そうやって、せっかく入った進学校を、
ほとんど通わずに中退することになる
山邊くんなのですが、
その前に、時計の針をすこし戻します。
はじめて知ったのですが、
山邊くんは、
中学のときに美術部に所属していて、
かつ画塾にも通っていたそうです。
そこでお世話になった先生が、
美術部のF先生と、画塾のO先生。
ふたりの先生は「先輩後輩」の間柄。
話を聞くと、
教育者であるF先生には、
写実的な絵の方法論を教え込まれ、
芸術家であるO先生には、
かたにはまらない芸術の自由さや、
その尊さを教わったようです。
印象的なエピソードを、ひとつ。
「あるときに、
F先生の先輩であるO先生が
いまFはどうしてる?って、
聞いてきたんですよね。
風景画を教わっていたので
風景画を教わっていますと答えたら、
じゃあ、みんな画板持って、
外へ出て写生してるのか、大変だな」
って。
ええ。
「でも、F先生のやりかたは、
まずは、風景をうまく写真に撮って、
それを画用紙の大きさにまで
拡大コピーして、
それをトレースして色を塗るんです。
そうやって写実的な絵の基礎を
教えてくれていたので、
そのことを言ったんです、何気なく」
うん。
「そしたら、
O先生が、ワナワナと震え出して‥‥
奥さんに向かって、
おい、いますぐFの野郎に電話して
そんなつまらんことを
子どもにさせるなって言え!と‥‥」
ほとんど通わずに中退することになる
山邊くんなのですが、
その前に、時計の針をすこし戻します。
はじめて知ったのですが、
山邊くんは、
中学のときに美術部に所属していて、
かつ画塾にも通っていたそうです。
そこでお世話になった先生が、
美術部のF先生と、画塾のO先生。
ふたりの先生は「先輩後輩」の間柄。
話を聞くと、
教育者であるF先生には、
写実的な絵の方法論を教え込まれ、
芸術家であるO先生には、
かたにはまらない芸術の自由さや、
その尊さを教わったようです。
印象的なエピソードを、ひとつ。
「あるときに、
F先生の先輩であるO先生が
いまFはどうしてる?って、
聞いてきたんですよね。
風景画を教わっていたので
風景画を教わっていますと答えたら、
じゃあ、みんな画板持って、
外へ出て写生してるのか、大変だな」
って。
ええ。
「でも、F先生のやりかたは、
まずは、風景をうまく写真に撮って、
それを画用紙の大きさにまで
拡大コピーして、
それをトレースして色を塗るんです。
そうやって写実的な絵の基礎を
教えてくれていたので、
そのことを言ったんです、何気なく」
うん。
「そしたら、
O先生が、ワナワナと震え出して‥‥
奥さんに向かって、
おい、いますぐFの野郎に電話して
そんなつまらんことを
子どもにさせるなって言え!と‥‥」