観覧客A |
そして3作目。
こちらはだいぶ落ち着いた作品に見えますが。
|
糸井 |
見えますね。
でも、ほんとはまったく落ち着いてません。
余裕なんかないんです。
|
|
|
せるふたいまーふたたび。
「劇団せるふたいまー」は、
またまた、同じようなお芝居です。
山茶花の花が見えるのが、
ちょっとちがうところかな。
あ、あと犬のセーターもちがいます。
ちょっとかっこいいでしょう?
<『ブイヨンの気持ち(雑感)』より>
2013/02/11 15:14 |
|
|
観覧客B |
そうか、なるほど(笑)、
10秒の勝負はここでもしているわけですね。
|
糸井 |
そうです。
これは表現としての「落ち着き」です。
|
観覧客C |
すばらしい演技です。
|
観覧客D |
この作品もやはり、
となりのベンチにカメラを置いて?
|
糸井 |
いい質問をしてくれました。
「劇団行為」においては、
カメラの置き場所を見つけるのが勝負なんです。
|
|
観覧客A |
ちょうどいい置き場所は、そんなにない。
|
糸井 |
ありません。
「だったら三脚を持っていけばいいのに」
というアドバイスをよくいただきますが、
ぼくの場合それはちょっとちがうんですよ。
三脚なしでブラブラしていながら、
これをやるのがたのしいので。
|
観覧客B |
わかります。
|
糸井 |
ですから公園のベンチは、
置き場所としてすごくあてにしています。
次の作品もベンチに置いてますね。
|
|
|
げきだんは、むつかしい。
「劇団セルフタイマー」ですが、
どうも、活動が芳しくありません。
舞台の場所や演目も限られますし、
なにより「犬を抱える・なでる」
という以外の演出がない‥‥。
でも「解散はしない」と、
おとうさんは言っております。
<『ブイヨンの興味(未刊)』より>
2013/03/07 10:52 |
|
|
観覧客A |
ほんとだ。
写真の下、約三分の一に、
カメラを置いたベンチが如実に写ってます。
|
糸井 |
うーーん‥‥。
|
観覧客B |
これ、初期の代表作だと思います。
|
観覧客C |
でも、タイトルには苦悩の様子が‥‥。
「げきだんは、むつかしい。」と。
|
糸井 |
むつかしいんです。
このときには、
「カメラから離れる」という手法をためしてますね。
オートフォーカスだからできたことです。
|
観覧客D |
なるほど、全体にピントが合うようにして。
|
糸井 |
これだけ離れていれば
だいたいちゃんとフレームに入るのに、
まだぼくは気にしてるんですよ。
‥‥屈んでるんです。
|
観覧客B |
ほんとだ(笑)、
「セルフタイマーポーズ」になっている。
|
糸井 |
うーーん‥‥。
|
観覧客C |
でも、この表情がいいんです。
いつも真剣で。
|
|
観覧客B |
ファンたちは、このまじめな顔を
「セルフタイマー顔」と呼んでいます。
ほとんどの作品で、この真顔になってますよね。
|
糸井 |
これはですね、
カメラ上の光の点滅を見てるんです。
|
一同 |
ああーー。
|
糸井 |
ピカ‥‥ピカ‥‥ピカ‥‥
ピカピカピカピカピカ、パシャ!っていうやつ。
|
観覧客C |
だんだん早くなる点滅を(笑)。
|
観覧客D |
なるほどなるほど。
|
観覧客A |
女優さんはまったく見てませんね(笑)。
|
糸井 |
それがねぇ‥‥。
犬と私、女優と私が、
仲良くしてるシーンを撮りたいんです、ぼくは。
だからなるべく顔をそろえたい。
ところがこういう‥‥。
あの‥‥何度も言うようですが‥‥
たいっへんなんです!
|
|
一同 |
(笑)
|
糸井 |
いや(笑)、お笑いになりますけど、
土日の公園でこれをやるのは簡単じゃないんです。
|
観覧客B |
そうですよね。
「糸井さんですか?」
って言われる可能性だって大いにあるわけだし。
|
糸井 |
はい。
|
観覧客C |
でも、「解散はしない」と。
|
糸井 |
‥‥ええ。
|
観覧客A |
実際にこのあとも、公演は重ねられていきます。
次の作品、こちらは‥‥?
|
|
|
たそがれのげきだん。
「劇団セルフタイマー」は、
フラッシュをたくことをおぼえた。
暗くなりかけた夕方、
お墓の十字路で活動してみた。
犬を急いで抱っこして、撮ったけど、
犬の目が光ってしまった。
2013/03/10 19:14 |
|
|
糸井 |
これは、ふつうだとボツにするものです。
|
観覧客B |
「犬の目が光ってしまった。」
|
|
糸井 |
ぼくはいつもそうなんですけど、
「気まぐれカメら」のことを考えています。
|
観覧客C |
はい。
|
糸井 |
あそこに載せる写真を、できれば撮りたい。
ところがこのときは、たそがれどきの散歩でした。
「あぁ、もう写真を撮るにはむずかしいな」と。
ぼくはふだん、ストロボを使わないですから。
|
観覧客D |
使わないですよね。
|
糸井 |
でも、「うーーん‥‥」と思って。
「それを乗り越えるのが、
劇団セルフタイマーじゃないか」、と。
|
一同 |
おおーー。
|
糸井 |
ストロボをたくことを、「よし」としようと。
もう、やってしまおうと。
|
観覧客D |
なるほど。
この場所は? どこなんでしょう。
|
糸井 |
青山の墓地中央という場所です。
奥に写っている四つ角を撮りたかったんです。
|
観覧客A |
カメラの置き場所もあったんですね。
|
糸井 |
このケースでは木の枝です。
|
|
観覧客B |
木の枝?
|
糸井 |
2本の木の枝に、こう、ストラップを掛ける。
|
観覧客C |
カメラをぶらさげる。
|
糸井 |
そう。
あのね、いいですか、
1本の枝にひもを掛けると、カメラは回ります。
ボディがクルクルと回ります。
ところが、
2本の枝にひもを掛ければ‥‥回らない。
|
一同 |
(笑)
|
糸井 |
またそうやってお笑いになりますけど、
そういうことをぼくは瞬間瞬間に考えてるんです。
|
観覧客A |
失礼しました。
すばらしい創意工夫だと思います。
|
糸井 |
簡単ではないんです。
このときも、ストロボの光に合わせて
周りにいる人がこっちを見ますからね。
|
観覧客B |
人がいたんですか(笑)。
|
糸井 |
けっこういました。
|
観覧客B |
マスクに帽子の糸井重里が、
墓地で木の枝にカメラをぶらさげている。
それを見た人がいるわけですね。
|
糸井 |
そういうことです。
|
|
(つづきます!) |