第3回 インベーダーゲーム
糸井 仲畑くんがよく遊びに来てたときは、
ぼくがフリーになったころでね。
小さい事務所にいると、
いろんな人が遊びに来て、
ものすごくおもしろかったんだよ。
仲畑 あれ、セントラルアパートのときかね。
糸井 うん、セントラルアパート。
仲畑 セントラルアパートのころは、
たしかにおもしろかったな。
当時はね、インベーダーゲームが
大ブームだったんだよ。
ふたりともハマって、そうとうやったんだよね。
糸井 やったねぇ(笑)。

仲畑 喫茶店にあるインベーダーゲームを
ずっとやっててね、そこが10時で終わるんだ。
すると今度は12時までやってる店に行くわけ。
そこが終わると今度は2時までやってる店。
で、最後、いちばん遅くまでやってる店が
六本木にあったんだよね。
朝、4時とか5時までやってるの、そこは。
糸井 タクシーつかまえては、
インベーダーゲームを求めて
ジプシーのように動くんだ。
それで、誰かがやってたりすると、
「ああ!」って頭を抱えて、つぎの店を探す。
ところが、インベーダーゲームが
あんまり流行ったもんだから、
どこもいっぱいでできなくなっちゃって、
やる場所がなくなっちゃうわけ。
そしたらね、あるとき知り合いが
「糸井さん、穴場を見つけましたよ。
 新宿2丁目です」って教えてくれたの。
あのとき、仲畑くんもいたっけ?
仲畑 いたかもわからんな。

糸井 2丁目っていうから、ゲイバーかなと思ったら
「ゲイバーじゃなくて、
 ホモバーです」って言うわけ。
つまり、女装してる人とか、
おかま口調で話す人なんていなくて、
ふつうにそういう男性ばかりがいるんだよ。
で、こっちはとにかくインベーダーゲームが
やりたいわけだからさ、行くじゃない?
で、バンとドアを開けたとたんに、
カウンターにずらっと並んだ男たちが、
じっとこっちを見るんだ。
つまり、こう、品定めをしてるわけ。
仲畑 本気の人たちばっかりだからね、
そういうとこは(笑)。
糸井 で、その店の奥のほうに、
インベーダーゲームが1台ある。
その、男たちをかきわけた先にね。
それくらい、おれたちは
インベーダーゲームをやりたかったと、
そういうお話だ。
仲畑 ずーっとやってたねぇ。
おれより糸井くんのほうがうまいんだけどね。
でも、いちばんうまかったのは
カメラマンの鋤田さんだね。
糸井 鋤田さんはうまかった!
あのころ、鋤田さんは、
毎朝、インベーダーゲームが
置いてある喫茶店まで行って、入口のところで
その喫茶店に配られた新聞を読みながら
店員が来て鍵を開けるのを待ってたんだから。


一同 (笑)
糸井 で、店が開くと、電源も自分で入れて、
インベーダーゲームをはじめるんだ。
仲畑 やってたねぇ。
「インベーダーゲームは永遠だね」
って言ってたね。
糸井 いや、それ、
仲畑くんが言ったんだよ。
仲畑 あ、そう? おれが言ってた?
糸井 そうだよ。で、オレは、
「そうかなぁ?」って言ったんだ。
仲畑 そやったかな。
糸井 「そうかなぁ?」って言ったら、
インベーダーゲームがなぜ永遠かってことを、
「こうだろ? こうだろ? で、こう。
 これ、どう考えても永遠だ」って(笑)。
それ、はっきり覚えてる。
仲畑 あ、そう?
でもおれ、本当にそう思ったもんな。
「これは永遠だ!」と思った。
糸井 あと、筐体を買おうとしたんだよ。
インベーダーゲームそのものを。
だって「永遠」だからさ(笑)。
仲畑 おれ、「永遠」だと思ったのよ。
そしたら、「永遠」じゃなかったね。

糸井 でも、「ゲーム」って意味では、
いまでもずっと流行ってるよね。
仲畑 あ、「ゲーム」としてはね。
糸井 「ゲーム」としては、
「永遠だ」という読みは
正しかったのかもしれない。
  (続きます)
2008-08-26-TUE