page design : prigraphics
photo : 清水肇+吉田健人(prigraphics)・「ほぼ日」菅野
illustration:みどりちゃん
吉本家のキッチンに戸棚がついて、
カウンターのようになりました。
トイレのドアの位置を変え、
厨房との仕切りがはっきりつきました。
お客さんが手を洗う場所も完備。
保健所の審査もこれできっとクリアです。
長いあいだ吉本家の玄関に立っていた
ユズリハの木を使って
猫たちのためのキャットウォークをつくりました‥‥
と言いたいところなのですが、
結局は中が腐っているところがあって、
使わなかったそうです。
ハルノさんは
「工事があらかた終わってわかったのは、
いままでよりも家の中に
光が入るようになったことだなぁ」
と、うれしそうでした。
原マスミさんの絵を入れた
猫屋台の看板も完成しました。
ちいさくて、ひっそりしすぎている感じもします。
「この看板を目にした人に
ここはいったいなんなんですか、と訊かれたら
あれこれ説明せずに
まーまーお茶でも、と言う。
そんな感じになるのかな」
そして、11月。
施工者から施主に
完成した建物を正式に渡す
「引き渡し」が行われることになり、
スピークのみなさんが猫屋台に集まりました。
そして、この「引き渡し」と同じ日に
保健所による立ち入り検査も行われました。
保健所の検査では、
下記のような項目が確認されました。
・戸棚の位置
・2層式のシンクのお湯の温度が規定どおりか
・冷蔵庫と冷凍庫の温度
また、それぞれに温度計を設置しているか
・トイレと手洗いの水の出がしっかりしているか
・客席が厨房と分かれているか
・厨房の入口に肘まで洗える手洗いがついているか、
水の流れはよいか
・トイレと厨房は明確に分け、距離を取っているか
ぜんぶちゃんとできているはずですが、
大丈夫かな‥‥?
保健所の方は、いろんなところに目を光らせて
見まわりました。
猫のシロミも息をひそめています。
「寒い時期ですから、
ノロウイルスに気をつけてください。
それから、営業については
個人のキャパシティを超えないようにしてくださいね」
という言葉をのこし、
保健所の担当の方は、
にこやかに去って行かれました。
わぁー、終わった。
ほっとした。
ハルノさん、はしゃいでおられます。
よかった。
「店の名前がなぜ『猫屋台』というのか、
そのあたりをつっこまれて訊かれたら
どう答えようかと思ってた!」
猫が気軽に訪ねてくる場所、とは、
こういう最後の関門では、答えにくいですね。
「うん、だから、さめざめと
『もの書きだった父が‥‥猫が好きで‥‥
だから、猫屋台‥‥ううう(泣)‥‥』
と答えようと思ってた」
アプローチのじゃり(ねこのフン畑)は
歩きにくいので片側に寄せ、
メインの道は
コンクリートで固めることになりました。
そこに、猫屋台最後の
かわいい装飾をほどこした者がいました。
いったい誰だったと思いますか?
それは、ハルノさんがお世話をしている、猫たちでした。
アプローチのじゃり道の横が
「コンクリート塗りたて」だったそのとき、
工事を我慢強く待ったみんなが
そこを歩いてくれたのです。
まるで、猫屋台の完成を
お祝いしてくれるように。
こんなふうに、猫屋台は
花びらが舞うようなかわいい足あとのついた道が
お客さまを迎えてくれるお店にしあがりました。
そして、12月。
猫屋台はオープンの日を迎えることになりました。
(つづきます)
2014-10-08-WED