10代、20代のみなさん、あなたの悩み、教えてください。 10代、20代のみなさん、あなたの悩み、教えてください。
しいたけ.青春の悩み相談室。

「しいたけ占い」などで人気の
占い師・作家のしいたけ.さんによる、
ざっくばらんな悩み相談室です。
みなさんからの青春の悩み相談と、
しいたけ.さんのお返事を、
毎回ひとつずつご紹介していきます。

青春の悩み 2
私の悩みは自分には
何もないことです。

送ってくれたひと

靴下 18歳 女
2000/12/10生まれ

しいたけ.さんへの相談

私の悩みは自分には何もないことです。

今年の四月に大学へ進みました。
それまでの一年間は志望校のために勉強を頑張り、
いわゆる難関校に合格しました。

そもそも難関校に行きたいと思った理由は
「特別な才能や美貌があるわけでもないのに
勉強すらできなくてどうするんだ」
という焦りからでした。
また、受験を乗り越えて大学に進めば
何か自分が変われるかもしれないと
期待を持っていました。

たしかに知識は増え、努力をすることを学びました。
しかし、周りには自分よりも
あらゆる点で優れた人が沢山いて、
自分には強みと言えるものがないと思いました。
そして、内面の根幹が受験前と
何も変わっていないと気づき、期待は裏切られました。
自分で裏切ったというのが正しいのかもしれません。

内面的な魅力や自信を持つことができれば、
この悩みはなくなるのではないかと考えていますが
どうしたらいいかわかりません。

しいたけ.さんのご意見を伺いたいです。
よろしくお願いします。

私のマイブーム

月末にその月の振り返り日記を
341文字ぴったりになるように書くことです。

しいたけ.さんからの答え

靴下さんは18歳ということですが、
文章が大人だと感じたので、
そんな素敵な大人に返信ができる喜びを
噛みしめて書きたいと思います。

「私の悩みは自分には何もないことです」

一行目のこの描写に、もう胸を撃たれました。
靴下さんが映画とか音楽とか、何かの作品を作ったら、
おそらく何人かの胸を揺さぶるものを
作れると思います。

これは僕の個人的な偏見ですが、
僕は本を読むときも、音楽を聴くときも、
映画を観るときも、
「はじめの3分で引き込まれなかった作品とは
残念ながら縁がない」と思っています。
例外は人で、人はけっこう
「2回目に会ったら意外と面白かった」
があるんですけれども。

で、僕は靴下さんの一行目に引き込まれました。
すごかった。
靴下さんの世界は、言うならば、ぴゅーぴゅー寒風が
吹きさらす冬の日で、周りに分厚い壁があったりする。
それだけ、この一行目は強い。人を寄せ付けない。
あ、人を寄せ付けないことが悪いことなんて
言ってないですよ。
「美しさ」を持っている人は、
人を寄せ付けない何かがあるんだから。

僕は、靴下さんはセンスがある人だから、
その妄想能力をもっと鍛えてもいいんじゃないか
と思いました。
たとえば自分が画家だったとしたら、
周りの人をどんな絵として残すか。
写真を撮る人だったら、どういった背景で撮りたいか。
スタイリストだったらどういう服を着せたいか。
そうやって、興味のある他人を
「作品にするなら?」という視点で見ていくと
いいんじゃないかと思ったのです。
できればノートとかメモ帳に書いてもらって。
別に毎日なんてやんなくて良いです。

靴下さんの年齢の頃は、夢中になっていて、
楽しそうで、自分に自信を持っている人のほうが
強いです。輝いています。
疑わない力って、キラキラしていて強いから。

でも、それ以上先に行く人は、
ちゃんと「暗さ」を持つ人だと思うんですね。
女優さんでも俳優さんでも、長く輝いている人は
「スタイリストさんが今日の私に
この服を選んでくれた意味」とかに
すごく興味を持っています。
表に立ちながら「裏方」の目線を持っている。

だから靴下さんも、悩むこと、考えることを
自分のセンスにしていってください。
つまりそれは、自分のなかの
「裏方」の目線を鍛えていく、ということです。

ただ、悩んだり考えたりだけだと、
他人と自分を比較しすぎたりすることがあるから、
「私だけが発見したコンビニの良いところ」とか、
マヌケなことも一緒に考えていってください。

正しく強くあることだけがすべてじゃないです。

なんか、あなたの中で、
ちょっとだけ人生の横道にそれる楽しさを
味わう時期がきたんじゃないかと思いました。
僕は18歳の頃、大学の授業をさぼって
ベンチで60円のお団子を食べる時間が
すごく幸せでした。
お団子を食べすぎて単位を落とし、
留年しました。すみません。
でも、こんな人間でもなんとか大人として
生きていますから多分大丈夫ですよ。

(明日につづきます)

2020-02-26-WED

イラスト:死後くん