ほぼ日 |
この「Campus」シリーズって、
世のなかのノートのなかでも「定番」として
定着していると思うのですが‥‥。 |
村上 |
ええ、そう認知していただけるのは、
とてもうれしいことです。 |
ほぼ日 |
昨年、「ほぼ日」でやった「社会人アンケート」の
「製品・サービスに好感が持てる企業」ランキングで
コクヨさんは第3位だったんですけど、
その原動力のひとつは「Campus」だと思うんです。 |
村上 |
そうかもしれませんね。 |
ほぼ日 |
もう30年以上、
こうして売れ続けてる理由が何なのかについて、
開発側のみなさんは
どのように、分析されてるんでしょうか? |
村上 |
うーん、じつは‥‥よくわからないんです。 |
ほぼ日 |
え、わからない‥‥んですか? |
村上 |
もちろん、理由を挙げようとすれば、
いくつかは挙げられるんですけどね。 |
ほぼ日 |
たとえば‥‥。 |
村上 |
まず、日本全国どこでも売っているということ。
|
ほぼ日 |
なるほど。買えないということが、ない。 |
村上 |
お近くの本屋さん、文房具屋さん、
コンビニなどにいけば、
かならず、置いてあると思います。 |
ほぼ日 |
ノートって、同じものでそろえたい気がするし、
「探すのに苦労しない」っていうのは、
「また次も買う」ことの動機になりそうですね。 |
村上 |
でも、どこにでも売ってるノートって、
きっと他にもあると思うんですよ。 |
ほぼ日 |
ああー‥‥それは、そうか。そうですよね。
「Campus」ほど
ブランドとして有名じゃなかったとしても。 |
村上 |
だから、その‥‥これを言ってしまったら
当たり前すぎて
おもしろみのない答えかもしれませんが、
「Campus」の場合は
専用紙をオリジナルで作っているんですね。
つまり、品質がいいとは、確実に言えます。 |
ほぼ日 |
なるほど。 |
村上 |
使っていた紙が手に入れづらくなったり、
ちょっと仕様が変わったり、
生産中止になっちゃったりしませんので、
一定レベルの品質のノートを
安定して、出すことができているんです。
ささいなことかもしれませんが、
そうした点は、ひとつの強みかもしれません。 |
ほぼ日 |
どこでも売ってて、品質が変わらない。 |
村上 |
ええ。 |
ほぼ日 |
オリジナルの紙を作ってるということは、
つまり、「書きごこち」を
追求されてるわけですよね、主に。 |
村上 |
はい、ザラザラした紙のほうが好みだとか、
つるつるしているのが書きやすいだとか、
個人差はあるんですけども、
たとえば
ザラザラならザラザラで、
心地いいザラザラはどのへんかなどを
サンプルをとって、地道に算出してるんです。 |
ほぼ日 |
はー‥‥。ザラザラの算出。 |
村上 |
或いは、各メーカーさんのペンで試してみて、
書きごこちを調整したり、
「裏うつり」しないかどうかを検証したり、
紙の開発については、
もう、ありとあらゆる取り組みをしています。
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ほぼ日 |
はー‥‥「書きごこち」って、
実際は微妙な差なのかもしれないですけど、
そこが「次も選ぶかどうか」の
大きな分かれ目になってる‥‥んでしょうね。
そこまで、徹底的に研究しているんなら。 |
村上 |
いま出ている「Campus」に
「MIO PAPER(ミオペーパー)」という
高級なシリーズがあるんですが、
これを開発しているとき、
スタッフが、
「いつまでも書いてたいー!」って(笑)。 |
ほぼ日 |
サラサラで? |
村上 |
「受験生時代にこのノートがあったら
もっと勉強したのにー!」と。 |
ほぼ日 |
やっぱりノートしだいで「変わる」ことって、
いろいろと、あるんでしょうね。 |
村上 |
たぶん「勉強」は、その中のひとつだと思います。 |
ほぼ日 |
あの、あらためてなんですけど、
「Campus」 という、ちゃんとした‥‥といいますか、
固有名が付いてたことも、やっぱり重要ですよね。
たんなる「NOTEBOOK」じゃなくて。 |
村上 |
そうそう、かなり流通しているノートでも
表紙に「NOTEBOOK」としか書いてないものが
じつは、けっこうありますからね。 |
ほぼ日 |
いまさらですが、何で「Campus」と? |
村上 |
1代めの「Campus」が誕生する前ですから
1970年代初頭でしょうか、
コクヨから出していたノートで、
当時の学生たちに、
大きな支持を得たノートが、あったんです。
世界の学府シリーズというんですが。
意匠っぽいデザインの世界の学府シリーズ。
表紙には「CAMPUS」の文字も。 |
ほぼ日 |
ほう。 |
村上 |
UCLAなど、世界の有名大学のキャンパス風景を
表紙の写真に使ったりして、
おもに、受験生に支持されていたらしいんです。
で、このノートがヒットしたおかげで、
シリーズとしての「Campus」が、生まれたんですよ。 |
ほぼ日 |
なるほど、その「大学のキャンパス風景」から
「Campus」につながっていくんですね。
でも、「Campus」が生まれる前までの
世のなかのノートのデザインって‥‥。 |
村上 |
たぶん、無地だったり、
地味な布地の柄を複写したシンプルなものか、
あるいは「世界の学府」みたいな、
意匠っぽいものが多かったと思います。 |
ほぼ日 |
ということは、ノートの「見ため」の分野も
「Campus」の登場から
けっこう、変わってきているんですかね? |
村上 |
もしかすると、そうかもしれません。 |
ほぼ日 |
ははぁ‥‥なるほど、なるほど。
でも、売れてる理由が
ほんとにはわからないって、すごいなぁ。
そこが解明されて言語化されちゃうと、
公式になっちゃって
結局ダメになっちゃうのかも‥‥とか? |
村上 |
わからないながら、わかりたいと思って
試行錯誤をくりかえしてきたのが
結果として、よかったのかもしれません。 |
ほぼ日 |
その積み重ねで、20億冊ですか。 |
村上 |
ええ、大阪・バンクーバー間です(笑)。
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ほぼ日 |
今後も、試行錯誤を? |
村上 |
はい、もちろんです。 |
ほぼ日 |
おお、それは楽しみです! |
村上 |
‥‥ちなみにみなさん、ノートを使うときって、
ここの、いちばん最初のページから書きます? |
ほぼ日 |
え? はあ‥‥たぶん。
ていうか‥‥書かないんですか、みんな? |
村上 |
書かない。 |
ほぼ日 |
リサーチの結果? |
村上 |
ええ、「はじめの1枚をめくった右ページ」から、
つまり「3ページめ」から書く人が多いんです。
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ほぼ日 |
へぇー、それは、なんでだろう?
気持ちはわかる‥‥ような気もしますが。 |
村上 |
理由はよくわかんないんですけどね。 |
ほぼ日 |
お話を聞いていると、ノートって奥深いというか、
いろいろナゾが多いんですね(笑)。 |
村上 |
うん、ですから、おもしろいんです。
ノートって。 |
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<つづきます>
※村上智子さんにおうかがいした「Campus」ノートのお話は
今回で終了いたします。
次回からは、コクヨの文具を開発し続ける名物社員、
田中茂一さんに、ご登場いただきます。
ひきつづき、どうぞ、お楽しみに! |