元テレビ東京のプロデューサーで、
現在はフリーで活躍する佐久間宣行さん。
著書『ずるい仕事術』をきっかけに、
糸井重里とじっくり話していただきました。
テーマは「はたらく」について。
やりたいことをやるためには、
何を乗り越えなければならないのか。
そのためには何が必要で、何が要らないのか。
いまの若い人たちを思いながら、
かつての自分たちを思い出しながら、
ふたりの「はたらく」についての対談です。
佐久間宣行(さくまのぶゆき)
- 佐久間
- なぜ湯村さんは、
糸井さんと組もうと思ったんでしょうね。
- 糸井
- それはぼくも知りたい(笑)。
- 佐久間
- 湯村さんがわかってたってことなんですかね。
当時の糸井さんのことを。
- 糸井
- 自分のことじゃなくて、
そのことで気づいたことがあって。
- 佐久間
- はい。
- 糸井
- 昔は貧乏だったけど、
あとですごい有名になった人たちって、
みんな若いときから
貧乏同士で認められてますよね。
その典型が赤瀬川原平さんで、
あの人はずーっと貧乏でしたから(笑)。
- 佐久間
- はははは。
- 糸井
- 赤瀬川さんってオノ・ヨーコさんを
「オノ」って呼ぶんです。
もともと仲間内だったから。
オノ・ヨーコを「オノ」って言う人、
ぼくはこれまで会ったことがない(笑)。
- 佐久間
- ないですね(笑)。
- 糸井
- あと、横尾忠則さんもそうですね。
若いときに小さい画廊にふらっと入ったら、
「一緒になんかやろう」って言われたとか。
絵を見てるだけで誘われる。
- 佐久間
- そんなことあるんですか(笑)。
- 糸井
- もともと横尾さんは
郵便配達員になりたかったんだけど、
「大学に行って絵を勉強した方がいい」
って先生が世話を焼いてくれたり。
つまり、そういう人たちには
世話を焼かれるだけの何かが、
芽が出る出ないの前にあるんでしょうね。
- 佐久間
- キュートさとも違う何かが。
すごく簡単に言うと「光るもの」なんですかね。
- 糸井
- ジャニー喜多川さんが
子どもたちを見るときなんかは、
きっとそんなことを思ってるんじゃないかな。
- 佐久間
- あーー。
- 糸井
- ジャニーズの中にも、
いわゆる二枚目じゃない子が
混じってたりするじゃないですか。
- 佐久間
- はいはい。
- 糸井
- ああいうのはやっぱりすごい目ですよ。
二枚目じゃない子の育ち方があって、
それがまたいいんですよね。
- 佐久間
- 魅力的な大人になりますよね、みんな。
- 糸井
- たぶんそういうものが、
ぼくの中にも(笑)。
- 佐久間
- 糸井さんにもあった(笑)。
- 糸井
- そこはわからないですけど、
あと、当時の自分の個性が
何かなって考えたときに、
だいぶん小生意気というのがある。
- 佐久間
- それはマイナスポイントにも
なり得ることだけど。
- 糸井
- 大いにね(笑)。
- 佐久間
- 糸井さんはそれを
「俺の個性だな」と思えた?
- 糸井
- 個性とは思ってないんです。
- 佐久間
- 思ってない?
- 糸井
- 自然に小生意気(笑)。
- 佐久間
- わははははは。
- 糸井
- 自然に小生意気だから、
ぼくを嫌う人とか、理不尽に怒る人、
もう小っちゃいときからずっといましたね。
- 佐久間
- そうなんですか。
- 糸井
- そういうタイプの人に、
ぼくはひっきりなしに説教されてます。
いまの若い人の中にも
「俺、あいつ嫌いなんだよな」という人、
絶対いると思う。
- 佐久間
- でも、それは誰にだっていますから。
- 糸井
- そうなんですけど、
ぼくの場合はその主な理由が
いつも小生意気っていう(笑)。
- 佐久間
- その年齢になっても(笑)。
- 糸井
- 大生意気ほどではないんだろうね。
- 佐久間
- だからこそ飛び越えられたことも、
たくさんあるんだろうとは思いますけど。
- 糸井
- 助かったところはあると思います。
- 佐久間
- ですよね。
- 糸井
- だから、みんなもそうなればいいと思う。
- 佐久間
- それはすごくわかります。
丁寧さの扉を閉じてしまって、
自分の行きたいところに
たどり着けない行けないっていう人、
ほんとにたくさんいますもんね。
- 糸井
- この本にも書いてありましたけど、
ちょうど昨日の社内ミーティングで、
「テクニックとして『礼儀正しい』はある」
という話をしたんです。
ぼくは小生意気かもしれないけど、
案外、礼儀正しいんです。
- 佐久間
- ただ、必要以上に礼儀正しくしてしまうと、
行きたいところにたどり着けないのかなって。
多少、不躾にしとくけど、
地雷だけは絶対に踏まないっていう、
そのくらいの礼儀正しさは必要なのかなって。
- 糸井
- ぼくも加減はわからないんですけど、
すくなくとも相手に対して
こっちから失礼なことをしようとは
絶対に思っていません。
できることならば謙遜に
生きていこうとは思うんだけど‥‥。
- 佐久間
- だけど?
- 糸井
- 根にある小生意気と、こう。
- 佐久間
- ブレンドされる?
- 糸井
- ブレンドされるんですかね。
- 佐久間
- 「あいつ、失礼なことも言うけど、
案外礼儀正しいところあるし」みたいな(笑)。
- 糸井
- そうそう「案外」ね(笑)。
- 佐久間
- そのバランスが大事なのはわかります。
そのほうが上にかわいがられたりしますし。
別に上にかわいがられることが
すべてでもないんですけど、
意味のないメンツ地雷は踏まなくていいわけで。
- 糸井
- メンツ地雷、俺、わざと踏むときある。
- 佐久間
- わざとですか?
- 糸井
- この歳になってもやってる気がする。
- 佐久間
- それは我慢できなくてですか?
それとも踏んだらおもしろそうって
思っちゃうから?
- 糸井
- いやいや、そういうのはないんです。
そういうことはしないんだけど、
「お前のおかげで何十人が迷惑してるぞ」
っていう気持ちもある。
- 佐久間
- ああ、なるほど。
そういう人が現れたときに。
- 糸井
- それは、ちょっとこう、
踏んどきたいなって(笑)。
- 佐久間
- それはまた別の話というか、
糸井さんにしか踏めない
地雷ってあると思うんです。やっぱり。
- 糸井
- 年の功もあるしね。
- 佐久間
- 特別なアーマーを持ってるというか。
- 糸井
- アーマー(笑)。
- 佐久間
- そういうアーマーを持ってる人にしか
踏めない地雷はあると思うので、
そういうときは踏んでもらわないと(笑)。
-
20年以上のサラリーマン生活で学んだ
佐久間さんの「仕事術」をまとめた本です。
タイトルに「ずるい」とありますが、
楽に仕事をするための「ずるさ」ではありません。
自分を消耗させず、無駄な戦いはせず、
まわりに疎まれることなく
やりたいことをやるにはどうしたらいいか。
若かりし頃の佐久間さんが悩み苦しみ
必死になって身につけた「62の方法」が、
出し惜しみされることなく詰め込まれています。
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