第4回 ふたりはいつも
糸井 しかし、あらためて思うけれども、
ぼくと仲畑くんは、
もう、はっきりと人間のタイプが違うね。
仲畑 水と油ぐらい違うね。
でも、こうして続いているから
不思議なもんだよね、これ。
ま、馬が合ったんだな。
なにかというといっしょに遊んでた。
いっしょにバイク乗って、浅草あたりまで、
すき焼き食いに行ったりさ。

糸井 団体旅行での相部屋、なんていうのもあったね。
仲畑 ああ、中国旅行ね。
糸井 ふたりで旅行するとね、
おれのほうが妻役を演じたりしてね。
甲斐甲斐しく、大げさに世話をやいたりする。
というのは、そういうふうに
演じる遊びとかをしないと、
旅行って、もたないから。
仲畑 旅って、続けてると、
だんだん不愉快になるから。
糸井 「あいつはおもしろくない」とかね、
「ふざけてる」とか、「メシが少ない」とか、
なにかと不愉快なことばかり
言いがちになっていくんだよ。
で、そうなると仲畑くんは、
もう、朝も起きないからさ。
毎朝、起こすために、いろいろ工夫するわけ。
仲畑 そうそう(笑)。
糸井 たとえば、布団かぶって寝てる耳元で、
「♪あなたひとぉりにぃ〜〜」って歌うんだ。



すると、ちょっと迷ったあとで、
「‥‥‥‥ヮ・ワワワー♪」と
小さな合いの手が返ってくる。
一同 (笑)

仲畑 まぁ、不機嫌に寝ながらもさ、
いちおう、合いの手入れなきゃまずいな、
ぐらいは思うわけよ。
糸井 かと思うと、いきなり下男みたいになってね、
「お許しくださいまし!
 お許しくださいまし、ダンナ様!」って、
寝てる人に向かって叫ぶわけ。
すると、布団の中から、
「‥‥‥‥ふっふっふっ」っていう笑い声が。
一同 (笑)
糸井 あれはいくつぐらいのときかね。
仲畑 30代かなぁ、あのときは。
しょうがないよなぁ。
糸井 しょうがないよねぇ(笑)。
仲畑 昔ね、おれと糸井くんは、
デキてると思われたときがあるんだよ。

一同 (爆笑)
仲畑 いや本当に。笑うけど。
糸井 福岡でね。
仲畑 そう、福岡にね、ふたりで、
なにかの審査員として呼ばれて行ったわけ。
すると、夜は、先方が
食事を用意してくれるじゃない?
そんときも、まぁ、まずいもん食わされたわけ。
糸井 わざわざ、まずいもんって
言わなくてもいいのに(笑)。
仲畑 でさ、糸井くんって
エビとかカニがダメじゃない?
甲殻類アレルギーだからさ。
もちろん、おれはそれを知ってる。
だから、お膳がパッと出たときに、
糸井くんはもう、ふつうのことだから、
なにも言わずに自分の皿の
エビとカニをおれの皿に移すわけ。
で、おれはその分、お返ししなきゃと思うから
ちくわかなんかを、こう、お箸で移す。
その、無言の動作が、あまりにも自然で‥‥。
糸井 周囲の人たちが
「このふたりは!」と(笑)。

一同 (爆笑)
仲畑 まあ、たしかに(笑)。
糸井 それは、思っちゃうかもなぁ(笑)。
仲畑 自然に、なんの相談もなく、
当然のことのように
こうやって料理を移し合ってたからね。
糸井 「おれ、カニ、ダメだからどうぞ」とか
言えばぜんぜん違うだろうけど、
ひと言もなく、それだからね(笑)。
仲畑 不埒なこと考えるもんだよ、しかし。
糸井 あとさ、そういう疑いってね、
なんていうのかな‥‥当人からは、
「違うよ」って言いづらいんだよね(笑)。
仲畑 ああ(笑)。
一同 (笑)
糸井 訊かれたら「違いますよ!」って言えるけどね。
仲畑 ことさら言うのもさ、なんか変だしな。

一同 (笑)
  (続きます)
2008-08-27-WED