お待ちかね、マシンガンズ滝沢さんの
「ゴミの授業」第2弾です!
今や全国を飛び回る人気芸人でありつつ、
プロのゴミ清掃員でもある滝沢さん。
前回の授業「ゴミはウソをつかない。」では、
ゴミ清掃員としての実体験に基づいた、
さまざまなエピソードや実践的な情報を、
わかりやすくおもしろく教えてくださいました。
第2回授業でも、ゴミについて、
ゴミを取り巻く社会について、
そして私たち自身のことについて、
たのしく真剣に語っていただきます。
今回はお客さんを入れて行ったこともあり、
現役芸人ならではのトークがさらに炸裂。
奥深い「ゴミ」の世界へ、
最後までぐんぐん引き込んでいく授業を
おたのしみください。

>滝沢秀一さんプロフィール

滝沢秀一 プロフィール画像

滝沢秀一(たきざわしゅういち)

お笑い芸人兼ごみ清掃員 。
1976年、東京都生まれ。太田プロダクション所属。
東京成徳大学在学中の1998年、
西堀亮さんとお笑いコンビ「マシンガンズ」を結成。
2012年、妻の妊娠を機に、
ごみ収集会社で働きはじめる。
ごみ収集の体験をもとにSNSや執筆、
講演会などで発信している。
2018年、エッセイ『このゴミは収集できません
(白夜書房)を上梓したあと、
漫画『ゴミ清掃員の日常』(講談社)、
ごみ育』(太田出版)などを出版。
2020年10月、
環境省『サステナビリティ広報大使』に就任。
2023年5月、コンビとしてフジテレビ
『THE SECOND~漫才トーナメント~』
にて準優勝。
著書13冊目の最新刊
ゴミ清掃員の日常〜ゴミ分別セレクション〜
(講談社)が発売中。

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第5回 ゴミの出し方は伝染する。

滝沢
さぁ、というわけでですね、
先ほどからお話ししているように、
段ボールは段ボール、雑誌は雑誌‥‥
ときれいに分別してくれる、
それって、清掃員にとって
すごくありがたいことなんです。
でも、どうしてそのことを
こんなに強調しているのかというと、
「自分たちが助かるから」
だけではないんです。
僕は11年間ゴミを回収していて、
気づいたことがあります。
それは「ゴミの出し方は伝染する」ということ。
例えば、AとBという町があって、
2つの街には互いに行き来がないと思ってください。

滝沢
この状況だと、面白いことに、
A町ではみんなペットボトルのラベルとキャップを
剥がすんです。
でも、一方B町では、みんな剥がさないんです。
どちらの町でも、剥がす人と剥がさない人がいても
おかしくないじゃないですか。
なのに、地域ごとにぱっくり分かれるんです。
これはなんでだろうなって、
自分の立場に置き換えて考えてみました。
例えば引っ越しをしたとして、
その町での初めての資源ゴミの日に、
ペットボトルのラベルとキャップを剥がして
捨てに行くとします。
でも、集積所に行ってみると、他の人はだれも
ラベルとキャップを剥がしていなかったら‥‥? 
そうすると、
「あ、この地域では剥がさなくていいんだ」
「剥がさなくても回収してもらえるんだ」
と思ってしまいますよね。
それで、次の週から剥がさなくなるんです。
これが、「伝染する」の意味です。

要するに、自分が出したゴミとか資源って、
知らない間に他の人に影響を与えているんです。
講演会などをすると、
「自分はゴミを分別したり、資源をきれいに分けて
出したりしているんだけど、
最後は全部まとめて燃やされてるなんて
都市伝説みたいなことも聞いたことがあるし、
自分だけがやっていても意味あるのかなぁ」
といった質問を受けることがあります。
都市伝説はもちろんウソですが、
それ以前に、「集積所にゴミを出す」時点で
じゅうぶん人に影響を与えていますよ、ということで
「100%意味がありますよ」
と答えるようにしています。
逆に、ラベルとキャップを剥がさないで
捨てに行って、
他のみんなが剥がして出していると、
「このままで捨てにくいな」
と思うのが人間の心理なんですよね。
こういうわけで、身近な人達同士で、
お互いがお互いの知らないところで
影響し合っているんです。
だから、地域柄のようなものが
ゴミの捨て方に表れるんだな、と感じますね。

滝沢
なのでね、僕はそう気づいたとき、
自分のマンションのゴミ捨て場に出された、
ラベルとキャップがはがされていないペットボトルを
毎週剥がし続けたんですよ。
そうしたら、半年後には
みんながきれいに剥がした状態で出してくれるように
なったんですね! 
一個「見本」をつくっただけで、
みんなが真似してくれたんです。
で、なんでこんな話をしたかというとですね‥‥、
みなさん『大泥棒』っていう本をご存知ですか? 
実際に泥棒をしていた人が書いた本なんですが、
この中に興味深い表現があるんです。

清永賢二『大泥棒』東洋経済新報社、2011年6月10日発売 清永賢二『大泥棒』東洋経済新報社、2011年6月10日発売

滝沢
それは、「街が汚れている」。
空き巣の人が、標的にしようかという街を見て
「街が汚れてるなぁ」って言うんですね。
つまり、落書き、選定されていない草木、
そしてゴミがあふれている場所。
あるいは、草が伸び放題の空き家に
ゴミが投げ入れられていたり。
こういうところって、僕も
「ああ、このあたりには人が来ないのかな」
って思います。
空き巣や泥棒の人にとっては、
こういう場所が仕事場になるんですね。

滝沢
お金持ちの家に忍び込んで、
お金をがっぽり盗んだとしても、
大体そういうお宅はセキュリティも
しっかりしていますから、
捕まってしまうじゃないですか。
やっぱりいちばん優先させるのは
「捕まらないこと」なので、
得られる利益は小額でも、人の目がないところで
仕事をするんだ、みたいなお話が
この本には書いてあるんです。
僕も、思わず「なるほどな」と
納得してしまったのですが、
要するに、落書きや放置自転車がある、
そして集積所が汚いところで
泥棒は仕事をしますよ、ということなんです。
だから、集積所をきれいに保つことは、
地域の治安を守る、
自分たちの安全な暮らしを守るってことに
直結するんですよね。

(つづきます)

2023-10-21-SAT

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