田中 服ってね、たとえば
シンプルなものから
スタートしたメーカーでも、
だんだん、デコデコしてきますよね。
たとえ作り手が
シンプルなものをいいと思っていても
シンプルなものを作り続けるのって
大変なんだなぁって。
大橋 ああ、なるほどね。
田中 売れても、次に同じものはつくれないぞと、
何かちょっと足したりとか、して。
でもシンプルなものが好きで
着ている側からすると、
究極にシンプルなもの、
ほんとに子どもが描く絵のような、
基本の形でシルエットや縫製のきれいなものがほしい。
けれど、なかなか
見つからないところがあるんですよね。
糸井 見つからないですよねー。
田中 そういうときに、大橋さんの作られるものって、
すごくシンプル。
シンプルなんですけど、
じつは、結構ボトムスは面白いですよね。
遊びがあります(笑)。
糸井 面白い。ああ、なるほど、なるほど。
これはスケッチの段階で想像してるわけですね。
大橋さん、イラストレーションが
現物に化けたんだ。
大橋さんそのものですね。
田中 そう(笑)!
大橋 あ、そうですか?
糸井 大橋さんが向こうから
歩いてくる感じがしますよ。
大橋 そうですか(笑)。
田中 遊びがあって。でもかわいいんです。
これ、これ(サルエリパンツ)、
おかしいでしょ(笑)。
でも着るとすっごいかわいい。
大橋 はい、着ると案外全然大丈夫なんですよ。
田中 あと、このスカートだって
フリルのかたちとかが、
シンプルなんだけど‥‥、
やっぱりどこかね、遊びがあります。
このへんはやっぱり大橋さんが
たくさん着てらしたから、
わかるんだろうなって思うんですけど。
糸井 編集者はそういうふうには
ならないものですか?
田中さん、服、いっぱい
見てきたじゃないですか。
田中 わたしはリビングの仕事が多かったので‥‥
大橋 わたし、雑誌社の編集のかたと、
仕事でお会いすることが多かったでしょ。
けれど、ファッション雑誌の人でさえ
おしゃれな人はほんとに少ないんですよ。
たまたま担当していただいたなかで、
おしゃれと言えるのは、
田中真理子さんと、
もうひとかた、2人です。
糸井 はぁー!
そっかー。
大橋 田中さんはリビングのかただけれど、
はっきり言えば、リビングのことよりも
おしゃれのことでの話の方が合う。
田中 そうですかね。
大橋 そうなの。
おしゃれがすごくお好きだけれど、
逆にそれを仕事となさらなかったところが
またよかったのかも。
田中 あ、それはそうだったかもしれないですね。
糸井 そうか。
大橋 『LEE』ってわりとコンサバっていうか、
わりとかたちが決まっている服なんですよね。
ファッションとはちょっと違う、
モードとも全然違って。
それでね、たとえば
『LEE』の編集者のかたが
突然他のモード系の雑誌に異動なさると、
えっ、この人が、あの人が、っていうぐらい
モード系になってらっしゃることがあるんですよ。
糸井 いや、そうでしょうね。
大橋 田中さんにはそれがないんです。
もともとご自分のそのスタイルみたいなのとか、
好きなものがあって、しかも、
モードというかファッションの編集を
なさらなかったから、
ずっとご自分の好きなものを着ることができた。
だからわたしも、おしゃれの話を
すごくしやすかった。
きっと田中さんは覚めた目で
『LEE』の世代の人たちの着るものを
見てらっしゃった。お仕事として。
田中 そんなことないです(笑)。
糸井 照れてますね。
仕事になっちゃうとやっぱり
今のトレンドは何だとかって
意識するのがふつうになっちゃいますもんね。
大橋 そう、そうなんですよ。
田中 ああ。
糸井 それをしなくて済んだんですね。
大橋 それはすごくいいことだと思う。
田中 でも、ファッションの専門の人たちは
すごいですよ。
着て、そこに投資をするっていうか。
糸井 惚れなきゃだめですもんね。やっぱりね。
田中 そうなんです、そうなんですよ。
だから、毎シーズン、惚れて、
また次のシーズンが来て、
っていうのを繰り返す。
やっぱりファッションに対する
エネルギーっていうかね、
糸井 その流れに流されることも
仕事ですよね、きっとね。
田中 もちろんそうです。
大橋 そっか、なるほど。
糸井 で、田中さんは流される場所には
いなかったんだね。
田中 いくらか流されてるかもしれないですけどね。
大橋 いや、流されてないですよ。
田中 (笑)。
糸井 今日、昼間、篠山紀信さんがテレビに出てて、
自分の仕事を振り返って
いろいろしゃべってたんだけど、
あの人は流されるどころか、
サーフィンしてるみたいに、
何がはやってるっつったら
そこに行くんです。
今だったら AKB48、
大相撲っつったら大相撲。
いちばんはやってるところに
ぱーんと飛び込んでって、
それはおれが撮るんだーって言って
撮ってるわけですよ。
それはそれで、もーのすごい!
田中 すばらしいですね。
大橋 すごい。なるほど。
糸井 で、それに飲まれないで、
帰ってくるわけじゃないですか。
で、ファッションにもそういうところが
たぶんあるんだろうなと思うんですね。
特に男のほうがころっと変わりますよね。
ファッション雑誌の編集の男の子って
ファッションをあんまり意識しないで来た子が
ポンと入ったりする。
やっぱ苦しいと思いますよ。
勉強しちゃうから。
大橋 うん、うん、うん。
そっか。
糸井 女の人の方が自分があるから、もともと。
大橋 でも女の人も結構、
近いことありますよ。
田中 うん。ただやっぱりそれは
やってみたほうがね、
いいことだというような気はするんですよね。
周りから見たら痛々しかったりとか
するかもしれないですけど。
糸井 うん。
田中 何かやっぱそれはそれで
すごいエネルギーだなあと思う。
糸井 それはそこの川で商売してんだもんね。
田中 はい、うん。
(つづきます)