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photo : 清水肇+吉田健人(prigraphics)・「ほぼ日」菅野
illustration:みどりちゃん
玄関を引き戸にして広げ、
アプローチをひろびろとさせるために
玄関近くにあったユズリハの木を切ることになりました。
吉本家のいろんなことを見てきたであろう木です。
切ったあとのユズリハの「材木」は
中庭につくる、猫たちのための
キャットタワーになれば、という計画。
みんなが思い出の木で遊んでくれるといいなぁ。
こうして玄関の工事を進めようとしたところ、
アプローチの地面に
ヒビが入っているのが見つかりました。
これは、家が盛土の上に建っているため、
経年変化で沈み込んでいることが原因なのだそうです。
こういったリノベーションでは、
工事を進める途中で、
補修しなくてはならない箇所が
家のあちこちに出てくるものなのだそうです。
その都度工務店に確認してもらい、
再見積もりをしていきます。
工事をする前の解体だけで
今回は100万円という費用がかかることになりました。
(ひとえにあの、玄関のドアのせいです‥‥)
全体的には、キッチン、洗面所、玄関という
最低限の改築なのですが、それでも
500万円ほどの費用はかかりそうです。
スピークの担当者である川合さんは
素材を変更したり工事箇所を少なくして、
最終的には工事の見積額を
予定より減額させました。
なにを変更して減額したのか、
その理由と金額を
打ち合わせのたびに川合さんは
ハルノさんに説明しました。
後半の打ち合わせは、ほとんどこの
「費用変更の説明」に割かれていました。
なんたって、お金は、
施主の貴重な財源から出ています。
相互の納得は、いかなるときでも最重要項目。
2013年10月。
工事がはじまりました。
内装工事も同時進行です。
そして、キッチンにあった鍋釜お皿はぜんぶ
仏壇のある居間に
いったん移動されることになりました。
かつて、吉本隆明さんと糸井が
対談していた部屋です。
荷物にうずもれながら、
写真のなかの吉本隆明さんと和子さんは
なんだか「いいね」と言っている気がしました。
そうそう、唯一の目印となる、
猫屋台の看板もつくらなくてはいけません。
看板には、玄関の廃材を再利用することになりました。
それは、旧いドアの開き戸パーツを、ハルノさんが
「看板のベースにそのまま使えるんじゃない?」
と気づいたことがきっかけでした。
担当の川合さんが
「じゃあ、照明をどうやって取りつけましょう?
把手とか、なにかありませんか?」
といって、家探しをはじめたのだそうです。
照明も探しましたが、
なかなかピンとくるものがありません。
結局、ハルノさんが
「私のチャリのライトをはずして使おうよ」
と言い出し、採用されました。
ハルノさんに、
なぜ「猫屋台」は「屋台」なのか、
訊いてみました。
「うちはもともと夕方からしか活動しないからね。
しかも、そんなにきちんとした店にはできないから、
夕方からゆるくやる、ということで、
屋台がいいかな、と」
そういえば、隆明さんの時代から
取材や打ち合わせは15時以降に設定されていたなぁ。
隆明さんの起床は、14時でした。
昼間は寝ている、なんだか、猫みたい。
どんどんようすがかわっていく吉本家を
猫たちはどんな思いで見つめていたのでしょう。
工事そのものは、正直、いやだったろうな。
猫たち。
もうすぐ猫屋台ができるからね。
(つづきます)
2014-10-07-TUE