大橋歩さんが始められた洋服のブランド
「a.」から、
「ほぼ日」用のデザインを
販売させていただくことになりました。
大橋 どうもありがとうございます。
糸井 こちらこそありがとうございます。
おめでとうございます(拍手)。
大橋 「a.」は、この夏でちょうど
1年になるんですけれど、
これでいいのかなみたいな、
迷いがまだちょっとありつつ、
つくっているんです。
糸井 大橋さんが「a.」を始められる直前に、
ちらっとそのお話を聞いていたんですよね。
大橋さんは「a.」の発想のもとを、
自分が着るためであるとか、
50歳ぐらいから上の人の服がないんです、
とおっしゃった。
けれど、こうしてできあがったものを見てみたら、
「年齢関係ないじゃない?」
ってぼくには見えたんですよ。
大橋 あら、そうでしたか(笑)。
糸井 「これは若い子だって、ほしがるぞ」って。
だから「ほぼ日」との組み合わせが
あるんじゃないかなって。
そして案の定で、今回、
つくっていただいた服は、
社内ですでに、わー、きゃー、
言われてますよ。
大橋 あら(にこにこ)。
根本は、ベーシックなもの、
基本的にはふつうのものが
いいかなと思ってつくっています。
そうすると、いろんなバリエーションで、
組み合わせができますよね。
「a.」で組み合わせるだけじゃなく
ご自分の服との組み合わせもできる。
そういうことで、
考えさせてもらったんです。
わたし的には結構楽しかったです。
Tシャツがあってスカートがあって
ジャケットがあって、という枠の中で
どうやって組み合わせればいいのかを考えるのが、
とても楽しい。
糸井 はい、大橋さん、楽しそうです。
大橋 洋服って結構、単独というよりは、
これをどうやって着ようっていう
楽しみがありますよね。
糸井 自分の持ってるものとのかけ算ですよね。
そして現物を見ると、また‥‥いいなあ!
大橋 すごいふつうっぽいですけれども。
糸井 ぼくらもよく使う言葉なんですけど、
その「ふつう」がね、
「ふつうの服って、ないでしょ」って。
大橋 そうなんですよ!
糸井 「ふつう」って、実はものすごく難しい。
ふつうのご飯っていうのも難しいし、
ふつうの服も難しいし、
ふつうの気持ちよさも難しいし。
実は「ふつう」って、なくって。
大橋 うん、うん、うん。
糸井 長く仕事をしてきた人は
ずーっと、それとの会話を
してきたような気がするんですね。
「ふつうってなんだろう」と。
大橋 はい。
田中 みんな、それぞれに違いますしね、
「ふつう」の意味合いが。
糸井 ですよね。
全部合わせて、ガラガラって混ぜて、
真ん中あたりをすくっても、
「ふつう」にならない。
田中 そうなんですよね。
大橋 うん、うん、うん。
田中 わたしも、大橋さんが、
「a.」の服を作られたときに見せていただいて、
対象年齢は50代以上なのよって
すごくおっしゃるんですけど、
でもね、最初っから言わない方がいいって
すごく思っていました。
たぶん、わたしだったら、
30代でも着たと思うんですよ。
糸井 うんうんうん。
大橋 うん、うん。
田中 今、もうほんとにお洋服っていっぱいあるし、
情報もいっぱいある。
みんなそれぞれに
「ふつうって何だろうな」
と思って、買い物に行く。
でも、どの服も何か
「自分の“ふつう”じゃないな」
と思ってる人っているような気がして。
そこの部分では年代を超えてね、
「a.」のお客さんが、
いるような気がするんです。
糸井 田中さんの思ったことは
ぼくも全く思っていました。
でもね、始めた人(大橋さん)が
50代以上の、とおっしゃるんだったら
そのことは大事に考えたいなとも。
田中 そうなんですよ(笑)。
ほんとうに、そう!
大橋 あら(笑)。
田中 大橋さん、そこのところはやっぱり、
大事に考えたんですよね、きっとね。
大橋 はい。
あのね、今、ほら、若い人の服って
すごくいっぱいあるじゃないですか。
糸井 うんうん。
田中 はい。
大橋 値段的にも、とても手が出しやすい、
買いやすい値段のものが
もうほんとにいっぱいあって、
それぞれがいろんな好きな服を、
コーディネートもして。
たとえわたしが「えっ」て思うような
コーディネートになってても、
それは今の時代、これでいいんだろうなと。
糸井 うん、うん。
大橋 だからもうそういう人たちの服は
わたしが考えなくてもいいんじゃないか、
っていうことも、ありますし、
そもそもね、
年齢が上の人のものってないんですよ。
デパートに行っても、
こんなものなの? っていうような服なんです。
田中 確かに。
糸井 それはどういうことですか。
おばおばファッションですか?
おばおば(笑)。
糸井 (笑)。
大橋 「私、こういうくくりされるの嫌だ」って、
たぶん、年齢が高い人たちは皆さん、
そうおっしゃると思うんです。
一般的に年齢が上になると、
みんな、ひとからげで、
「おばさん」とか「ばばあ」とか
言われるじゃないですか。
そういう服なんです。
糸井 おばおばファッションですね、やっぱり。
大橋 それはいくら何でも悲しいじゃないですか。
糸井 うんうんうん。
大橋 だったら、私もがんばって、
何かそういう服を作れればいいなって、
そんなに経験もないのに始めたんです。
最初は、すぽーんと着られて、
体型を気にしないで、
楽にいられるようなものをと、
それがまず初めだったんですね。
ほら、50代以上になると、
おなかまわりの問題とか(笑)。
田中 (笑)。
大橋 そういう服を作ってみたら、
やっぱりそれぐらいの
年齢の方がお店に来てくださって。
だから皆さん、探してはいらっしゃると思う。
おばおばファッションには
どうしてもみんな、行きたくない。
糸井 着たくない。うん。
大橋 だったらこれをもうちょっとちゃんと重ねていって、
「ほんとによかったわ」っていうところまで
一所懸命にやり続けることができたらいいなと
今は思ってます。
(つづきます)