富澤先生 |
右上がり六度に書くことが肝心、
と申し上げましたが、
「右下重心法」も、たいせつなルールです。
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ナカバヤシ |
第2のルールですね。
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西田 |
文字の右下に重心をかける。
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富澤先生 |
そうです。
「円」という字でもう一度ご説明しましょう。
こういう字を(書く)、
こうやって右上がり六度だけで、一辺倒で、
右下に重心をおかないで書くと、
こんなふうに(からだを傾ける)なってしまう。
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ナカバヤシ |
(笑)
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西田 |
第1ルールだけだと、そうなってしまう。
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富澤先生 |
ですから、ここ(右サイドの縦画)をですね、
ぐーっと下までもってくればいいんです。
右下にひっぱる、第2ルールです。
この第2ルールを覚えますとですね、
自分の字が、ガラッと変わりますね。
というのは、第2ルールが適応する漢字は
全体の7割なんです。
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ナカバヤシ |
ほおーー。
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西田 |
7割の漢字が‥‥
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富澤先生 |
そう。右下重心を求めている。
じゃあ残りの3割はどういう字かというと‥‥
こう、中央にくるような、こんな字です。
(漢字の「十」を書く)
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ナカバヤシ |
ああー、はいはいはい。
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富澤先生 |
それから、このような字ですね。
(漢字の「夕」を書く)
左はらいで、右下にいかないですから。
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ナカバヤシ |
なるほど。
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富澤先生 |
それから、こんな具合にですね、
最終画が横画で終わる字ですね。
(漢字の「五」を書く)
これもですね、六度強でしたら、
上げたままでも目障りではないんです。
そして、単体で使うことはありませんから。
語で使い、句で使い、センテンスで使います。
たとえば「五人」と書けば、
「人」の字の最後を右下に引っぱれば、
「五人」ということばが、
まとまりとして安定するわけです。
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西田 |
へええーーー。
※このあたりの授業をYouTubeでどうぞ!
わかりやすいです。
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富澤先生 |
たとえば、「必要」の「必」という字は、
形が取りにくい字の代表ですけれども。
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西田 |
ああー、「必」は書けない。
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富澤先生 |
これもやはり右上がり六度で、
こう(書く)‥‥こう‥‥いきまして、
点の位置も右上がり六度の位置で書き出します。
右上がり六度線があると思いながら、
最後に右下をしっかり‥‥引いておく。
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ふたり |
おおーー。
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ナカバヤシ |
きれい。
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西田 |
右下を下げるのは、
全体が右上がりなのを中和させるために、
ぐっと抑え込むようなイメージなんですね。
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富澤先生 |
そうです。
「やや右に上げると字がきれいになる」
ということは小学校のとき先生に聞いたりして
ご存じのかたもいらっしゃるんですよ。
でも、右下重心は誰も指摘しませんでした。
これがあることで、ぐっと安定します。
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西田 |
ええ、ぜんぜん違いますね。
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富澤先生 |
そんな「右下重心」には、
いくつか種類があります。
順に申しますと、
まずは先ほどの「内」のように、
右サイドの縦画を引っぱるタイプ。
「打」とか「引」もそうです。
そして、「右はらい」を引っぱるもの。
さっきの「人」や「天」などがそれです。
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西田 |
「右はらい」。
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富澤先生 |
それから、化学の「化」のように、
曲がりから右側に張り出すタイプ。
十分に張り出すことによって、
重心を右下にかける効果があります。
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富澤先生 |
その右に書きました、「代」という字。
これは「反り(そり)」と呼ばれる点画です。
これをしっかりと右下に引く。
「式」や「成」などが「反り」の漢字です。
このふたパターン、
「張り出し」と「反り」の漢字は、
1006字の中にちょうど100字あるんです。
ですから、この2パターンを覚えるだけで、
100の漢字がきれいになる、と。
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ナカバヤシ |
そうか‥‥
技術論だから応用がきくんですね。
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富澤先生 |
そうなんです。
あとはこんなのもあります。
「巻き」というかたちで、
「句」や「馬」などがそうなのですが、
ぐうっと十分に内側に引き入れる。
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西田 |
なるほど。
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富澤先生 |
それから、
漢字の下に心をつけるのがあります。
(漢字の「思」を書く)
これも、ここを上手に引っぱる。
「心」っていう字は、
先ほどの「必」に似てるんですけど‥‥
(漢字の「心」を書く)
こう書いてですね、こう行って‥‥
目に見えない六度線があると思って書きます。
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ナカバヤシ |
うーーん、そうかぁ‥‥。
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富澤先生 |
で、こちら、「思う」という漢字には、
上にこういうパーツがありますから、
すこし「心」が圧縮されるように、
六度をとる位置が変わってきます。
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西田 |
「心」の上に何かのっかることで、
その角度をとる位置がのとこが、上にずれていく。
圧縮されて。
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富澤先生 |
そうですね、はい。
そのほか、右下重心のタイプには、
「そうにょう」とか、
「しんにょう」とか、
「にょう」のある字がありますね。
それは、もう、ここを引っぱる(書く)。
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西田 |
ああー、そこまで行くんだ‥‥。
上げてるね、しんにょうの最後は。
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ナカバヤシ |
上げてますね、
右下重心ではなく上に上げてますね。
※このあたりの授業も、YouTubeでどうぞ!
やはり、わかりやすいです。
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富澤先生 |
そのほか、「右下重心」には
あと2種類ほどありましてですね、
こういうもの(漢字の「虫」を書く)とか。
最後の点をしっかり右下で止めるパターンです。
これもそうです‥‥。
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ナカバヤシ |
さかな。
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富澤先生 |
下の点を、1つ目、2つ目、3つ目、
そして4つ目を外側に出して、
ここをやや引っ張り加減にする。
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西田 |
なるほど。
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富澤先生 |
で、最後の種類です。
数は少ないのですが、
こういう「右下重心」があります。
「毎日」の「毎」だとか、「母」だとか。
上向きの「反り」の最後を引っ張ります。
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ナカバヤシ |
「母」。
きれいに書くのがむずかしいですよね。
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富澤先生 |
これからはもう大丈夫です。
ここを右上がり六度にし、
しっかりと右下に引っぱれば、整います。
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ナカバヤシ |
ああ‥‥(手帳に書いている)、
ほんとだ、整う‥‥。
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西田 |
ぼくも‥‥自分の字にしてはですけど、
前よりすごく整ってきている‥‥。
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富澤先生 |
というわけで、
「右下重心」のパターンは以上になります。
ぜんぶで9タイプ。
9種類というのは多いようにも思いますが、
ご自分で書いてみれば、
あ、なるほどこんなものかと、
おわかりになると思います。
右下に出ている部分を強調するということです。
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ナカバヤシ |
そうですね、実際に手を動かしてみて、
基本はわかった気がしてきました。
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西田 |
あとはこれを応用していけばいいわけですよね。
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富澤先生 |
その通りです。
それだけで、
かなりの漢字がきれいになるはずです。 |
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(つづきます) |