでみてください。
    「自己中ドワーフ」の役になった人は、
    「金鉱掘り」になりすまし、 自分のターンで
    金鉱を掘り当てると、 得点を独り占めできます。

    ※「自己中ドワーフ」の役割カードは、
    「お邪魔者」の商品には付いていないので、
    「赤い服を着た金鉱掘り」の役割カードを
    「自己中ドワーフ」にみなすといいですよ。
    (私たちもそうしています)
    2019年の世界大会のルールはこちら。

    協力:メビウスゲームズすごろくや