かつて、「ほぼ日」には「ミーちゃんの縁側。」という
80歳をすぎてからパソコンを初めて使いこなすようになった
糸井重里の母A(ミーちゃん)の日記が連載されていました。
この日記には、お家のおとなりのケーキやさん
『Schwestern Haus(シュヴェステルンハウス)』
のことがたくさんでてきました。
彼女が日記のなかで「仕事」と言っているのは、
この店のお手伝いですし、日記のなかでの食事というのは、
料理教室もやっているこの店の店主である
金井初美さんがリーダーシップをとって作っているものです。
2002年から毎年年明けに
このお店の冬期限定のチョコレートケーキ
『ザッハトルテ』を販売しています。

今年ももちろん「ほぼ日」でお手伝いします。

※2024年の受付は終了しました。
ご購入ありがとうございました。

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シュヴェステルンハウス
(Schwestern Haus)のザッハトルテの
注文受付をはじめたのは、20年近く前のことでした。

糸井重里のところに、
『ミーちゃんの縁側。』の著者である母Aさんから、
奥様の樋口可南子さんへのバースデーケーキとして、
お住まいのお隣のケーキ屋さん、
「シュヴェステルンハウス」の
ザッハトルテが届いたのです。

そのときにイトイが書いたコメントがこちら。

今回のウィーン風チョコレートケーキ
(ザッハトルテ)は、
ほんとうにおいしかった!
きめ細かくて、
甘さが控え目なのにいい感じで響いてきて、
軽い酸味のあるアンズジャムが
軽快に合いの手を入れる。
前橋の、買いに行ける範囲の人だけに
売っているのはもったいない!!

さっそくシュヴェステルンハウス店主の
金井さんに連絡を取り、
「ほぼ日」読者のみなさんのために、
ザッハトルテの注文を受け付けていただけるように
お願いをしたのです。

こうして、毎年、年明けにケーキの
注文を受け付けることになりました。

あらためて、シュヴェステルンハウスと、
ザッハトルテについてご紹介していきます。

シュヴェステルンハウスは、
群馬県の前橋駅から車で20分ほどの
住宅街にあります。

▲取材に伺った日は前橋特有のからっ風も止んでいて、穏やかな日でした。このお店のお隣に、糸井重里の母Aさんが住んでいました。 ▲取材に伺った日は前橋特有のからっ風も止んでいて、穏やかな日でした。このお店のお隣に、糸井重里の母Aさんが住んでいました。

シュヴェステルンハウスは、1988年に開業し、
2022年に34年目になります。

店主の金井さんがお店をオープンする前から
すごくよくお菓子を作っていたそうなのですが、
自分の作るお菓子が、
どうもドイツっぽいのではないか?
と思ったのが、そもそもの始まり。

ほどなくして、
「じゃあもう、ドイツ菓子のお店を開こうか」
といって、お店を開いてしまったのです。
「思った」ところから
「じゃあもう」までのジャンプが
素晴らしいではありませんか!
なんたる行動力。

▲「ほぼ日」がはじまるざっと10年前のこと。 ▲「ほぼ日」がはじまるざっと10年前のこと。

金井さんいわく、
「きっかけはそれくらいかもしれませんが、
ひとつのお菓子をつくるときには
ドイツに行って、そのお菓子を研究してきます」
と。

シュヴェステルンハウスのドイツ菓子は、
メニューを加えるたびに
本国の味を現地に行って確かめ、
それをそのまま再現するのではなく
日本人が好む味にアレンジして
提供するのだそうです。

「ザッハトルテもオーストリアに食べに行きましたよ。
ドイツではなくてウィーンのお菓子だけど、
ザッハトルテは特別です。私が好きだから(笑)」

さて、では作り方をご紹介しましょう。

ザッハトルテは、
オーストリアの代表的なチョコレートケーキです。
一説によれば、オーストリアはウィーンにある
ホテル・ザッハーの菓子職人の
フランツ=ザッハーさんが
1800年代のはじめの頃に開発したとされています。

本場オーストリアでザッハトルテといえば、
「こってり濃厚で衝撃的な甘さ」というのが一般的。
でも、このザッハトルテはそんなことはありません。
糸井重里も「甘さが控え目」と称していたように、
こってりが絶妙な加減で抑えられているのです。

