パトリック |
最近、少しずつですけど、
『TED』や『TEDx』のやり方に興味がある方から
会社や事業のコンサルティングを
頼まれることが増えてきていて、
明日もいろんな会社の社長さんとか
大使の方などが集まる場所で、
そういった話をする予定があるんです。
それで、何を話そうかなって考えてたんですけど、
会社に「TED」のような場をつくって
みんなのアイデアが、
自由に生まれて広がるようになったら
すごく面白くなるんじゃないかなって。
明日はそんな話をしようかなと思っているんですが。
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糸井 |
ああ、いいですね。
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パトリック |
そして、その話の最後に話そうと決めているのが
「IREE」ということなんですね。
この「IREE」というのは、
これからの会社やこれからの生き方において、
さまざまな場面で問いかけるとよさそうな
4つの質問の頭文字をとったものなんですけれど。
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糸井 |
はい。
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パトリック |
1つめが「それはおもしろいか」
(Is it Interesting?)
2つめが「それは意味を成しているか」
(Is it Relevant?)
3つめが「夢中になれるか」
(Is it Engaging?)
とか「夢中になっている人はいるか」
(Is the person Engaged in it?)
4つめが「人々がエンパワーされているか」
(And are the people Empowered?)
(※「エンパワーされている」
直訳は「力を与える、元気にさせる」ですが、
この問いかけの場面だと、
「何かをやろうとする人々にとって、
それをやれるだけの環境がととのっているか」
というようなことで、具体的には、
「やってもいいだけの権限があるか」
「自由にやれるか」といったこと)
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糸井 |
はーー、なるほど。
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パトリック |
私はこの4つが満たされていることが、
21世紀型の人々の姿勢であり、
21世紀的なものの考え方であり、
21世紀の人々のつながり方だと思っていて。
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糸井 |
「おもしろいか」「意味を成してるか」
「夢中になれるか」「エンパワーされてるか」
いいですね、ほんとうに。
パトリックさんが、ご自身で、
この4つのことばにたどり着いたんですか?
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パトリック |
ええ。
たとえば会社の一つ一つの仕事も、
この4つの観点から見ればいいんだと思うんです。
「そのプロジェクトはおもしろい?」
「そのプロジェクトは意味を成してる?」
「そのプロジェクトは夢中になれる?」
「そのプロジェクトの環境はととのっている?」
とかって。
また、社長もみんなに聞けばいいんですよね。
「あなたの仕事のどこがおもしろい?」
「君の仕事はどのあたりに意味がある?」
‥‥とかって。
たとえば「意味があるか」ということでいえば、
今の学校で教えていることの8割は意味がないです。
もちろん、実際に生徒たちがそこで作り上げる
人間関係のことなどはさておいて、ですが。
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糸井 |
うん。
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パトリック |
教えている内容はおもしろくもないし。
学んでいる生徒たち自身と関係がないし。
自分自身と関係がないことばかりだから
生徒たちは興味もない。まったく夢中になれない。
先生から生徒への質問もあまりないし、
生徒が自分で選べるなにかもあまりない。
そんなふうに、今のふつうの学校は、
まだ古い時代の教育システムのままです。
だから、私はその現状を少しずつでも、
21世紀の教育システムに変えていきたいんですね。
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糸井 |
はい。
あの‥‥パトリックさんがまだ日本にいなかった
時期のことなんだけど、
ぼくが高校生のときに、日本で
エレクトリックギターの大流行があってね。
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パトリック |
はい。
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糸井 |
で、当時、音楽の時間っていうのは、
基本的に退屈なものだったんです。
おもしろいとはいえないような歌をみんなで歌って、
先生がオルガンで伴奏をして、っていう。
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パトリック |
ええ。
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糸井 |
ところが、そこに、エレキギターが登場したんです。
要するにビートルズが出たあたりの頃で。
そして、エレキギターが流行ったら、
音楽の時間をサボってた不良とか、悪い子たちが、
モテようとして、みんなエレキギターを買って。
みんな我慢して練習して、
楽譜とか読めないのにどんどん弾いていって。
で、サッカーとかと同じように大会があって、
そいつらが優勝したりもして。
『勝ち抜きエレキ合戦』というテレビ番組もあったし。
全然勉強のできない友達が、
急にギターの弾き方を教えてくれるやつになったりしてね。
で、そいつにはまたお兄ちゃんがいるから、
お兄ちゃんがどっかでまた習ってきて上達したりとか。
‥‥で、そういう中から
後々のスターが出てきたりしたんですね。
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パトリック |
はい。
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糸井 |
あの体験って、みんなにとっての、
最高の「学び」だったんですよね。
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パトリック |
ああー。
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糸井 |
そう、だから、そのときの、
知的な好奇心のエレキギターみたいなものが
これからのみんなの「学び」だったら。
そんなふうに思うんです。
パトリックさんが関わられている
「TED」や「TEDxTokyo」とかもそうですよね。
エレキギターのように、みんながおもしろがって、
そして、高尚なものに思われていた「学問」なんかが
一般的な普通の人たちの、生活の中に練り込まれていったら。
それが、これからの時代の「学び」の形だと思うんです。
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パトリック |
ええ。
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糸井 |
やっぱりものを覚えたり、
興味をもってトレーニングしていくっていうのは、
楽しければ、どんどん進むので。
たぶん知的好奇心だとか、学問だとか、
哲学だとかっていうものも、
そうやって街から生まれるものっていうのが
ぼくは本物だと思っている。
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パトリック |
はい。
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糸井 |
今日、パトリックさんに会うときに
どんな話をしようかなって
ぼんやり考えていたんですけど、
あ、これが伝えられたらいいなって思ったのが、
まさに、この話だったんです。
つまり、ぼくは、
「みんなが大学に行ける社会」が
それだけでいい社会だとは思わない。
それよりも
「大学や学びが街や暮らしのなかに
ばらまかれている社会、
練り込まれている社会」がいい社会だと思う。
そういう話ができたらいいなって思ってたんです。
ほんとに、そういう話が、最後の最後で、
できましたけど(笑)。
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パトリック |
ふふふ。
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糸井 |
それは、さっきパトリックさんが言った
4つのことばと同じ考えだと思いますよ。
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パトリック |
はい。
‥‥今日は本当に
よい時間をありがとうございました。
会えてうれしかったです。
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糸井 |
こちらこそ。
きてくださってありがとうございました。
言葉がね、ぼくがもっと上手にできるとね、
もっといろいろできるんですけどね(笑)。
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パトリック |
(笑)
...next time English!(次回は英語で!)
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糸井 |
(笑) |
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(パトリック・ニューウェルさんとの対談は
今回で終わりです。
お読みいただき、ありがとうございました) |