マシンガンズの滝沢秀一さんは、
2023年の「THE SECOND」で準優勝を飾った
現役ばりばりのお笑い芸人である一方、
プロのゴミ清掃員としても活動されています。
SNSではゴミにまつわる情報をほぼ毎日発信し、
ゴミについて考えるイベントを開催したり、
ゴミの実態を学べる本を出したり・・・・。
もはやどっちが本業なのかわからないくらい、
芸人と清掃員という、世にもめずらしい
二足のわらじを履きこなす滝沢さんに、
おもしろくて役に立つお話を
じっくり語っていただきました。
「ゴミはその人自身を表す」という
滝沢さんの「ゴミ観」に触れれば、
毎日のゴミ捨ても、生活そのものも、
ちょっと変わるかもしれません。

>滝沢秀一さんプロフィール

滝沢秀一 プロフィール画像

滝沢秀一(たきざわしゅういち)

お笑い芸人兼ごみ清掃員 。
1976年、東京都生まれ。太田プロダクション所属。
東京成徳大学在学中の1998年、
西堀亮さんとお笑いコンビ「マシンガンズ」を結成。
2012年、妻の妊娠を機に、
ごみ収集会社で働きはじめる。
ごみ収集の体験をもとにSNSや執筆、
講演会などで発信している。
2018年、エッセイ『このゴミは収集できません
(白夜書房)を上梓したあと、
漫画『ゴミ清掃員の日常』(講談社)、
ごみ育』(太田出版)などを出版。
2020年10月、
環境省『サステナビリティ広報大使』に就任。
2023年5月、コンビとしてフジテレビ
『THE SECOND~漫才トーナメント~』
にて準優勝。
著書13冊目の最新刊
ゴミ清掃員の日常〜ゴミ分別セレクション〜
(講談社)が発売中。

前へ目次ページへ次へ

第5回 生ゴミはこわくない。

次に、「生ゴミ」の話をしたいと思います。
生ゴミを処理するとき、特にやっかいなのは
「水分」です。
生ゴミに水分が含まれていると、
生ゴミの入った袋の底に液体が溜まるのですが、
我々の世界ではそれを「ゴミ汁」って呼んでいます。
臭そうですよね? 
これ、本当にめちゃめちゃ臭いんです。

ゴミの清掃車って、機械でゴミをギューっと
圧縮しながら回収しますよね。
だから、その中で雑巾を絞るみたいに
生ゴミが圧縮されると、
ゴミ汁がブシャーって出てくるわけです。
これがかかってしまうとですね、
1日中臭いですよ。
ご飯を食べるのも嫌になるくらい。
まだ、我々清掃員にかかるならいいんです。
ときどきね、清掃車とゴミ集積所の間の
狭い隙間を通ろうとする人がいるんです。
その一般の方にゴミ汁がかかってしまったら、
大変ですよね。
そういうときは、我々が「盾」になるんです。
もちろん、歩いている方が来たら、
まずは清掃車の回転盤を止めます。
しかし、ちょっと強引に通ろうとする人が
不意に現れたら、止める時間がない。
だから、ゴミ汁がかからないように「危ない!」って
人と車の間に立ちはだかって、盾になります。

滝沢さんのTwitterより 滝沢さんのTwitterより

清掃車とか生ゴミって、
臭いイメージがあると思います。
その原因のほとんどはこの汁、
つまり、水分なんですよ。
例えば、きゅうりのヘタは臭うかといったら、
そのままの状態では臭わないですよね。
きゅうりなどの生ゴミから出た水分に
雑菌が繁殖することで、
臭くなってしまうんです。
ですから、生ゴミを三角コーナーから
ゴミ袋に移す前に、
一度生ゴミを絞って水分を出していただけると
菌の繁殖をかなり抑えられて、匂いが防げます。
そうすると、ゴミ汁が減って
我々清掃員も助かりますし、
臭いもしづらくなるので、
ご家庭にとってもうれしいですよね。
さらに、ゴミ汁がそのまま
清掃工場に行ってしまうと、ゴミを燃やすときに
焼却炉に水をぶっかけるようなことになるんですね。
そうすると、やはり焼却炉の温度が下がってしまう。
ゴミが燃えにくくなるんです。
ゴミを燃やすのにかかる時間が長くなって、
CO₂をより多く排出してしまうので、
環境にも良くないんです。
そこで、
「じゃあ短時間で燃やそう」ということになると、
「重油」を使って燃やす必要が出てきます。
この重油、どうやって手に入れるかというと、
税金で買うしかないんですよ。
つまり、「生ゴミの汁を絞らない」というだけで、
本来使わなくていい税金を
使わなければならなくなるんです。
だから、皆さんがそれぞれ
1回ギュっと絞ってくれるだけで、
税金の節約にもつながるんですね。
それから、僕はこんなこともやっています。

これは、「黒土コンポスト」というものです。
この中に生ゴミを入れると、
黒土に含まれているバクテリアが
生ゴミを分解してくれるんですよ。
作り方は簡単で、ホームセンターなどで
700円くらいで買えるプランターに、
黒土を入れるんです。
黒土も、僕が使っている安いものなら、
1000円くらいで十分な量が買えます。
かかるお金はそれくらいで、
マンションのベランダでもできますよ。
虫がわいたり、臭いがきつかったりするんじゃないか
というイメージもあるかもしれませんが、
ちゃんと土を被せて定期的にかき混ぜれば、
虫も臭いも発生しづらいんです。
コンポストを使うと、生ゴミが出なくなります。
言ってしまえば、
生ゴミが消えて無くなるわけです。
可燃ゴミの約40%は食べ物に関するゴミだと
言われているのですが、
その40%分が無くなったら、
かなりゴミの量を減らせますよね。
しかも、中で生ゴミを分解することによって
コンポストの黒土は栄養満点の土になります。
そうしたら、植物を育てられる
堆肥のようなものですから、
「資源」になりますよね。

それに、コンポストの中にいる
バクテリアや微生物って、意外とかわいくて、
続けているとちょっと癒やされるんですよ。
生き物ですから、働き方も一定じゃなくて、
唐揚げのカスみたいなものだったらバクバク食べて
分解してくれるんですが、
果物の皮とかはあんまりおいしくないのか、
減り方が遅いんです(笑)。
それに、夏は活発ですぐに分解してくれますが、
冬は人間が布団から出たくないのと同じで
微生物も動きが鈍くなるんです。
土を触るということ自体も、
結構、癒やしになりますしね。
と、こういうふうに見ていったら、
分別したり、
生ゴミの量を減らしたりといったことで、
可燃ゴミのうち70%くらいは
資源に変えることができるんですよ。
僕は「本当にゴミを燃やす必要ってあるのかな?」と
疑問に思うことすらあります。
枯れ葉なんかも可燃ゴミとして出されますけど、
そこらへんに撒いときゃ
そのうち無くなるんじゃないかなとか(笑)。
いや、ちゃんと捨てなきゃいけないんですけどね、
「ゴミとして燃やすものを減らす」
という視点で考えてみるのも
おもしろいんじゃないでしょうか。

(つづきます)

2023-06-25-SUN

前へ目次ページへ次へ