HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN

編んで着て(ときどき)うろちょろするわたし

ニットデザイナー・三國万里子さんが
日々のあれこれを写真と文章でお届けします。
編みものの話はもちろん、洋服のことや
街で見かけた気になるものなど、テーマはさまざま。
三國さんの目を通して世界をのぞくと、
なんでもないことにたのしさを見いだせたり、
ものづくりへの意欲を呼び起こせたりする‥‥かも?
期間限定、毎週火曜と金曜に更新予定です。

三國万里子さんのプロフィール

2018-12-25

今日はうろちょろ。
妹の家に遊びに行ってきました。

妹は料理家で、
なかしましほといいます。
ほぼ日ではおやつの本を出していたり、
おやつミックス」という
ホットケーキやドーナツなどが作れる
ミックス粉を開発しています。
おやつ作りにからきし能のない姉も、
妹のレシピやミックス粉を使うと
自分でも上出来と感動するくらい
おいしくできるので、
わたしのような
「おやつぶきっちょ」な方たちにこそ、
おすすめです。

その妹なのですが、
一年前に東京から鎌倉に引っ越しました。
何かメールでやり取りしたり、という折には
遊びにおいでよと誘ってくれるし、
もちろん行くさ、と答えてはいたのですが、
いつでもいけると高を括っているうちに時が過ぎ、
ようやく年の暮れに訪問の予定が立ちました。

それで、今朝です。
江ノ電の小さな駅で降り、
妹に指定された場所で待っていると、
こけしのような頭をした女性が乗ったVOLVOが
海街の薄い靄をかき分けて、
こちらに近づいてきます。
ああ、あれは。
なんだかかっこいい登場ですが、
見間違えようもなく、
自分と同じ遺伝子を受け継いだ生き物の
オーラを運転席から発しています。

VOLVOはやはり
わたしの前でキュキュッと止まりました。
おはよう、しーちゃん。
迎えにきてくれてありがとう。
ドアを開けながら妹は、開口一番
「おねさん、おはよう。
そこの角の餅菓子屋に寄って行ってもいい?」
といいます。
妹はお菓子作りを仕事にしている上に、
人の作るお菓子を買って食べることが大好きなのです。
もちろんいいに決まってるので、
道沿いの古びた老舗の和菓子屋に寄って
目当てにしていたらしい
あんこ菓子をひと折り買い、
しかるのち一路、
妹の住む家に向かいました。

あとは大体、写真でおわかりいただけますね。
妹の家は相模湾を見下ろす山の中に建っていて、
斜面を生かした野生的な庭が
その下に広がっています。
竹にヤシの木に夏みかんといった、
妹自身も把握しきれないくらい
たくさんの種類の木が
以前の住人によって植えられていて、
その中を通る散策路の途中に
ハンモックが吊るしてあります。
ここに乗ってゆらゆらと
空を見上げていると、
樹上をリスや鳥が駆け巡っていくのだそうです。

この庭を登ったところにあるリビングで
お昼ご飯をいただきました。
前菜のお皿の右端にある、
オレンジ色の丸いのにご注目。
これはくるみを干し柿で巻いた
韓国のお菓子だそうで、
「ここにブリーチーズを乗せて食べると
おいしいんだよ」と、妹。
そのアドバイスに従っていただくと、
甘くてしょっぱくて濃厚で、
とてもワインの進む味でしたよ。
パスタは鎌倉名産の
しらすとバジルのスパゲティー。
妹の夫、グラフィックデザイナーの
中島基文君が作ってくれました。
これも海と山、両方の香りがして、
しみじみとおいしかった。

妹夫婦は暮れに新潟に帰省しないというので、
今年はこれが、二人の顔の見納め。
たくさんおしゃべりもできたし、
会いに行って本当に、よかったです。