糸井
「ひとりで」の、アウトドア編ですね。
───
はい、外で、ひとりでセルフタイマー。
劇団セルフタイマー監督
(うさみん)さん
糸井
インドア編の「暮エロ」路線にくらべると、
こっちはやっぱり「アウトドア」ですから、
こう、天からの視線を感じてますよね。
見られているっていうことで、気を付けてます。
───
糸井監督も撮影のときに、
現場では他者の視線が関わってきますよね。
糸井
それが、なかなか大変なんです。
「シャッター押しましょうか?」
って言われますから。
そういうことじゃないのに。
セルフタイマーがテーマなのに(笑)。
そういうお申し出をていねいに、
「ありがとうございます。
こういう遊びをしてますので」
などと言ってお断りするのも
劇団活動としてはなかなか骨の折れることです。
───
そんな対応までしなくてはならない‥‥。
撮影そのものも大変なのに。
糸井
そう、まず撮ること自体が大変なんです。
たとえば‥‥これ。
これなんかね、すごくむずかしい。
劇団セルフタイマー監督
(せれな)さん
───
岩の上‥‥。
糸井
こぉれは、むずかしいぞぉ。
───
そもそもカメラを置く場所が‥‥
糸井
そう! たぶん岩しかない。
さらにちょっと離れてますからね。
10秒以内にあそこに行って演技をする‥‥。
このかたの苦労を痛切に感じます。
───
はあーー。
糸井
だから「劇団セルフタイマー」では、
あらゆる作品で、
10秒前を想像するという鑑賞ができるんです。
───
なるほど。
糸井
二度たのしい。
───
二度たのしい。
糸井
これだって、こうして横向いてる10秒前には、
カメラの前にいたんだもん。
劇団セルフタイマー監督
(ヤマコー)さん
───
そうですよね(笑)。
糸井
シャベル持って、シャッター押して、
シャベル持って走って、横向いてポーズ。
───
(笑)その10秒を思うと、
すべての写真がさらに味わい深くなります。
同時に、撮影の大変さにも気づきます。
糸井
大変なんです。
ぼくはそれがわかるから、リスペクトがある。
すっごい認めるわけです、こういうのを。
劇団セルフタイマー監督
(セルフとおる)さん
糸井
これだって意外とむずかしいんですよ。
だって人が見てる場所でこんなことするの、
嫌だろう?
───
嫌です(笑)。
糸井
屈従のポーズでしょ、これ?
───
時計を見ると、お昼の3時過ぎです。
ああ‥‥よく見れば、
右の方にちいさな女の子がいます。
どこかの子どもに、こんなポーズを見られて‥‥。
糸井
ん? これ‥‥もしかして娘じゃない?
───
え?(コメントを読む)
「右後ろにチラッと見える娘は、
こんなことばっかりしてるパパを
どー思ってるんだろうか‥‥。」
‥‥娘だ。
糸井
となると逆に、
娘がいたんで助かるってことはある。
───
助かりますね。
周囲からは、娘と遊んでいると思われる。
‥‥ということは、
これは「ひとりで部門」ではなかったですね。
糸井
まぁ、細かいことはいいんです。
それにしたって、撮るのが大変な作品ですよ。
たぶん地面にカメラを置いてね、
よく撮れたと思います。
───
こっちの作品も、これ、大変に見えるのですが‥‥。
糸井
ああ、はい、これですね。
劇団セルフタイマー監督
(やきそばサーカス)さん
───
左下にちょーっとだけ、自分が(笑)。
糸井
これはね、ぼくもよく狙います。
けっこうやりたいことなんですよ。
撮りたい場所に自分が入りたいんです。
わかります?
写真を撮ってて、いい景色が見えたとき、
「そこに俺が入りたい!」って思う。
───
はい(笑)。
糸井
セルフタイマーで撮る動機の基本ですね。
「この景色にいる私を撮りたい」
───
なるほど。
糸井
この方もきっと、
そういうコメントを書いているのでは?
───
ええと(コメントを読む)‥‥
「こつこつやれば、
こんなお城が造れるんだなぁ。」
だそうです。
糸井
‥‥そこ?!
───
そこに感心?
糸井
まぁ、そうやってお城に感心したから、
いっしょに写りたかったんでしょう。
───
はい。
‥‥あの、こちらの作品が、
どうしても気になるのですが‥‥。
劇団セルフタイマー監督
(フェイ)さん
糸井
これは‥‥。
───
はい。
糸井
気になりますね。
───
ええ。
糸井
どこにカメラを置いたんだろう?
───
‥‥そこ?!
糸井
コーヒーカップのふちには置けないし‥‥。
───
気になるのは、そこ?
糸井
‥‥何か?
───
‥‥いえ。コメントを読みます。
「左手で三脚を持ち、
三脚の先にある
カメラのシャッターを右手で押す。」
糸井
ああ(ポンと手を打ち)、なるほど!
三脚を使ったんだ。
なるほどなぁ‥‥。
先程もその話になりましたが、
この劇団行為は
堂々と主役をやっていいい企画です。
ですから舞台衣装は当然、本人の自由です。
この方ものびのびと、すばらしい。
───
そうでした、失礼しました。
企画の基本を忘れてました。
糸井
ええと、あとは‥‥(展示を見る)‥‥
ああ、これはすごい。
劇団セルフタイマー監督
(ともみ)さん
───
すごい。
糸井
バッチリです。
セルフタイマーの特性をよく表しています。
───
これは、ワンチャンスですよね。
糸井
ワンチャンスです。ぶっつけ本番。
「あそこまで行こう」
っていうことだけ決めておいて。
───
この、一歩目の足あと!
踏み出しの強さを感じます。
糸井
うん。
でもこれ、一度向きを変えたのかもしれない。
───
どういうことです?
糸井
この一歩目のところでシャッターを押して、
その場で向きを変えて走ったから、
この穴だけ、こう、グリっと、
ちょっと広くて深くなってる。
───
ああーーー(笑)、
さすがです。やってる人は違います!
糸井
だと思うんだ、おそらく。
ほんとのところはわかんないけどね。
まぁ、すばらしい作品です。
───
なにか、物語性も感じます。
糸井
うん。
これもほら、物語がありそう。
劇団セルフタイマー監督
(ジョーディー)さん
───
夜のセルフタイマー。
糸井
うん。
女の人のほうが芝居をするね。
───
‥‥そうですか。
この写真の女性、演技をしてますか。
糸井
してるでしょう、この感じ。
コメントには、なんて書いてます?
───
ええと‥‥(コメントを読む)‥‥あ。
「必要以上に演技してしまったことが反省点です。」
と書いてあります。
糸井
あぁ、やっぱりね。
───
うーーーん、すごいなぁ。
わかるんですね、それが。
糸井
わかりますよ。
(次の部門へ、つづきます!)
みなさんの投稿作をギャラリーにしました。
グランプリや佳作に選ばれるのはどの作品なのか、
予想しながらこの先の連載を読めば
さらにおたのしみいただけるかも?
ぜひ、ご覧ください。
2014-10-09-THU
(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN