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photo : 清水肇+吉田健人(prigraphics)・「ほぼ日」菅野
illustration:みどりちゃん
こだわりがないんだなぁ、という
雰囲気を全面に出している
ハルノ宵子さんが
「ぜひこうしたい」と
はっきり要望を示した改装箇所がありました。
それは「玄関のドア」でした。
当初は出入口を、
現在の居間がある「窓」にしようとしていました。
「窓から出入りするのか! さすがだ!」
と思っていたのですが、やはり考えなおして、
現在の玄関をメインゲートにしようと
いうことになりました。
「そうなると、
玄関のドアは引き戸がいい」
とハルノさんは言うのでした。
現在は、前後開閉式のドアです。
間口は固定されているのに、
どうやって引き戸にするのだろうか‥‥?
それは大工事になるのではないだろうか‥‥?
はたして、予想どおり、この「引き戸計画」に
最も予算を割くことになりました。
そして、居間の畳を
調湿性にすぐれると言われる
「ひのき畳」に張り替えることも、
ハルノさんが自分で決断したことでした。
「ひのき畳」、すごくよさそうです。
(ひのき畳については、下に補足を書きました。
くわしくはこのページの下のあたりをごらんください)
全体の計画が固まったら、図面を引いていきます。
図面作成に2週間、それをもとに話し合い、
調整に約半月かけたのち、工事へ入ります。
着工してからはおよそ1か月で終了するとのこと。
決まればすぐに建ってしまいます。
「後悔のないように決める」までが、タイヘンなのです。
着工前、最後の打ち合わせでは
リノベーション後の猫屋台を使いはじめて
ハルノさんがじっさいに暮らしたとき、
どうなっていくかを想像して話し合いました。
「未来に出てくる願望」を、
ここで考えておくのです。
夏の陽射しはどんなふうに入ってくるか、
冬はどんな風が吹き込むか。
お客さんは何歳くらいの人で
どんな酔っ払い方をするか。
キッチンやトイレでは、どんなことが起きるのか。
そして、このリノベーションで、ハルノさんの
「ほんとうにやりたかったこと」が実現するのか。
保健所に話を聞きにいってわかった、
「お客さんが入る場所と厨房を
カウンターなどでしっかり分ける」
「厨房の入口に、肘まで洗える手洗いをつける」
「トイレと厨房は仕切りをつくって分け、距離をつくる」
などのルールも取り入れながら、
さらに図面を引き直し‥‥
いよいよです。
全体の予算と進行を確認し、
着工の契約となりました。
玄関の扉工事だけが、案の定大がかりで、
工事はその部分だけ6~7週間ほど
日程を要することがわかりました。
2階部分に住みながら、
1か月以上、工事の人が自由に出入りする
状況になってしまいます。
ハルノさんは大丈夫なのでしょうか。
「大丈夫です。
以前言ったように、
うちは前からずっと玄関は開けっぱなし。
こないだ、ちょっと旅行に行ったんだけども、
その旅行のときも、そのまま
ドアを開けて行ってみましたら、
大丈夫でした。おほほほほ」
てことは、旅行中、無人開放‥‥?
私は、ハルノさんの猫屋台のお料理が
とてもたのしみでした。
ハルノさんは
「言ってもらえればなんでもつくるよ」
とおっしゃっていました。
煮込み、サラダ、鍋もの、スープ、麺類、
キッシュ、春巻き、コロッケ‥‥。
もともとお酒が好きなハルノさんのことです、
オードブル系はお手のものでしょう。
ここで私は、ハルノさんに訊いてみました。
ハルノさんの、いちばん得意な料理はなんですか。
すると、こんな答えが返ってきたのです。
「サンドイッチかなぁ」
へぇぇええ、サンドイッチかぁ。
ひのきの畳について
猫屋台の居間に採用された畳は
ひのきの間伐材を使用したものです。
ふつう、畳の土台となる畳床(たたみどこ)は
わらやポリスチレンフォームなどを使用しますが、
(最近はわらを使った畳も減っているようです)
この畳はひのきの間伐材を圧縮し、
麻で縫いあげてつくっています。
化学物質に過敏な猫もいるし、
なによりひのきは防ダニ効果があるということで
ハルノさんはこの畳を使用しました。
東京では現在、クマイ商店さんで
取り扱いがあるそうです。
製造は社会福祉法人アンサンブル会で、
GTF Green Challenge AWARDS 2014の
間伐・間伐材利用コンクールにおいて
林野庁長官賞を受賞しました。
(つづきます)
2014-10-06-MON