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シリアへ出発しよう!
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狂っていきそう
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赤いものが浮かんでいる。堕ちてしまいそうなほど巨大。アラブの宝石をまき散らしたかのようなダマスカスの夜景に比べ、その夜空は、どこまでも黒く深い。そんな漆黒のカンバスへ、真っ赤な封蝋を落としたかのようにして、巨大な「赤」が鈍く光っていた。写真家は、写真を撮ることも忘れ、しばらくのあいだ、その物体を見つめている。目を離すことができない。ゆっくり、時間をかけて狂っていきそうな感覚。これが「ルナティック」だ。狂気という意味を孕んだ形容詞の意味を、いまは、具体的に理解することができる。オレたちは、あんなところに立ったというのか。今から40年以上も前に‥‥。そう、あの「赤」は、月。人類がその存在を刻んだ、ふたつめの天体。シリアのそれは、赤く、まあるく、そして巨大。写真はついぞ、撮り忘れたらしい。
2011-08-01-MON
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