日々のできごとを記してみたり、
これからのことに思いをめぐらせてみたり。
手帳をひらくだけで、
じぶんとじっくり向き合う時間がうまれます。
そこに、おいしいお菓子と心地いい空間があれば、
さらに「いうことなし」だと思いませんか?
気まぐれに更新する「東京甘味手帳」は、
手帳タイムを過ごすのにぴったりな
東京のおいしいもの&お店案内です。

写真:川原崎 宣喜

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page_17 爽やかな休日の抹茶ババロア

 
朝起きたら、雲ひとつない、いい天気。

 
気温は25度、湿度60%、降水確率は0%。
暑くなく、寒くなく、
じめじめもしてないし、乾燥も感じない。
肌に当たる空気が、風が、最高に心地いい。

 
1年のあいだで何日か、
「もうしぶんなく、ちょうどいい天気」の日が
あるとするならば、それは間違いなく今日だ。

 
うれしくて、どこかへでかけたくなって。
思いついたのが、神楽坂。

 
冬にはぜんざいやおしるこ、
夏にはかき氷や白玉があって、
季節ごとに通ってしまうお店。
あ、もう白玉あんみつがはじまってる!

 
どれにしよう、と迷いつつ
今日はわたしの「定番」を注文した。
かわいいぶたのおせんべを描きながら
待つ時間、幸せだな。

 
きました、きました。
まずは、甘味じゃなくて‥‥

 
パカーン!

 
玉子ぞうに!
おなかがすいてるから、
「甘味手帳」を楽しむ前に、
まずは腹ごしらえしないとね。

 
ふわふわの卵の下には、
やわらかいおもちがふたつ。

 
やさしい出汁がきいてる。
お腹も心も満たされていく。

 
そして、本番はここから。
鮮やかなグリーン色の、四角いババロア。
食べちゃうのがもったいなくなる美しさ。

 
まずはひと口。

 
濃い抹茶の味わいが、
口の中いっぱいに
ふわーっと広がっていく。

 
泡のように軽い
生クリームとの相性も完璧だ。

 
そして、しっかりと重みのあるあんこ。
抹茶ババロアのほろ苦さとあいまって、
おいしさが、さらに深まっていく感じ。

 
ああ、いけない。
夢中で食べ続けるところだった。
手帳を書いて心を落ち着けて、
感動はすこしずつ味わわなければ。

 
最後の最後まで
ひと口、ひと口を大事に
味わいつくす。

 
今日もまた、
おいしい1ページを
残せたことに感謝して。

 
さて、爽やかな休日は、まだまだ続く。

 
このあとどこへ行こうかな。

 

神楽坂 紀の善

地下鉄飯田橋駅B3出口からすぐの場所にある甘味処。
看板メニューの抹茶ババロアをはじめ、
冬から春にかけては苺あんみつ、
夏になれば冷やし白玉やかき氷、
秋冬にはくりあんみつや胡桃しるこ、粟ぜんざい、くずもち‥‥
と、季節ごとの日本の甘味を味わうことができます。
また、ぞうにや赤飯、釜飯などのお食事もおいしいと評判。
清潔感のあるテーブル席や、座敷席でくつろげるほか、
持ち帰り可能なメニューが多いので、お土産にしても楽しめます。

お店の始まりは、江戸時代末期にまでさかのぼります。
現在の牛込神楽坂にあった牡丹屋敷という旗本屋敷に、
店主の先祖であり紀州から江戸に出てきた
善兵衛という人物が出入りをしていたことから、
「紀の善」の名がついたそうです。
店主の冨田惠子さんに、お話をうかがいました。

「当初は奉公人などの人入れ稼業をしていたのですが、
明治維新後は、日本料理店に転向しました。
宮家や文豪ら御用達の店として、繁盛していたようです。
その後戦争が始まって、一時は空襲で
この辺り一帯が焼け野原になったんですよ。
職人もいなくなったし男手もいない‥‥そんな状態で
疎開から戻った祖母と母が始められたのが、
甘いもの屋ぐらいだったんですよね。
焼け野原にバラックを立てて、
おしることかあんみつを出していました」

日本料理店だったころの名残で
良質な素材をふんだんに使うことを大切にし、
ぞうにや釜飯などのメニューも、
丁寧に一番出汁をとって作っているそうです。

看板メニュー、抹茶ババロアが誕生したのは35年前。
店を木造から2階建てのビルに建て替えるにあたって、
「なにか新しいものを出したい!」と
試行錯誤を重ねながら考えたのだとか。

席に通されてすぐ、お茶といっしょに出てくる
「ぶたのおせんべ」も、冨田さんが考案したもの。
「わたし、せっかちだから、
お客さまをお待たせするのがわるく感じてしまって‥‥
ちょっとおしのぎにひとつ、
お楽しみいただけるものがあればと思ったんです。
いろいろ考えて、ぶたがかわいいかなって(笑)」

決して派手ではないけれど細部まで気の利いた空間と
落ち着いて安らげるお店の雰囲気も魅力です。
「神楽坂らしく、粋でありたい。
お店の中はもちろん、味においても
粋な、きれのよさを心がけています」と冨田さん。
四季折々のおいしい甘味をいただきながら、
すてきな手帳時間をお過ごしください。

◎抹茶ババロア  961円

35年ほど前に誕生して以来、長きにわたって
看板メニューであり続けている人気の甘味。
あんこには国産の大納言小豆を、
抹茶ババロアには京都の抹茶を使用。
日本料理店だったころの名残で、
いい材料をたっぷり使うことを大切にしているそうで、
この濃い色と深みのある味わいも、
良質な抹茶をふんだんに使うからこそ出せるもの。
上品な甘さとほろ苦さがあり、
ふわっと軽いクリームとの相性も抜群の一品です。

◎冷やし白玉  961円

5月から残暑が終わる頃までの夏限定メニュー。
涼やかなガラスの器に、
手で丁寧に丸めて作ったもちもちの白玉8つと、
彩りを添えるマスカット、
シロップと氷が入ったさわやかな一品です。
白玉とマスカットの、
同じように丸くてかわいらしい見た目と、
口に含んだときの食感の違いを存分に楽しめます。

神楽坂 紀の善

東京都新宿区神楽坂1-12
営業:11:00〜19:30(L.O.19:00)、
日曜・祝日11:30〜17:30(L.O.17:00
休み:月曜
電話:03-3269-2920
https://kinozen.co.jp

 

「四角いお皿に四角い抹茶ババロア」という構図がかわいくて、上から見た絵を描きました。ババロア、生クリーム、粒あんの比率を考えながら、ひと口ひと口を堪能。味はもちろんですが、絶妙な食感もたまらないのです。

(次回は久しぶりの「お持ち帰り」編。どうぞお楽しみに。)

2021-05-22-SAT

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