これは、店主の金井初美さんが、
「本場の味」にこだわるのではなく、
日本人の口に合うようにと、
あくまで、日本という土地で日本人が食べやすいように
アレンジをされているからなのです。

まずは、スポンジの部分を作っていきます。

材料には、
特別なものや有名なブランドの材料はありません。
新鮮な地元の食材を上手に選び、
日本人の好みにあう味を目指しているのだそうです。

▲まずは、チョコレートを湯煎。 ▲まずは、チョコレートを湯煎。

▲そして、バターも湯煎します。 ▲そして、バターも湯煎します。

▲卵白を別に泡立てまして‥‥。 ▲卵白を別に泡立てまして‥‥。

▲バター、粉砂糖、卵黄をミキサーで混ぜ合わせます。 ▲バター、粉砂糖、卵黄をミキサーで混ぜ合わせます。

▲先に、湯煎してあったチョコレートと、バターと粉砂糖と卵黄を混ぜたものを混ぜていきます。 ▲先に、湯煎してあったチョコレートと、バターと粉砂糖と卵黄を混ぜたものを混ぜていきます。

▲そこに、泡立てた卵白を混ぜていきます。 ▲そこに、泡立てた卵白を混ぜていきます。

▲最後に、ココアと薄力粉を投入。 ▲最後に、ココアと薄力粉を投入。

材料を混ぜ合わせ、
生地ができたら型に流し込み、

▲生地は500グラムとちょっと。金井さんは、ヘラで生地を1回すくうと、ジャスト500グラム。「ちょっと」までを1回で盛れないというのが、シュヴェステルンハウスの七不思議の一つです。あとの6個はいずれ。 ▲生地は500グラムとちょっと。金井さんは、ヘラで生地を1回すくうと、ジャスト500グラム。「ちょっと」までを1回で盛れないというのが、シュヴェステルンハウスの七不思議の一つです。あとの6個はいずれ。

そして、オーブンへ。

焼き上がったスポンジは、
ひっくり返して、冷まします。
そうです、ザッハトルテは、
焼かれるときは底だったものが、
上にくることになっているんです。

▲熱々の状態で、底面を上にして、そっと置いていきます。あっつあつですか?とお聞きすると「とんでもなく熱いです」と言いつつ表情はまったく変わりません。 ▲熱々の状態で、底面を上にして、そっと置いていきます。あっつあつですか?とお聞きすると「とんでもなく熱いです」と言いつつ表情はまったく変わりません。

ここに、「あんずミックスジャム」を塗ります。
これが糸井重里の言う「酸味の軽快な合いの手」。
ザッハトルテのアクセントですね!

▲あんずミックスジャムをさらにすこし煮詰めて固くしたものを、スポンジの上にのせます。 ▲あんずミックスジャムをさらにすこし煮詰めて固くしたものを、スポンジの上にのせます。

▲横を塗るときに、ジャムが垂れないように、そしてこのあとのチョコレートコーティングをするときにチョコの熱でもすぐに流れ出ない程度の絶妙な粘度が必要です。 ▲横を塗るときに、ジャムが垂れないように、そしてこのあとのチョコレートコーティングをするときにチョコの熱でもすぐに流れ出ない程度の絶妙な粘度が必要です。

ここに、お酒を少し加えた
チョコレートでコーティングしていきます。

▲あんずミックスジャムを塗ったスポンジに、チョコレートをのせます。 ▲あんずミックスジャムを塗ったスポンジに、チョコレートをのせます。

▲ヘラで回し広げて、コーティングが完了。ひやし固めます。 ▲ヘラで回し広げて、コーティングが完了。ひやし固めます。

シュヴェステルンハウスでは、このザッハトルテを
寒い期間だけ(1月~3月)の限定販売にしています。
なぜ暖かい季節に販売しないのか?
答えは簡単明瞭。
「暖かい季節はチョコレートが溶けてしまうから」
そう、これは冷蔵庫で保存しないケーキなんです。

冷蔵庫に入れると味が変わってしまうので
暖房のない冷暗所で保存する‥‥大きなポイントですね。
この保存法で、届いてから1週間はおいしく食べられます。

「冬だけのケーキ」、ぜひ食べてみてください。

(おしまい)

2024-01-03-WED

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