三國万里子さんが書いた初のエッセイ本
『編めば編むほどわたしはわたしになっていった』が
この秋、新潮社から発売されました。
三國さんはニットデザイナーですが、
この本は純粋に文学としての力を持っている本です。
なにしろ、由緒ある出版社である新潮社さんが、
「この文章はすばらしい!」と絶賛して、
トントン拍子に出版が決まったのですから。
そんな文学界の老舗、新潮社。1896年設立。
神楽坂にある社屋も歴史と伝統があって、
ものすごくかっこよくて、いろいろおもしろいんです。
いつかこの場所を紹介したいなあと思っていた
Miknits担当のほぼ日乗組員みちこが、
ある秋の日、三國万里子さんといっしょに
新潮社のあちこちを見学させていただきました。
日本を代表する文芸出版社、新潮社ってどんなところ?
- 松本
- つぎはね、ちょっとおもしろいものを
お見せしますよ。
- みちこ
- お、なんだろう?
- 松本
- はい、こちらです!
- みちこ
- おおおー、なんでしょう、これは。
革張りの本がずらっと並んでますが‥‥。
- 松本
- こちらは「ベストセラーの本棚」です!
- みちこ
- ベストセラー? え、どういうこと?
- 松本
- ご説明いたします。
こちらにある本はすべて、「新潮社から出版され、
10万部を超えたベストセラー」なのです。
あるときからはじまったことなんですが、
新潮社で10万部以上を記録した本は、文庫を除いて
特別に革張りに装幀しなおして、
この棚に並べられるのです。
- みちこ
- へーーーー。
ここにある本がぜんぶ10万部超え!
- 三國
- すごいよねー。
前に見せてもらって、驚いた。
- 松本
- この本棚、いつもは鍵がかかっているのですが、
今日はほぼ日さんの取材用に開けてもらっているので、
気になる本があれば出してもらって大丈夫です。
- みちこ
- い、いいんですかっ!
- 三國
- みっちゃん、好きな本、ある?
- みちこ
- はい、さっそくあります。
このさくらももこさんのとか‥‥。
- 松本
- さくらももこさん、『そういうふうにできている』。
- みちこ
- はい。あと、山田詠美さんのこれ、
『ぼくは勉強ができない』。
- 松本
- それはもう名著中の名著です。
- みちこ
- 好きな本ですー。
- 三國
- 池波正太郎さんの本がいっぱい!
- 松本
- 『剣客商売』シリーズは、
全部かっていうレベルですよね。
- みちこ
- すごーい。
- 松本
- 塩野七生さんの
『ローマ人の物語』シリーズも、ほぼあります。
- みちこ
- 村上春樹さんの作品もずらっと並んでます。
- 三國
- あ、これは最近の本ですね。
ブレイディみかこさんの
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』。
- 松本
- ちなみに、ここの棚に並んでる革張りの本は、
世界に4冊しかないんです。
著者ご本人に2冊、この本棚に1冊、
あと、うちの資料室に1冊。
- みちこ
- はーーー、
たぶんこれ、職人さんの手作りですよね?
- 松本
- そうですね。
つくれる人もそんなにいないらしくて、
何か月待ちみたいな状態だそうです。
ちょっとおもしろいのは、革の装幀にするときに、
見返しの紙を選べるんですよ。
- みちこ
- すごーい!
著者の方が選んでるんですか?
- 松本
- 編集者と一緒に選ぶんです。
特別に高い紙なんかもつかえますから、
10万部以上売れた本を担当した編集者は、
この見返しを選ぶのをたのしみにしています。
- みちこ
- 素敵なご褒美ですねぇ!
- 松本
- ふだん絶対つかえないような紙もつかえるっていう。
だから、10万部行くと、それをこう、
編集者が装幀のデザイナーと一緒に
キャッキャッて選んでるのとかを見ると、
「うらやましいなあ、いいなあ」って(笑)。
- 三國
- 松本さんは、まだ選んだことはない?
- 松本
- ‥‥ない‥‥ですね。
- みちこ
- さびしい目を(笑)。
- 松本
- いえ、大丈夫です。
いずれ、ぼくも見返しを選びますよ!
それはともかく、このへんに並んでるのは新書です。
- みちこ
- 新書も革張りになるんだ。
- 松本
- 10万部を超えれば、文庫以外はどんな本もここに並びます。
- みちこ
- 新書サイズの革の本って、かわいいですね。
- 三國
- 雰囲気がぜんぜん違うね。
あっ、見返しもいいなぁ。
- 松本
- 写真集なんかもここに並びます。
最近の本でいうと、
乃木坂46の賀喜遥香さんの写真集が、
いきなり20万部行きましたので、
まもなく写真集の革装本ができると思います。
- 三國
- すごーい!
- みちこ
- なんかそこに、大きい本がありますね。
それも写真集かな?
- 三國
- あ、『夏目雅子写真集』だって。
- みちこ
- すごい、夏目雅子さんの写真集!
- 三國
- 美しい‥‥。
なんか文学的なエロスを感じますね。
- みちこ
- 池波正太郎さんから、乃木坂46、
夏目雅子さんまで‥‥
さすが新潮社、懐が深いです。
- 松本
- ありがとうございます(笑)。
(つづきます!)
2022-11-25-FRI