武田

カメラに撮られながら話すのって、
ちょっと緊張しますね（笑）。

──

慣れないと気になりますよね。

武田

もともとぼく、
限られた人としか会わないんですよ。

──

そうなんですか？

武田

積極的に会いに行くっていう性格でもないので。

──

普段はこういう取材も、
あんまり受けられないんですか？

武田

ぼくなりには受けてるとは思うんですけど。
でも、あんまりしゃべるタイプでもないので。

──

今日は、すみません。
ぼくばかり質問してしまって。

武田

いえいえ、続けてください。

──

もし差し支えなければ、
絵のこともすこしお聞きしたいのですが。

武田

はい。

──

絵を描きはじめるときって、
何か元になる写真とかがあるんですか。

武田

いや、頭の中のイメージだけですね。
こういうのを描こうかなっていう、
曖昧なイメージだけがあります。

──

それは頭の中でぼんやりと、
「横向いていて、こんな色で」みたいな‥‥。

武田

そうですね。
けっこう偶然性が絡んでくるので、
こういうものを作ろうと思っても、
実際そんなふうにはならないというか。
だから最初は、もう適当に描いて、
そこから形を探していくみたいな感じです。
まずは小さなサイズからはじめて。

──

下絵で描いているものは、
実際に絵の具が盛り上がっているんですね。

武田

はい。

──

頭になんとなくのイメージがあって、
それを偶然性を利用しながら、
まずは下絵を何枚も描いていく‥‥。

武田

トライするというか。
やっていくうちに、だんだん、
こういう形かなっていうのが見えてくるので。

──

いま描いてるのは、
新作の下描きってことですよね。

武田

はい。

──

いろんなパターンを試すんですね。

武田

今回はいろいろ錯綜していて（笑）。
最初からこうしようとしても、
そうならない部分があるので。
どうにか形になるものを探すっていうか。
こういう下描きを繰り返して、
何かしら見つけていくみたいな感じですね。

──

いっぱい下絵を描いていると、
突然「あ、これだ」が見えてくるんですか。

武田

出てきますね。
出てこないとすごい苦しいんですけど。

──

いま壁にかけてあるものは、
まだそこまで来てない？

武田

あまり来てないですね。

──

感覚的な話だと思うんですけど、
「これだ」と「これじゃない」の差って、
どんなふうにジャッジされているんですか。

武田

それは、ぼくにもわからないです。
でも、たしかにあるんですね、それは。

──

言葉では説明できないけど、
「これだ！」っていう基準がある。

武田

「あ、これだね」ってのがある。
それはすぐにわかります。
それが出るまではしんどいです。

──

ということは、絵を描く工程の中では、
その作業が一番大変なんですね。

武田

大変ですね。
そこが決まってからは、
もう楽しく絵を描けるんですけど、
それまではずーっと「なんで、なんで」って。

──

野暮な質問なんですけど、
武田さんが描かれているものって、
「顔」なんですよね？

武田

うーん（笑）。

──

言いにくそうな（笑）。

武田

二通りの答え方があるんです。

──

二通り。

武田

「顔です」とも言ってるし、
「絵です」って言うときもある。

──

ああ、なるほど。

武田

両方とも言えるし。

──

ぐちゃぐちゃの線なのに、
これが顔に見えるのも不思議なんですよね。
「これを顔と思える自分もすごいな」
っていつも思います（笑）。

＜絵画のための絵画 036＞

武田

ぼくもそう思います。
それをそのまま描いてる感じなんです。
なるべく顔に見えるように描いてますけど。

──

顔の他にも、
花をモチーフにしたものもありますよね。

武田

これからやっていこうかなって。
人物以外も。
ただ、いまはこういう顔というか、
人物像のようなものをまだまだ描くつもりです。

──

この人物シリーズは、
いまで何枚くらい描かれたんですか。

武田

たしか37、８くらいだった気がします。

──

おぉ、すごい。
一ファンとしては、
まだまだ描きつづけてほしいです。

武田

そうですね。
いくつくらいでも行けそうです。