猫屋台 nekoyatai

ハルノ宵子さんの、お料理と、猫と、父。

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猫屋台

第6回 うずもれる仏壇。

玄関を引き戸にして広げ、
アプローチをひろびろとさせるために
玄関近くにあったユズリハの木を切ることになりました。
吉本家のいろんなことを見てきたであろう木です。


▲手前にあるのが切られたユズリハ。
切ったあとのユズリハの「材木」は
中庭につくる、猫たちのための
キャットタワーになれば、という計画。
みんなが思い出の木で遊んでくれるといいなぁ。

こうして玄関の工事を進めようとしたところ、
アプローチの地面に
ヒビが入っているのが見つかりました。
これは、家が盛土の上に建っているため、
経年変化で沈み込んでいることが原因なのだそうです。


▲ひび割れが出現。
 常駐する外猫「赤3匹」が行き来するアプローチ。

こういったリノベーションでは、
工事を進める途中で、
補修しなくてはならない箇所が
家のあちこちに出てくるものなのだそうです。
その都度工務店に確認してもらい、
再見積もりをしていきます。

工事をする前の解体だけで
今回は100万円という費用がかかることになりました。
(ひとえにあの、玄関のドアのせいです‥‥)
全体的には、キッチン、洗面所、玄関という
最低限の改築なのですが、それでも
500万円ほどの費用はかかりそうです。
スピークの担当者である川合さんは
素材を変更したり工事箇所を少なくして、
最終的には工事の見積額を
予定より減額させました。

なにを変更して減額したのか、
その理由と金額を
打ち合わせのたびに川合さんは
ハルノさんに説明しました。
後半の打ち合わせは、ほとんどこの
「費用変更の説明」に割かれていました。
なんたって、お金は、
施主の貴重な財源から出ています。
相互の納得は、いかなるときでも最重要項目。


▲担当者が施主の希望を実現していくのです。
2013年10月。
工事がはじまりました。
内装工事も同時進行です。


▲ダイニングにはあたらしい机、つり戸棚を設置します。
 トイレも改修。


▲ドアもこのとおり。ホントに引き戸になるのかな‥‥?
そして、キッチンにあった鍋釜お皿はぜんぶ
仏壇のある居間に
いったん移動されることになりました。
かつて、吉本隆明さんと糸井が
対談していた部屋です。


▲この部屋が‥‥。

▲この状態。
荷物にうずもれながら、
写真のなかの吉本隆明さんと和子さんは
なんだか「いいね」と言っている気がしました。


▲ざると泡だて器の横に仏壇と遺影。
 「笑えるから、撮影してって」とハルノさんが言うので
 遠慮なくそうさせていただきました。
 隆明さん、和子さん、すみません。



そうそう、唯一の目印となる、
猫屋台の看板もつくらなくてはいけません。
看板には、玄関の廃材を再利用することになりました。

それは、旧いドアの開き戸パーツを、ハルノさんが
「看板のベースにそのまま使えるんじゃない?」
と気づいたことがきっかけでした。
担当の川合さんが
「じゃあ、照明をどうやって取りつけましょう?
 把手とか、なにかありませんか?」
といって、家探しをはじめたのだそうです。
照明も探しましたが、
なかなかピンとくるものがありません。

結局、ハルノさんが
「私のチャリのライトをはずして使おうよ」
と言い出し、採用されました。


▲「ほら、ちょうどいいじゃん」
 たしかに‥‥。

ハルノさんに、
なぜ「猫屋台」は「屋台」なのか、
訊いてみました。

「うちはもともと夕方からしか活動しないからね。
 しかも、そんなにきちんとした店にはできないから、
 夕方からゆるくやる、ということで、
 屋台がいいかな、と」

そういえば、隆明さんの時代から
取材や打ち合わせは15時以降に設定されていたなぁ。
隆明さんの起床は、14時でした。
昼間は寝ている、なんだか、猫みたい。

どんどんようすがかわっていく吉本家を
猫たちはどんな思いで見つめていたのでしょう。
工事そのものは、正直、いやだったろうな。




▲夕方になると玄関に猫が集まります。
 みんなに唐揚げをやるハルノさんです。

猫たち。
もうすぐ猫屋台ができるからね。





(つづきます)
2014-10-07-TUE