編集・濱田髙志、アンソロジスト。
装丁・祖父江慎、コズフィッシュ。
版元・吉田宏子、888ブックス。
あきれるほどすごい手塚治虫さん本を
つくったのが、この3人。しかも3冊。
天才漫画家の煌めくクリエイションを
時空を超えて受け止め、
21世紀の世に放つ、現代の三銃士たち?
聞けば聞くほど「おそろしい」、
その本の制作過程を、
5時間がかりで、うかがってきました。
諸事情あって取材は実に1年半以上前。
時節柄、そろってマスク姿の三銃士よ。
担当は「ほぼ日」奥野です。
第15回
最新情報が追加されていく。
- 濱田
- この『健康家族』っていう漫画は、
手塚先生が描いた絵を
手塚プロの漫画部の方が
クリーンナップしてるんですよね。
- ──
- クリーンナップ。
- 濱田
- アシスタントが、
ペン入れをしてるんだと思います。
- 祖父江
- ペン入れは、絶対そうだよね。
- ──
- 新聞掲載としての、最後の作品ですね。
- 祖父江
- そう。1987年かな。
- 濱田
- ただ、この『健康家族』という作品は
広告漫画なんですけど、
このあとも何回か続いているんです。
手塚先生の存命中に。 - つまり、そのときはもう、
手塚先生ご本人の絵じゃないんですね。
- 祖父江
- あ、なるほど。手塚先生の
最後の原稿だってことになってるけど。 - そういうことか。やっと理解できた。
- 濱田
- はい。今回、掲載している作品以外に、
『健康家族』は、
たぶん2回くらいあるんですけれども、
それらは、
アシスタントが「代筆」してるんです。
- 祖父江
- つまり、この本には、
アシスタントが描いた回は載せてない。
- ──
- だから、「事実上の最後」なんですね。
- 濱田
- そうです、そうです。
- ──
- アシスタントさんが描いた絵の場合は、
作画はどなたになるんですか。
- 濱田
- おそらく「作画:手塚プロダクション」
みたいな感じじゃないですかね。
- 祖父江
- 本人の作画じゃない回は
掲載しないようにしよう‥‥っていう、
誠意のある本なんですね。 - 仮に掲載した場合には、
きちんとクレジットを入れておこうと。
でね、こんなふうにして、
両方表っていうか両方からはじまる本。
- ──
- どっちからでも読めますよ、と。
逆からは『ケン一探偵長』が読めます。
- 祖父江
- 中間に奥付があるのがポイントですね。
- で、第1弾の『アーリーワークス』に
掲載されていた
『ものぐさトンちゃん』が、
『アーリーワークス』を発売したあと、
また発見されたんですよ。
- 濱田
- あ、そうでした。見つかりました。
- 最初の『アーリーワークス』には
『ものぐさトンちゃん』という作品が
2本、掲載されているんですが‥‥。
- 祖父江
- そうですそうです。載ってます。
- 『ものぐさトンちゃん』は、どこだ。
どこだ、どこだ、どこだ‥‥ない。
そんなときは、
「もくじ」を見ればすぐにわかるよ!
- ──
- なんと便利な人類の発明、もくじ‥‥。
- 濱田
- えーっと、ここですね。
付録のところに追加で載せたんです。
- 祖父江
- あった。
- 濱田
- つまり、
1冊目の『アーリーワークス』に
『ものぐさトンちゃん』を2本、
載せたんですけど、
発売後に、もともとの版元から
もう1本、
追加で見つかっちゃったんです。
- 祖父江
- そうです。見つかったんです。
- でも、どうしても1冊目に入れて
一緒に読みたい人もいるだろうなと。
そこで、そのときつくっていた
第2弾『コミックストリップス』の
フォーマットをそろえて‥‥。
- ──
- あー‥‥なるほど!
- 第2弾『コミックストリップス』の
いちばんちっちゃい本の後ろの方に
『ものぐさトンちゃん』の
「新発見回」が掲載されていますね。
デザインフォーマットも、同じ!
- 祖父江
- いいでしょ? いいでしょ?
- このキリトリ線を自分でカットして、
『マアチャンの日記帳』の中の
『ものぐさトンちゃん』の前に挟む。
- ──
- おもしろーい。
- 祖父江
- こうして「トンちゃん」の完成です。
雑誌のようですね、単行本なのに。
最新情報がどんどん追加されていく。
- ──
- 自由自在ですね。
- 祖父江
- 編集とデザイナーの愛情にあふれた
一冊となっております。
- ──
- すばらしいです。
- 濱田
- よくがんばりましたよね、ほんとに。
- 祖父江
- 成長し続ける本ですね。
- 買ってくれた人が
ちゃーんと満足いくような仕組みを、
そこはかとなく用意してます。
- ──
- そこはかとなく。でも、すごい。
- 祖父江
- それじゃあ、いよいよ
『ママー探偵物語』へいきましょう。
- ──
- ようやくたどりついた!
ここから、今日の本題!
- 祖父江
- 大変、おまたせしましたー。
(つづきます)
2024-11-11-MON
-
手塚治虫さん三部作、
888ブックスのサイトで
特典つきで販売中!新聞漫画集成『マアチャンの日記帳』と
初の商業出版となる 『ロマンス島』をセットにした
『手塚治虫アーリーワークス』(20000円+税)。
意欲作「タイガーランド」と
「アバンチュール21」をはじめ、
初単行本化作品を含む8作品を収録した、
3分冊からなる豪華作品集
『手塚治虫コミックストリップス』(12000円+税)。
そしてなんとなんと、
手塚先生が10歳から15歳のときに描いたという
『ママー探偵物語』(22000円+税)。
そんな、あきれるほどすごい3部作が、
濱田さん+祖父江さん+吉田さんの3人組によって、
つくられてしまいました。
手間とコストがかかりすぎているので、
このままのかたちでは増刷不可能だろうとのこと。
今回のインタビュー全編を通じて、
その魅力について語っていただいているのですが、
収録時間約5時間の全18回と、なにぶん長大。
いったいどんな3部作なのか、
スライドショーで、いちはやく、ご確認ください。
888ブックスさんのサイトで購入すると、
それぞれに、素敵な特典がついてくるそうです!