原田 | うちのプロモーションを担当する部っていうのは よく最初にお皿を買ってきちゃうんです。 |
糸井 | お皿? |
原田 | えぇ、イベントをやるときに、 まずイベント会場を押さえるんです。 |
糸井 | なるほど、お皿が先(笑)。 |
原田 | そのあとでそのお皿に載せる料理を考える。 極端な話ですが、イベント会場を先に押さえて どんなイベント内容にするか 直前になって考えるんです。 それ、とんでもないことですよ。 |
糸井 | うんうん。 |
原田 | 「まず、料理作れよ」ってよく言いますよ。 以前、糸井さんに来ていただいたイベントのときも お皿用意しているのに 料理をなかなか作らないから 私が最後の最後で料理を作ったんですよ。 前日の晩に「おい、お前はこれを話せ」って。 |
糸井 | さきほども話していた、監督でいたいのに プレイヤーになっちゃうわけですね。 |
原田 | そうですそうです。 いいお皿は用意できてるのに 料理がなかなか伴わない。 コンピュータで言うと ハードウェアばかり高性能で ソフトウェアがまったくない、 そういう状況なんです。 |
糸井 | ソフトウェアがない、っていうことは そのイベントなんかを通じて よろこんだり笑ったりする人の顔が 見えてないんじゃないですかね? |
原田 | うん、まさにそうですね。 さっき話していた 言葉がうまい、話がうまいっていうのは ハードウェアの性能なんですよ。 中身が伴っていない。 |
糸井 | 原田さんが、 人の根底にあるようなソフトウェアの部分に そこまで興味を持つっていうのは、 社長としての使命感みたいなものなんですか? |
原田 | よく訊かれるんですけど、 それがね、わからないんですよ。 |
糸井 | なんかね、 おもしろがっているような気がするんですよ。 前に誰かと話しているときに聞いたんですけど、 プログラマーの人たちが見るような掲示板に 解決しにくい問題を投げかけると みんなが「俺が! 俺が!」って手を挙げて 「こうすればいいんだよ」って 言ってくるらしいんです。 |
原田 | ふふふ、それ、おもしろいですね。 |
糸井 | もうね、その手の人たちは 「解決できること」自体に 興味や関心を持っているんですって。 |
原田 | そう言われてみると 僕にもその傾向はありますね。 「エンジニア魂」みたいなものなのかもしれません。 |
糸井 | ですよね。 問題解決にアイデアを駆使して挑むその姿勢は まさにそれだと思います。 |
原田 | エンジニアっていうのは 若いころから理不尽な仕事をさせられるんです。 とにかくコストが理不尽、スケジュールが理不尽、 そのうえで「とんでもないもの作れ」 って言われますからね。 |
糸井 | なるほど。 |
原田 | 最初は「できない!」って思うんですよ。 でも自分もエンジニアの端くれですから そんなすぐにさじを投げるわけにもいかない。 するとある日、すべてが解決できるような アイデアが閃くんです。 それこそ 「なんでこんなこと思いつかなかったんだ!」 っていうようなアイデアなんですよ。 |
糸井 | それはジョギング中(笑)? |
原田 | いやいや(笑)。 で、その理不尽な仕事を片づけると また次の理不尽な仕事がやってくる。 それをドンドン繰り返していくんです。 このブレイクスルーに快感を覚えていくのが エンジニアなんじゃないですかね。 だから、私は社員に 「非常識を常識にするのがビジネスだ」 っていつも言ってるんです。 それもそういうエンジニア時代に培ったものから 生まれてきている意識ですね。 |
糸井 | この対談のあいだ、どんな話でも 「原田さん、エンジニアだからね」で 片づけられそうな気がしてきた(笑)。 (つづきます) |