10代、20代のみなさん、あなたの悩み、教えてください。 10代、20代のみなさん、あなたの悩み、教えてください。
しいたけ.青春の悩み相談室。

「しいたけ占い」などで人気の
占い師・作家のしいたけ.さんによる、
ざっくばらんな悩み相談室です。
みなさんからの青春の悩み相談と、
しいたけ.さんのお返事を、
毎回ひとつずつご紹介していきます。

青春の悩み 14
私は人間として
必要とされないのでしょうか。

送ってくれたひと

佐藤ぐみ 21歳 女

しいたけ.さんへの相談

「やりたいことをやれ」と人々は言います。
でも、やりたいこととして何かを選ぶには、
同時に自分が何かに選ばれなくてはいけませんよね。

今まで沢山のことから選ばれずに生きてきました。
留学、入試、編入試験、インターン、ゼミの試験。
実力不足の一言で済む話かもしれません。
そのとき「全力で頑張った」と感じていたのは、
全て思い込みだったのかもしれません。
それは分かっています。
報われるまで頑張れと言われれば、それまでです。

でも、自分の過去に、
誇れるような選ばれた経歴が無いことが
とても辛いのです。
選ばれた経歴は、その人を
さらに選ばれる人間にする力となります。
これから始まる就活においても、
自分についてアピールできることなんて無いと、
不安が募るばかりです。
そしてまた、
「そんな人間が選ばれるわけないじゃないか」
と、
「もっと色々な経験をして頑張ってきた人間が
選ばれるのだろう」
と、自分でも思ってしまいます。

もう、頑張ることに疲れてしまいそうです。
私は、人間として必要とされないのでしょうか。
オンリーワンにはなれないのでしょうか。
やりたいことをやって
身を立てる資格なんてないのでしょうか。

私のマイブーム

天気予報をチェックすることです。
この時代においても天気は中々当たりません。
そんな気まぐれな空を追いかけることが
毎日楽しいです。

しいたけ.さんからの答え

これは僕のやり方なんですけど、
僕は人生の中で
すごくキツいこととか理不尽に出合って、
そこから流れを変えたいときには
「今、悲しみたい? それとも怒りたい?」
と自分に問いかけます。

怒ることと悲しむことが
両方ダブルでやってきている状態は
すごくつらいのです。

たとえばこのお手紙のケースだと
「私は選ばれない人間なのかな」と
何回も何回も自問自答があったはずですし、
その後に
「なんで私は選ばれないんだろうか」という
怒りにもなるし、
さらに
「私は本当に選ばれない人間なんだ」と
自分に対して激しい怒りも湧きます。
そして、その後に
「こんな自分で寂しい」という、
強烈な悲しみもやってくる。

怒りと悲しみは連鎖していきます。

もちろん、その連鎖はあって良いです。
いついかなるときも前向きで笑顔になるなんて、
そんなものは狂気でしかないから。

ただ、すごく落ち込んでしまうことがあったら。
50戦戦って50敗ぐらい連続で
負けてしまうようなことがあったら。
どうしようもなく自分が情けないと思ってしまったら。

そこから毎日、
自分に対して聞いてもらいたい質問があるのです。

「今、悲しみたい? それとも怒りたい?」
って。

そう、これは
「今、怒っている? 悲しい気持ち?」
と状態を聞く質問じゃなくて、
「怒りたいのか、悲しみたいのか」と
意思を尋ねる質問なのです。

まず「悲しみたい」とき。

悲しみたかったら、ちゃんと悲しんでください。
結果が全てじゃなくて、
それは頑張って傷ついてきた自分への
敬意なのです。
悲しんで、ぼーっと漫画とか読んで、
ぼーっと空を見て、
「もうなんもしたくない」というぐらいまで
傷ついてきた自分に対する敬意を込めて
「ちゃんと悲しんで下さい。私はそれを支持します」
と自分に言ってあげるべきなのです。

一方で、「怒りたい」とき。

「そろそろムカついてきた」
「怒りたい」
「見返してやりたい」と、
怒りたいという選択が出てきたら、
また「よいしょ」と新しい鎧を着ていく
タイミングになります。

さて、もうひとつお伝えさせてください。

僕にはですね、自分の恩師のひとりである
精神科医兼シンガーソングライターの
名越康文先生から言われた大切な一言があるのです。

「しいたけ.君は100戦100敗の人です。
とにかく負け続けた。
だから、彼の占いや一言は心に届くのです」って。

これ、言われたときに、
本当にすごく嬉しかったのです。
そのとき、僕の中に無限にある
「情けない負けの思い出たち」が
ちょっとおしゃれな帽子をかぶって、
胸を張りだしたのを覚えています。
だってね、絶対に
合格発表とか何かの選別のときに
自分の名前がないとか、
そんな思い出ばかりだったから。

普通ね、どこかで勝った思い出があると、
「私だってあそこの場面では必要とされたんだから」
とか、過去の勝ちのプライドに
しがみついちゃうこともあったりするんです。

だけど、しがみつく過去がない人は、
どんな場面でも
「この人から学んでいくぞ」と
頭を下げることができる。
自分より年下の中学生と話してても
「たぶんこの子の方が自分より
人間的に立派だな。すげー」
と本気で思うことができるのです。

だから、負けの先輩からなんですが、
最後に偉そうなことを言わせて下さい。

負けてきたタイプは、
大人になってから必ず逆転していきます。

だって、多くの人は何らかの
「この過去の中ではちやほやされた」とか、
そういう場所を持っているから。
でも、負けてきた人にはそんな場所がない。
だから、目の前の人の話を真剣に聞けるのです。
「この人は私なんかよりもすごい」と思って
関心を持ってその人の話を聞けて、
いろんなことを教えてもらえるのです。

そして、そんなふうに過ごしていたら、
絶対に評価される場所が出てきます。
成果を出す場所が出てきます。

それはね、大人になった僕は
すごく毎日実感しています。

勝ってきた過去があって、
その過去の自分の世界に住んでいる
大人の人は、たくさんいます。

でも、すごく頑張って手掛けてきた作品が
肝心な場面でヒットしなかったとか、
そういうメモリーを持っている大人は、
やっぱりどの場面でも
「この人すげー」という目線で
他人の話を聞こうとするのです。

あと学生時代は、選別や成果の時期が
決まっているけれど、大人になると、
選別される機会や成果を出す機会が
けっこう日常の中に広がっているんです。

そして、大人にとっての成果とは
「またあの人に会いたい」と
「またあの人と一緒に仕事をしたい」と
思われることです。

「過去の私すごい」の世界に住んでいたら、
その成果を受けるのは難しいけれど、
しがみつく過去がない人は、
その成果を受けやすいんです。
目の前の人の話を素直に聞くことができるから。

だから負けてきた思い出ばかりでも、
それがいずれ力にもなってくれることを
知っておいてください。

そしてまずは「今悲しみたいのか」、
「今怒りたいのか」を
毎日自分に聞いてみてくださいね。

(次回は第2シーズン最終回、10/29更新です)

2020-10-25-SUN


イラスト:死後くん