| ５月某日、「ほぼ日」の会議室をギャラリーにして、 「劇団セルフタイマー展」が開かれました。 「なにごと？」と集まってきた乗組員たちが、 興味深げに展示作品を鑑賞しているところへ‥‥ |
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| 「劇団セルフタイマー」座長にして、 演出、監督、出演までこなす、糸井重里の登場です。 |
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| 糸井 | こっちで呼んでるっていうから来たんだけど‥‥ これは‥‥どういうこと？（笑） |
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| 観覧客Ａ | しっかりと作品を見ながら お話をうかがいたかったので、 こういう展覧会のスタイルにしてみました。 |
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| 糸井 | はああーー、そうですかぁ‥‥。 いや、これならたしかに話しやすいかもしれない。 「劇団セルフタイマー 展」っていう、 このタイトルもちょうどいいと思います。 |
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| 観覧客Ｂ | ありがとうございます｡ えー、みなさま（観覧客たちに向かって）。 たまたまギャラリーに居合わせた幸運なお客様に、 ご紹介させていただきます。 「劇団セルフタイマー」、座長の糸井重里さんです。 |
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| 観覧客一同 | （拍手） |
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| 糸井 | ありがとうございます。 こんなことになるとは思いませんでした。 |
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| 観覧客Ａ | なんと本日は、 ご本人によるガイダンス付きで 劇団の歴史を誕生から解説していただこうと思います。 では座長、お願いします。 |
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| 観覧客一同 | （拍手） |
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| 糸井 | よろしくお願いします。 |
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| 観覧客Ｂ | こちらが、記念すべき旗揚げ公演。 いちばん最初の作品ですね。 |
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| 観覧客Ｃ | 場所は、どこでしょう？ |
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| 糸井 | これは青山の公園です。散歩の途中ですね。 |
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| 観覧客Ａ | このときなぜ、 セルフタイマーでの撮影をやってみようと？ |
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| 糸井 | ベンチがこのように並んでいたからです。 |
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| 観覧客Ｂ | ベンチ‥‥？ |
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| 糸井 | 「ベンチにカメラを置くことができるなぁ」って。 そう思いついたのが、まあ、きっかけでした。 |
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| 観覧客Ｃ | カメラを置くところがあったから。 |
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| 糸井 | 思いつきはそんなものなんですよ。 この写真の注目すべきところはここです。 ここの部分を拡大して よく見ていただけばわかるのですが‥‥。 |
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| 一同 | （ぐっと写真に近づいて見る） |
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| 糸井 | 顔を、手で持ってますね。 |
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| 一同 | （笑） |
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| 観覧客Ａ | 持っている（笑）。 |
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| 糸井 | なにしろ女優が、どこを向くかわからないんで。 |
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| 一同 | （大笑） |
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| 観覧客Ｂ | 主演女優が（笑）。 |
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| 観覧客Ｃ | 動かないように（笑）。 |
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| 糸井 | 劇団の公演ですから、 なにか形を作らないとと思うんですけど、 どうにもならない。 |
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| 観覧客Ｄ | 女優は自然体ですから（笑）。 |
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| 糸井 | どうにもならないんで、こう、 「こっちだよ」と、顔を持った。 それが、最初の作品でした。 |
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| 観覧客Ａ | そしてこちらが、２作品目。 |
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| 糸井 | また別の公園ですね。 |
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| 観覧客Ｂ | やはり散歩の途中で。 |
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| 糸井 | ええ。 これはですね、この、ぼくの視線の先あたりに、 お父さんと子どもがいたりするんです。 |
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| 一同 | （笑） |
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| 観覧客Ｃ | みんなの公園ですからね。 |
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| 糸井 | そういう方々がいらっしゃると、 やっぱりむずかしいですよねぇ、「劇団行為」が。 |
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| 観覧客Ｄ | 劇団行為（笑）。 |
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| 観覧客Ａ | 視線が気になりますか。 |
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| 糸井 | それよりも、いい方が多いので、 「シャッター押しましょうか？」と言われたりします。 |
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| 観覧客Ｂ | ああー（笑）、見るに見かねて。 |
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| 糸井 | でも、そうやって撮っても、 それは「劇団セルフタイマー」ではないですから。 |
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| 観覧客Ｃ | なるほど。 「シャッター押しましょうか？」 という親切にはどう答えているんですか？ |
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| 糸井 | 「ありがとうございます大丈夫です。 こういう遊びなので」 |
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| 一同 | わはははははは！ |
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| 観覧客Ａ | 感謝しながらも毅然と（笑）。 |
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| 糸井 | ええ。 で、この写真のときはですね、 カメラを置く場所が低かったんです。 だから低い位置でカメラをのぞきこんで、 写る範囲を確認するのはたいへんなことでした。 |
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| 観覧客Ａ | たいへんそうです。 |
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| 糸井 | あと、写る範囲に入るためには、 こう、グッと、グッと腰をおとさないといけない。 |
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| 観覧客Ｂ | 全体的にこの、腰を落とした姿勢が多いですよね、 「劇団セルフタイマー」の作品は。 |
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| 糸井 | ええ。 |
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| 観覧客Ｂ | このポーズを 「セルフタイマーポーズ」と呼んでもいいですか。 |
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| 糸井 | ご自由に。 なにしろですね、 フレーミングしてるときに自分はいないんですから。 どのくらい写るかはわからないんです。 |
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| 一同 | ああーー（深くうなずく）。 |
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| 糸井 | でも、このすべり台の このあたりまでが写るっていうことはわかってる。 だからそれを意識して、ちょっと屈んで。 で、女優も動きにくいポーズにしないといけません。 |
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| 観覧客Ａ | 押さえ込んでますね。 |
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| 糸井 | 押さえ込んでません、抱きしめています。 で、いいですか？ セルフタイマーを10秒にセットした。 覚悟をした。 カメラがぶれないようシャッターをそっと押した。 走った。 フレームにおさまるようにグッと屈んだ。 っていうあいだは、 ずーっと、これ、犬と一緒にいるんです。 |
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| 一同 | そうかぁー（深くうなずく）。 |
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| 観覧客Ｂ | 女優がすべり台のところで待ってくれてるわけではない。 |
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| 糸井 | それは無理です。 シャッター押したら（実際に動いてみせる）、 犬と一緒にササササッと走って、 犬を、拾う‥‥ |
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| 糸井 | グッと、屈む‥‥ |
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| 糸井 | シャッターが‥‥‥‥おりる！ |
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| 一同 | すばらしいーーーーー！（拍手と笑い） |
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| 観覧客Ｂ | 流れるような動き！ |
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| 観覧客Ｃ | いまのを、10秒のあいだに。 |
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| 糸井 | 10秒。 10秒後に舞台の幕が一瞬あがる。 |
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| 観覧客Ｄ | カシャッと。 |
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| 糸井 | 「劇団行為」っていうのはやっぱり、 その瞬間の、こう、出たところで、バーン！ と。 |
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| 観覧客Ａ | 毎回毎回が、かけがえのない本番の舞台である。 |
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| 糸井 | そうです、そうです。 それはちょっと、 劇団員になりたい方には覚えておいてほしいですね。 （つづきます！） |
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